現在地:JATAホーム > JATAについて > TOPICS > 2019年2月21日開催 :JATA経営フォーラム2019 :開催報告

2019年2月21日開催

JATA経営フォーラム2019 開催報告   「旅行業革新への挑戦(トライ)」

JATAは2月21日、東京・六本木の“六本木アカデミーヒルズ49”で「JATA経営フォーラム2019」を開催しました。「旅行業革新への挑戦(トライ)」をメインテーマに掲げた同フォーラムには、会員企業の関係者など300人以上が参加。基調講演と特別講演に加えて、「女性人材」「テクノロジー」「旅行業経営」「カスタマージャーニー」をキーワードに4つの分科会も開かれ、パネリストらによって「旅行業革新」への道筋を探る熱い議論が繰り広げられました。


JATA経営フォーラム2019 会場の様子

【プログラム】

【開会挨拶】


JATA会長 田川 博己

JATA会長 田川 博己

2018年は、日本人の海外渡航者数が約1895万人、海外からの訪日旅行者数が3119万人と、ともに過去最高を更新いたしました。
国内旅行においては、相次ぐ自然災害の影響で厳しい結果を余儀なくされたものの、迅速に導入いただいた「ふっこう割」を活用した送客においてJATA会員会社の集中した取り組みの結果、西日本、北海道両ふっこう割の国内旅行部門の約半数を取扱うという成果をあげて、早期の観光復興に寄与することができました。
2019年は、新元号制定を筆頭に、まさに新しい時代の幕開けとなり、旅行業界を取り巻く環境もこれまで以上に変化のスピードが速くなっています。そのような年にあって、JATAは「チャレンジ&トライ」をテーマに掲げて、1年間の取り組みを進めてまいります。ラグビーW杯も開催されますので、ただチャレンジするだけでなく、得点を獲りに行くという想いを込めて“トライ”を掲げています。

海外旅行においては、「ツアー安心ネット」の7月からの稼働開始を目指し、安心安全な旅の環境整備に加え、若者の海外体験を促進するプロジェクト「ハタチの一歩」を観光庁、及び国内外の関係団体と連携して進め、海外渡航者2000万人の目標達成を目指します。

国内・訪日旅行では、関係省庁や地方自治体、DMOと連携し、国立公園、日本遺産、全国各地の文化財を活用した新しい旅のカタチの具現化を図る考えです。
これらの取み組みも、国連が掲げる持続可能な開発目標「SDGs」の考え方に沿って進めることが重要です。観光は、世界経済、社会そして自然環境に大きな影響をもたらしながら、成長し続けています。だからこそ、社会的責任も大きくなっていることを私たちが認識し、行動を起こすことが大切だと考えます。

その一つに働き方・休み方改革があると考えます。
特に休み方改革については、10連休が誕生する今年、最も議論すべきテーマといえます。
昨年末、皆さんもご存知の通り「2025年 大阪・関西万博」の開催が決定いたしました。JATAでは関西経済連合会や経済産業省に協力し、投票のカギを握るであろうカリブ海諸国の観光大臣に支援要請を行っていたことから、感慨もひとしおです。今年初めて大阪・関西で開催する「ツーリズムEXPOジャパン」では、まさに、2025年に向けたキックオフイベントとしても、ぜひ成功させたいと願っています。

【来賓挨拶】


観光庁長官  田端 浩氏

観光庁長官  田端 浩氏

訪日外国人旅行者数は昨年、過去最高の3119万人となり、観光消費額も4兆5064億円を記録し、海外旅行者数も1895万人ということで、前年比では6%増という伸びとなりました。
海外旅行は2000万人を目指して色々と取り組んできているが、2000万人を達成するためには今年の伸び率を5.5%増にすることが求められるものの、昨年が6%増だったので、今年で2000万人を実現して、2020年はもっと増やすことが出来ればと考えています。

今年は、国内12都市で開催されるラグビーワールドカップ(RWC)や大阪で開催されるG20サミットなど、国際イベントや国際会議が多いのに続いて、来年は東京でオリンピック・パラリンピックが開かれることから、訪日外国人が長期に滞在して、消費拡大も期待されるところです。
特に、RWCの場合、参加チームは週に1回のペースで試合が行われますから、開催期間の長い予選プールにサポーターが代表チームを追っていくと、4週間前後の滞在が見込まれるため、試合会場となる12都市では、欧米の方々に訴求できる着地型商品の開発を自治体と一緒に取り組んできています。もちろん、消費拡大の面でも大きなチャンスですから、地域の魅力をしっかりと発信していかなければなりません。
また、周知のとおり、今年はゴールデンウィークに10連休がありますから、海外旅行にとっても需要拡大に向けて絶好の機会となるはずです。

