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2013年2月26日開催

JATA経営フォーラム2013開催報告
「グローバル視点で強くなる! 〜新たな価値創造に向けて〜」

テーマ別分科会

分科会A


原 優二氏

テーマ:旅行業のグローバル化に伴う法規制のあり方について

モデレーター:(株)風の旅行社 代表取締役社長 原 優二 氏
コメンテーター:フォーカスライトJapan 主席アナリスト 兼 (株)航空経営研究所 主席研究員
志方 紀雄 氏
コメンテーター:玉川大学 経営学部 観光経営学科 教授 野村 尚司 氏
コメンテーター:弁護士 三浦 雅生 氏

グローバル化に立ち向かう業法のあり方とは

分科会Aでは、国境なきインターネット旅行取引が拡大する中、国内の旅行会社は現状の旅行業法のもとでグローバル化に立ち向かえるのか、国際競争に遅れをとらないために法規制や緩和はどうあるべきかなどについて、海外の事例も交えながら今後の方策を議論しました。

ディスカッションではまず、オンライン旅行市場の調査などを手がけるフォーカスライトJapanの志方氏がオンライン旅行会社(OTA:Online Travel Agency)の市場動向を説明。

アメリカでは、エクスペディアなどの大手OTAによるオンライン販売シェアが約55%に達しているとした上で「(ネット検索サイトの)グーグルなど『第3者ゲートキーパー』の新規プレイヤーの参入も見込まれる」ことを指摘し、旅行取引のオンライン化やグローバル化は、様々なプレイヤーの参入者を巻き込んでより一層進展するとの見方を示しました。

一方で、OTAのビジネスが浸透しつつあるアメリカでも、「一昨年あたりから、キーボードをたたくより旅行会社に相談したいと考える消費者が増えてきたことも事実」と指摘し、「伝統的旅行会社(OTAに対して米国で使用されているTTA:Traditional Travel Agencyの和訳)の強みは相談を受けることや付加価値を生み出すことで、いい旅を造ることこそが本分である。」ことを強調し、また、「JTBとエクスペディアの提携のような「O2O(Online to Offline)ビジネスも視野に入れるべきだ。」との見解を示しました。

豪州、業界保護からグローバル化へカジ切る

オーストラリアの旅行業界を研究する玉川大学の野村氏は、「旅行取引のグローバル化を受けて、業界構造を根本から変えようとしているのがオーストラリアだ。オーストラリアでは旅行業界の新しい枠組み作りをめざす『旅行産業移行計画(TITP)』を3年前に策定、旅行業ライセンスと営業保証金供託金制度(以下、「供託金制度」という。)の廃止に向けた議論が進められている。」と説明しました。

野村氏によると、オーストラリアでも日本と同じように海外OTAとの競争が激化したが、競争するにあたり供託金制度などが「事業コスト面で足かせになるのではないか」との議論に発展。業界団体である豪州旅行業協会から「旅行業ライセンス制度の存続も含め見直すべき」との要望を出しました。

特に供託金制度に関して「非効率な運営に陥っている」点を指摘。これを受け、豪州政府財務省が大手コンサルティング会社に調査を依頼したところ、制度組織の運営コストのうち消費者への平均支払い額(過去10年の平均)は10分の1程度にすぎないことが分かりました。

なお、供託金制度を廃止した場合、消費者保護が疎かになる懸念もありますが、豪州旅行業協会では「すでに十分な消費者保護策は整っている。」又「旅行業が課せられる消費者保護は過剰」と主張し、コンサルティング会社の調査でも同様の見解が示されました。

こうした様々な議論の末、消費者保護政策を監督する豪州連邦政府はついに2012年12月に豪州の旅行産業移行計画(TITP)の推進を認可。これをうけて豪州旅行業協会は同計画推進のためのワーキンググループを発足し、旅行業ライセンスを国主導から業界認証への移行や供託金制度の廃止に伴う代替機能設立の検討を始めました。

玉川大学の野村氏は「豪州旅行業界ではたとえ業界保護をある程度あきらめざるを得なくてもTITPを推進したい、との強い意志がある」ことを紹介し、「日本でも国際競争の中で、規制による業界保護を求めるのか、自由な環境下でグローバル化に対応していくのか、まさに今、いずれかを明確にする時が来ている」と分岐点にあることを指摘しました。

海外OTA会社への日本の旅行業法の適用は可能か?不公平感もあろうが現状では困難

日本で旅行商品を販売する場合、旅行業の登録を受けた会社でしか扱えないことになっていますが、海外OTA会社がダイナミックパッケージのような商品をインターネット上で販売することは、いわゆる“無登録営業”に該当しないのか? といった業界からの疑問に対し この点について弁護士の三浦氏は、「いったい誰が被害者になるのかが論点。被害者なき犯罪のようなもので、現実的に大きな被害が発生しない限り(刑事罰を与えることになる)警察庁が取り上げることはないだろう」との見解を示しました。

また、海外OTA会社に日本の旅行業法を適用させることについては、「日本の法人登記を持たず、日本の領土内に営業所を持たず、販売サイトを管理するサーバーが海外にあるOTA会社については、日本の旅行業法の適用は難しい。」との見解も示しました。

次に、モデレーターの原氏は、「海外OTA会社のダイナミックパッケージの旅行条件書を見ると、消費者の解除の期日に応じた細かな取消料の定めがなかったり、日本とは異なる規定の中でどう消費者を保護していくのか」と問題提起しました。

これについて三浦氏は、「契約条項が不当な場合、適格消費者団体が裁判等で争い、日本の裁判所が消費者保護法の適用を認める余地はあるかもしれない。」との法的な解釈を示すものの、日本の旅行業法を適用させる積極的な理由にはならないことを示唆しました。

旅行素材単品販売や手配旅行契約の自由化など「考え方を世界標準に」

このほかにも、日本の旅行会社が宿泊単品商品を手配旅行として販売した場合、値付けを自由に行うことができないなどの問題が生じていることを指摘。海外OTA会社はネット価格で素材を仕入れるマーチャント方式で高収益が確保でき、且つ、大量のコンテンツで日本の旅行会社が単品商売で太刀打ちすることは難しい現状も明らかにされました。

パネルディスカッションの中でも、「手配旅行契約を旅行業法の適用外にするなど、考え方を世界標準にしないと日本の旅行会社にとって厳しい」(三浦氏)といった意見や、「海外OTA会社は旅行会社という意識が薄い。日本の旅行会社も国際競争へ自由に参画できる環境が必要」(志方氏)などの意見が出されました。
また、日本で新しい枠組みづくりを目指すに当たり、「きっちりした枠組みほど賞味期限が短い。ある程度“振り幅”を広くした柔軟な規制の考え方が必要などのでは」(野村氏)との見解も示されました。

最後にまとめとして、三浦氏からは「旅行素材単品販売は旅行から外すことに 賛成する意見も多い。」野村氏からは「豪州の旅行産業移行計画(TITP)は政府の方から推進を認可した。現在の豪州の旅行業法がむしろマイナス面に働くことはないのか?等行政当局側より改革が始まった。日本もぜひ柔軟な対応を行うべき。」と指摘し、志方氏からは「テクノロジーのスピードは凄い。(海外OTA会社や旅行業類似業者等、業界への)新規参入も益々進む。旅行会社としての強みの軸をずらすことなく、OTA会社が真似のできない、相談+組み合わせの付加価値+パーソナライゼーションに力点をおくべき。」と締めくくった。

分科会B


足立 成雄氏

テーマ:東南アジアからのインバウンド誘客を図るには

モデレーター:トップツアー(株) 国際旅行事業部インバウンド事業推進部長 足立 成雄 氏
コメンテーター:観光庁 国際交流推進課長 亀山 秀一 氏
コメンテーター:ガルーダ・インドネシア航空会社 マーケティング部 部長 児玉 優子 氏
コメンテーター:まるごとタイランド(株) 代表取締役 丸山 純 氏
コメンテーター:東日観光(株) 中国室 室長 佐藤 博史 氏