インバウンドについては、2020年の訪日旅行者数4000万人と消費額8兆円の目標達成に向けて、幅広い国や地域からの旅行者を確実に増やしていくために、6000万人も視野に入れつつ、正念場となる今後の取り組みを全国の津々浦々に広げていくということが重要なポイントとなります。

そういう意味も含めて、現在の安倍政権における観光の位置づけが、「地方創生の切り札」という言い方になるわけです。その実現を図るためには、地域の自然や文化を活かした体験型コンテンツという部分で、地域の側もそれぞれの良さや魅力を認識し、きちんと提案していかなければなりません。

国内旅行も、現状では、残念ながら1泊2日型が主流となっているため、しっかり時間を使って地域を十分に体験するという旅行パターンを定着させ、広げていく必要があります。
そういう意味でも、旅行業界の皆さんには、是非、DMOの活動などにも積極的に参画していただければと考えています。

アウトバウンドについては、諸外国との双方向交流拡大を通じて相互理解を進めていくことが、我が国の外交政策の観点からも極めて重要となりますから、強力に進めていきたいと考えています。そのためにも、日本人にとって魅力のあるデスティネーションの新規開拓が大切ですから、官民を挙げて取り組んでいかなければなりません。
また、今年は、日本発着の航空路線では、新規就航ラッシュというべき観を呈しており、新しい魅力的なデスティネーション開発にとって、極めて重要な時期となります。
もちろん、デスティネーションの新規開発とともに、従来からの旅行商品についてもさらに深堀りしていっていただきたいと思います。
そのためにも、旅行業界の若手の皆さんにも、新しいデスティネーションを現地で自分の目で見るような機会をどんどん与えていくようなBtoBの取り組みを強化していただきたいと思います。

JATA会員の皆さんには、今年の経営フォーラムのテーマである「旅行業革新への挑戦」に積極的に取り組んでいただき、クォリティの高い良質な旅行商品づくりを進めて、しっかりと利益も確保していただきたい。それこそが、旅行業界として基幹産業へ向かっていく道筋だろうと考えています。

【基調講演】「人工知能がもたらす人と社会の未来」


新井 紀子氏

国立情報学研究所社会共有知研究センター  センター長・教授
一般社団法人教育のための科学研究所  所長・代表理事
新井 紀子氏

2011年から「ロボットは東大に入れるか」という人口知能(AI)プロジェクトに取り組んできました。
このプロジェクトは、頭の良い人工知能を育てることが目的ではなく、人工知能に何ができて何ができないのかを見極め、人間が将来にわたりどう生きていくべきかを考えることに主眼を置いたものです。

世の中では、「AIが神になる」とか「AIが人類を滅ぼす」、あるいは、AIが人間を越えて生活が一変する「シンギュラリティの到来」など、過度な期待や楽観論から悲観論まで、AIについて様々な言われ方もされてきましたが、AIは「計算機」に過ぎず、「意味を理解する」ことは不可能なことは分かっていました。
ロボットが東大に合格することは出来ないだろうとは考えていましたが、「東ロボくん」は大きく成長し、数年前には模擬試験で好成績を収めるようになりました。同時に、2016年の模試では、東大こそ合格できませんでしたが、関係者の努力によってMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)や関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)の合格レベルにまで「東ロボくん」は成長しました

私たちの日常生活に浸透しつつあるAIは、現在、ホワイトカラーが担っている仕事のかなりの部分で、強力なライバルになる可能性が明確になってきていると言えるでしょう。
AI楽観論者は、人間とAIが補完し合って共存するシナリオを描きますが、「東ロボくん」の実験と同時に行われた読解力調査では、恐るべき実態が判明しました。 「東ロボくん」プロジェクトで文章の意味理解は出来なかったAIが模擬試験で好成績を収めて、逆に、子どもたちの読解能力も低下しているのではないかと考え、子どもたちの読解能力を確認したところ、驚くほど読解能力の低い子どもが多いことが分かったのです。
例えば、「幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた」と「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた」という2つの文が表す内容は「同じ」か「異なる」か、という問題では、全国の中学生857人の正答率は57%でした。2択問題の正答率は、どちらかを選ぶだけで50%になりますから、驚異的な低さです。また、全国の高校生1139人の正答率も71%にとどまり、3割近くが正しく答えることができていません。