東南アジアからのインバウンド誘客を図るには

分科会Bでは、成長著しいアセアン市場の潜在性や誘客に向けた受け入れ態勢などについて議論が行われました。モデレーターの足立氏が、東南アジア市場の現状を説明。その中で、年間世帯可処分所得5,000ドルから35,000ドルのアジアの中間層が2020年には23億人に達し、消費総額は14兆円となり、アメリカを上回るというイギリス・ユーロモニター社の調査結果を紹介しました。
そうした高い成長が期待されている東南アジアで、海外旅行先として日本の人気は高いが、一方でアジア特有の受け入れ態勢の難しさもあるとし、その代表例としてムスリム国からの旅行者について言及しました。

足立氏は、インドネシアやマレーシアを抱えるアジアのムスリム人口は約10億人、世界全体の63%を占めていることから、東南アジアからのインバウンドを増やし、ポスト中国の市場として持続的発展を進めていくためには、ムスリムに配慮した受け入れ態勢が不可欠ではないかと問題提起しました。

観光庁100万人誘客へ、ムスリム旅行者を重視

観光庁の亀山氏は、観光庁の政策について説明。来年度から、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピンの6カ国をターゲットとして、2015年までに東南アジアからの訪日旅行者を100万人に増やす取り組みを始めることを紹介しました。
2013年の各市場の目標はタイ31万人(2012年は26万人)、シンガポール18万人(同14万人)、マレーシア16万人(同13万人)、インドネシア16万人(同10万人)、ベトナム7万人(同6万人)、フィリピン12万人(同9万人)。このうち、マレーシアについては、従来の都市圏の中華系家族層に加えて、ムスリム家族層への訴求を図るとともに、LCCの就航によりランドパッケージ(空港送迎+観光+宿泊)の利用が増加していることを紹介。インドネシアについてもムスリム系富裕層に対して日本観光の認知度を高めていく方針も明らかにしました。
亀山氏は「戒律に対する厳しさは人によって違うため、対応の難しさはある。しかし、歓迎という姿勢を見せることは大切。現地と情報交換をしていきたい」と話し、今後も受け入れ態勢の整備などに力を入れていく考えを示しました。

訪日潜在需要高いインドネシア、宗教は自由

ガルータ・インドネシア航空の児玉氏は、インドネシアの訪日旅行市場の現状について、2012年は前年比6割増となり、初めて10万人を超えたと報告。今後も中長期にわたって非常に潜在性の高い市場であると強調しました。その根拠として、労働人口が2050年にかけて右肩上がりに増え、経済成長とともに、2014年にはインドネシアからのアウトバウンド旅行者は800万人から900万人の規模になり、2020年には人口の半分、日本の人口とほぼ同じ規模の中間層が生まれるとの予測データを挙げました。
訪日については貿易関係も強く、日本語学習人口も増加しており、さらに日本文化への関心の高まりなどから、日本を旅行先として選ぶ人は増えるだろうと予測しました。また、ムスリムの受け入れについては、「インドネシアではムスリムが9割だが、実は宗教の自由は認められている。ムスリムといってもいろいろあることを知る必要がある。一つだけお願いをすれば、豚肉を外してほしいということだけ」と話し、過敏な態勢は必要ないとの考えを示しました。

FIT化と多様化進むタイ、訪日希望は米に次ぎ2位

タイ人向け日本情報雑誌「ジャパン・ワールド」を発行する丸山氏はタイの訪日市場について、2012年は前年比79.9%増、2010年比21.4%増の26万800人と過去最高を記録したと説明。アウトバンド人口551万人のうち日本は6番目で、希望旅行先調査では、アメリカに次いで第2位と、日本の潜在力が高いことを強調しました。
また、日本への旅行者はバンコク在住が中心で地方からはまだ少ないと指摘。最近の傾向はリピーターの増加、訪問先の多様化、FIT化を挙げ、その要因にマルチビザの導入が大きいとの見解を示しました。
タイでの日本に対する関心は、①北海道②FIT向け情報③富士山④新幹線⑤お土産⑥四季の順で人気があると紹介。一方で、日本での不満は、スマートフォンを使えるエリア(Wi-Fi設備)が限られているという声が多く、「旅行エリアあるいはホテルを選ぶ大きな基準になっている」と指摘。また、地方や飲食店での英語表示の不足も問題点として指摘しました。
日本からの情報発信について、特定の地域を「点」で紹介するのではなく、日本を「面」としてプロモーションする必要性とタイ語のパンフレット作成の必要性も示しました。

インバウンド・ビジネスに人材育成が不可欠

東日観光の佐藤氏は「インバウンドは農業と同じ」と主張。観光庁など公的機関が肥料を蒔き、航空会社が水を引き、旅行会社が刈り取る役割を持つが、「稼げる仕事を見つけてくるのは簡単ではない」とし、そのためには「人材の育成が欠かせない」と指摘しました。
アジアは今や目の肥えたマーケットに変わってきており、特に旅行機会が増えた富裕層の期待に応えるためには、しっかりとした情報発信と素材の吟味が必要と強調しました。
一方、価格を求めるカテゴリーはネットに流れ、価格競争になると指摘。そこでどのように稼げるかは大きな課題だと問題提起しました。
また、東南アジアのアウトバンド市場をめぐる他国との競争が激しくなる可能性があるとして、「東南アジアの人口約5億人のうち、何%取り込めるのか、そのうち稼げるのは何%になるのか、しっかり分析して考えなければならない」と話し、インバウンド・ビジネスの難しさを指摘しました。

ネット対応、特色ある商品造成、知名度向上を

モデレーターの足立氏が提起したテーマの一つである「東南アジアからのインバウンドは救世主になりうるか」について、観光庁の亀山氏は「訪日市場全体の救世主になりうる」と肯定するとともに、「中国からの訪日の場合、在日の中国の旅行社による扱いが多いが、東南アジアの場合は日本の旅行会社にもチャンスは広がるのでは」と見解を述べました。
その上で、今後必要になってくるのが、OTAとの競合やFITの増加に伴うネット対応だとの認識を示す一方で、「富裕層向けのオーダーメイド需要は残るだろう。それを取り込むためには、特色のある商品造成がカギになってくる」と話し、ランドとして待っているだけなく、現地に向けて発信していく必要性を説きました。
丸山氏はタイでの訪日旅行予約について、「やはりローカルのエージェントが強い。日本のエージェントは苦労しているようだ。もっと知名度を上げていく必要があるのではないか」と現地の動向を説明。もうひとつのテーマである人材育成については、日本には現在3万人以上のタイ人が住んでいることから、「旅行会社は彼らを人材育成にうまく利用することができるのではないか」との意見を披露しました。

分科会C


石原 義郎氏

テーマ:LCC元年を経て旅行会社共存共栄の道は見えたか

モデレーター:(株)航空新聞社 取締役編集長 石原 義郎 氏
コメンテーター:エアーアジア・ジャパン(株) 代表取締役兼CFO 内山 正明 氏
コメンテーター:(株)航空経営研究所 取締役副所長 牛場 春夫 氏
コメンテーター:ジェットスター・ジャパン(株) 常務執行役員 西尾 忠男 氏
コメンテーター:JATA航空・空港問題検討部会 副部会長 清水 直樹 氏

分科会Cでは、日本のLCCと旅行会社の代表を交えて、双方が収益を得るビジネスの可能性について議論しました。ビジネスモデルは異なるにしても、LCCと旅行業界の双方が提携販売を進めていく方向性で一致し、今後も両者で具体的な協力関係について話し合っていくことを確認しました。

まず世界の航空市場やオンライン旅行市場に詳しい牛場氏は、全体に占める日本発着のLCC供給座席は、北東アジアでは6.5%超、2013年中に10%近くに拡大すると予測しました。また、東南アジアでは7.5%超で、とくにエアアジアX、スクートなど長距離LCCCモデルが台頭していると説明しました。

日本発着全体のLCC供給座席は、全体で5.5%超であるものの、関空では2014年夏期スケジュールで25%、日本全体では2020年度までに欧米並みの2〜3割程度を占めると予想しました。
また、LCCと旅行会社の関係について、GDS、BSP、パッケージ運賃・団体用運賃など、B2Bの流通システムが整備されていないことに言及しました。

アジアのLCC市場規模は東南アジア内56.9%、うち東南アジア発着14.8%、北東アジア9.0%、うち北東アジア発着8.3%に達しているとし、この中で、牛場氏はとくに東南アジアの56.9%に着目し、「汎アジアLCCビッグバン」が起きていると指摘。巨大な人口と新中間所得層の誕生で、FSA(フルサービスエアライン)とLCCの競争が激化し、FSAとLCCはハイブリッドになっていくと予想しました。

牛場氏はLCCと旅行会社の関係性について、「LCCのシェアが2〜3割になる前に双方が話し合って流通モデルをつくる。必ずシステムが絡むが、流通サイドは既存の旅行商品にこだわらず、インバウンド、アウトバウンドのFIT化に対応した新しいビジネスモデルを構築するために、イノベーションを追求してほしい」と要望しました。

エアアジア・ジャパンの内山氏は「不良在庫を持たないことがLCCモデル。しかし、日本は規制が強くて席を埋めることに制約があり、日本独自の売り方が必要」と述べ、ターゲットを同じくするビッグホリデーとの提携をスタートした」と述べました。

内山氏はビッグホリデーとの提携により、「若い世代で飛行機を利用したことがなかった人達が卒業旅行、就活、受験で行き来できるという大きな需要を生み出すことができた」と成果を披瀝しました。「エアアジア・ジャパンの利用客は10歳代が5%のシェアだが、ビッグホリデーのエアアジア・ジャパン利用客は10歳代が16%、20歳代が38%。10-20歳代で50%、10-30歳代では70%と若い世代の需要を取り込んだ」と述べました。

内山氏は「販売チャネルの中で、環境にあったものを柔軟に組み合わせていくことが大事と実感した。エアアジアに日本市場の特性を理解させながら準備を進めていきたい」と述べ、旅行会社との提携に前向きに取り組んでいく見解を示しました。

ジェットスター・ジャパンの西尾氏は、ジェットスターには最低価格保証があり、キーワードは「隙間」と「間際」。安い間際運賃で、これまで取り切れていなかった隙間が開いてきたとし、北海道への日帰りパッケージツアーなどの新たな需要を拡大してきたことを強調しました。
ジェットスターを利用する人の約2〜3割が初めて航空機に乗る初心者で、西尾氏は「ホテルパックや札幌のランドなど、アクティビティをパッケージにできると思う。(旅行会社に)初めて旅行する人を取り込んでほしい」と期待を寄せました。

さらに、西尾氏は「海外FITインバウンドが拡大しており、LCCを新しいマーケットを創出するために使ってほしい」と語り、「海外FITインバウンド元年」をキーワードに、インバウンド市場での旅行会社の役割を期待感を示しました。
西尾氏は「ジェットスターは国際線では25%が旅行会社に販売をお願いしている。ただ、システムリンクがネックになっている。早朝や曜日のオフ期(火・水・木)をどのように販売するか。当社も限界が分かっており、旅行会社と一緒にやっていきたい」と旅行会社との協力を拡大する方向を示しました。
西尾氏はさらに、「日本航空ともコードシェア運航とマイレージ提携を行うことが決まり、販売促進はジェットスター・ジャパンと旅行会社と協力していくことになる」と述べました。

JATA航空・空港問題検討部会副部会長の清水氏は、LCCはコストを徹底的にそぎ落とし、座席を「消費材」として提供、旅行会社は座席を「生産材」として仕入れて加工してマーケットに提供するとし、「同一で取引、ビジネスは無理がある」と厳しい見方を示しました。
しかし、「LCCも変わってきており、歩み寄れるLCCとはクリエイティブに積極的に話し合っていきたい」と述べて、LCCと協業を探る方向性を示唆しました。

清水氏は、日本の航空が地域経済の活性化を目的としてオープンスカイ、LCC参入促進、空港経営改革を国、空港、LCCの三位一体の取り組んでいることに対して、これに旅行会社・旅行業界を加えて「四位一体」で取り組むことを提起しました。「四位一体による日本の地域活性化を実現することが、日本の旅行業とLCCのめざす方向であると提案したい。旅行会社はLCCを使った商品を含めて多様化したマーケットに、多様化した商品をラインナップすることが強み。発受一体で商品造成、とくに受けにおける継続的なビジネスモデルを造り上げることで相乗効果を図ることができる」と述べました。

清水氏は分科会の最後に、「旅行業界は旅行商品を造成するだけでなく、受け地としてのビジネスの開発が必要。LCCを含めた新しい旅行会社のあり方を考えるチャンス。LCCの座席を代理販売するのではなく、商品に加工する上でのビジネスモデルを構築したい」との方向性を示しました。
また、清水氏は、「ターゲットはアジアのインバウンドだと思うので、それを旅行会社として取り込んでいきたい」と述べ、インバウンドについてもFSA、LCCのネットワークを活用して、旅行会社が集客する考えを示しました。

分科会D


五十嵐 潤子氏

テーマ:女性・外国人の能力を活かせ!
〜激変するグローバル時代を勝ち抜く多様性の活かし方〜

モデレーター:(株)ジェイティービー ダイバーシティ推進室長 五十嵐 潤子 氏
コメンテーター:(株)スプリー 代表 安藤 美冬 氏
コメンテーター:日本マイクロソフト(株) 執行役カスタマーサービスアンドサポート
ゼネラルマネージャー 佐々木 順子 氏
コメンテーター:エクスポート・ジャパン(株) 代表取締役 高岡 謙二 氏

グローバル化へ人材のダイバーシティ推進を

分科会Dでは、企業の人材の多様化(ダイバーシティ)推進の必要性と、実際に推進する上でのポイントについて議論しました。ビジネスのグローバル化に伴い、旅行業界に係わらず全ての企業にとってダイバーシティ推進の必要性が高まっていることを確認したほか、ダイバーシティ化を実現する上で、従来の社内政治体制を辞めること、異業種交流を推進することなどが必要という意見が出されました。

まず、モデレーターの五十嵐氏が日本企業のダイバーシティへの取り組みの実態と、JTBの取り組みを紹介しました。五十嵐氏はダイバーシティを推進することの必要性について、企業のグローバル化への道筋になるというメリットがあると語ったほか、世界銀行(IMF)が日本について「女性労働参加率がG7並みになれば、日本のGDPは4%成長する」との観測を発表したことなども紹介しました。

五十嵐氏は、世界全体へとビジネスの規模を拡大することを目指すJTBは、2006年の分社化以降、ダイバーシティ推進室を立ち上げ、最初の3年間は、社内冊子などで啓発活動を展開し、現在はグループ各社に担当会議を設置して議論を重ね、人材多様性をテーマにした異業種合同研修などにも積極的に参加していると説明しました。

JTBグループは2012年3月時点で日本・海外に176社を展開、総社員数は2万5675人、うち女性の数は62%。課長相当級40%だが、部長相当級17%、役員相当級2%。また外国人の構成比率は推計1.2%。五十嵐氏は外国人について、「まだ翻訳やマーケティング機能としてしか人材を活かせていない現状」と説明し、今後、より社内のダイバーシティ化を推進していきたいと語りました。

旅行業界の女性・外国人長期雇用、最小の部類

旅行会社のダイバーシティに向けた取り組みをJATA会員各社に対して実施し、38社の回答を得ました、それによると、社員数における女性の構成比率は50〜70%と多かったものの、役職者に占める女性の割合は0〜5%が多数を占めました。外国人は社員数における構成比率は0〜5%、役職者は「いない」が最多数でした。

実際にダイバーシティの推進をアクションプランに組み込んでいる旅行業者数は12社に留まり、あまり業界には人材多様化の意識が根付いていないことが分かりました。

日本企業に人材のダイバーシティ化が進まない要因について、佐々木氏は「社内風土の“透明性”にある」との持論を展開しました。佐々木氏は、「企業はダイバーシティを念頭に置いた採用活動自体は進めている」との認識を示した上で、「女性も外国人も比較的短期間で会社を辞めてしまう、役職者が少ないという傾向がある。要因として企業におけるマイノリティである女性・外国人には昇進などの仕組みが理解しづらい」と問題点を指摘しました。

女性の雇用については、「日本の会社では、飲み会や喫煙所での会話など、女性の入り込めない部分で語られる情報が、企業に溶け込む上では欠かせない要素となっている現状がある」と指摘しました。

旧態依然の体質、男性社会の閉鎖的環境が要因

このことから佐々木氏は、企業の仕組みを透明化することや、男性のみでの閉鎖的なコミュニケーション環境をなくすことで、状況は改善し、それにより企業の生産性も向上すると主張しました。

安藤氏もこの意見に同調し、「私も男性に負けないように、無理にお酒を飲んだりしていたこともある。」と、自身が以前大手出版社に勤務していた時の経験を挙げ、日本企業の旧態依然な体質に馴染めない女性や外国人は多いのではと語りました。

佐々木氏は、ダイバーシティ推進のメリットとして「異なる視点を取り入れることによるイノベーションの創出」「多様化する市場ニーズに対応可能な経営基盤の造成」「採用の間口を拡げることによる優秀な人材の確保」が可能であることを挙げました。

安藤氏は「人材の多様性を実現することで、自由な発想が生まれ、ビジネスの合理性も高まる」と、出版や企業のコンサルティングなど、業種を問わず活動する実践者の視点で意見を述べました。

ダイバーシティ推進へ社内政治の撤廃と異業種交流を

一方、世界有数の外国語日本情報サイト「ジャパンガイド」を運営するエクスポート・ジャパンの高岡氏は、企業の人材のダイバーシティ化が進まない理由として「過去の成功体験にとらわれているに過ぎない。まだ、企業として、それほど必要性を感じてはいないのでは。日本企業が世界規模で経営最適化を図ろうと本格的に考え始めたら、一気に動く」と語り、あくまでダイバーシティ推進への機が熟していないだけとの見方を示しました。

ダイバーシティを推進する必要性について、高岡氏は、日本企業が外国人視点を経営に取り入れられず、結果として利益を取りこぼしている現状を挙げ、とくに旅行業界にとっての身近な事例として、訪日外国人の受け入れ整備の遅れを取り上げ、「現場にいる外国人の数があまりにも少ない」と述べました。

高岡氏は、「そろそろ企業のアイデンティティを変えていかなければならない局面が訪れる」とも述べ、日本企業にはダイバーシティ推進に向け早急な対応を取ることが求められるとの見解を示しました。
推進する上でのポイントとして高岡氏は、「社内政治を辞めること」。社内にのみ経営を最適化するのではなく、異業種と積極的に交流し、より広い視点で経営を最適化することが重要と語りました。

ジャパンガイドではスイス人編集者が、外国人の目腺で国内観光情報を発信していることで成功。同サイトの月間ユーザー数は150万人と世界最大規模に拡大したことを事例として挙げました。

五十嵐氏は全体の総括として「過去の手法を続けているだけでは発展はない。グローバルな環境を無視して、これからの経営は成立しない」と述べ、来場者にダイバーシティ推進の必要性を示しました。

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