英単語や世界史の年表、数学の計算といった表層的な知識だけに頼っていたら、圧倒的な量の情報を記憶できるAIにはとても勝てません。教科書が読めるか読めないかで子ども達の間に格差が生じている現状では、プログラミング教育やアクティブラーニングも「絵に描いた餅」で終わってしまいます。
読解能力が低くて教科書が読めなければ、自分一人では勉強できず、新しい技術を学ぶこともできませんから、将来的にはAIに職を奪われ、新しい職種に移動することも不可能となりかねません。
労働力不足なのに失業や非正規雇用が増大し、格差拡大、内需低下、人口もさらに減少という社会のマイナススパイラルに拍車がかかっていくことになってしまいます。

今、目指しているのは、基礎的読解力を調べるために開発したリーディングスキルテストを中学1年生全員に無償で提供し、読解の偏りや読解力の不足を科学的に診断することです。
そして、中学校を卒業するまでに、全員が教科書を読めるようにしなければなりません。それこそが公教育の最重要課題であり、この課題を克服することが不可欠なのです。
AIとともに働くことが不可避な未来を生きる子ども達の読解力向上は、現在の日本における最大のテーマの一つであり、人と社会の未来を切り開いていく唯一の道筋だろうと考えています。

【分科会】

【特別講演】「映画と観光」


木村 大作氏

田中 まこ氏

木村 大作氏  映画監督・撮影技師

田中 まこ氏  特定非営利活動法人ジャパン・フィルムコミッション(JFC)理事長

田中 : フィルムコミッション(FC)とは、映像作品の撮影に対し無償支援を行う非営利公的機関のことで、こうした活動は70年以上前に米国で始まりました。またFCの活動は映像産業と観光をつなげる動きとしても知られています。現在、日本でも全都道府県にFCがあり、300カ所以上で設立されており、全国どこでも映像作品撮影のための最低限の支援が受けられます。毎年1月には全国のFCが一堂に会して、ロケ地側と映像制作者側との商談を行うマッチングイベント「JFC全国ロケ地フェア」も開催しています。

JFCでは、文化庁がロケ候補地を探す作業を支援するために、日本国内のロケ候補地の情報をデータベース化した「全国ロケーションデータベース」に関して、その情報管理と利用促進事業も受託しています。またJFCでは一般消費者に対しても、どのような場所がどの作品に使われているかといった情報を紹介する取り組みにも力を入れており、ロケ地マップも作成しています。ロケ地を中心とする地域の魅力を紹介することによって、観光集客と文化振興につなげることが目的です。そのために18年の「ツーリズムEXPOジャパン」にブースを出展したところ、ロケ地マップなどはあっという間になくなってしまうほど好評で、今年も出展する予定です。

木村 : 僕は7月で80歳を迎えるので、18歳で映画の世界に入ってからもう62年が過ぎたことになりますね。この間に撮影や映画のキャンペーン、個人の旅行などを含めると全国47都道府県を最低2回ずつは訪れていると思う。最近は富山県で撮影をすることが多くて、監督作品も2つ富山で撮ったのだけれど、県の観光課や現地のフィルムコミッションが撮影に極めて協力的というのが一番の理由だね。

最近は自治体もロケ撮影の誘致には積極的だけれども、最初に誘致を狙うのはおそらくNHKの大河ドラマでしょう。ドラマの舞台になれば多くの観光客がやって来るようになるからね。映画の場合は作品がヒットするかどうかで影響力は変わる。たとえば僕が撮影した映画作品では『鉄道員(ぽっぽや)』に登場する「幌舞駅」のシーンは、北海道に実在した幾寅駅で撮影したのだけれど、作品がヒットした翌年には1年間で60万人もの観光客が幾寅駅を訪れたほどだった。観光と映画は非常に強く結びついているのだと思うよ。最近は全国のフィルムコミッションと自治体の観光課がわれわれの撮影を支援してくれるし、大変よくしてくれるのでありがたいよね。

映画作りにおいては、シナリオやキャスティングと並んで、どこで撮影を行うかがいかに重要な要素であるか、僕は黒澤明監督から学んだな。黒沢監督は時代劇の『用心棒』を撮った際に、世田谷の広大な空き地に江戸時代の宿場町を再現してしまった。しかも普通に考えれば映像に映り込む建物の表側だけ作れば足りるのに、『用心棒』のセットは全部本物の建物。本格建築ですべて作った。それくらい撮影場所や背景にこだわったわけだよ。

僕が初めて監督した『剱岳 点の記』では実際に剱岳に登り、3000m級の山並みが連なる北アルプスの山の中でスタッフや俳優が250泊以上かけて撮影しました。撮影場所は、自分の足で歩いていくしか方法がない北アルプスの山奥。監督も俳優もスタッフも数時間かけて登山して、ようやく撮影開始となるわけだ。しかし「厳しさの中にこそ美がある」。これは映画のセリフにも採用した言葉だけれど本当にその通りで、この映画では大変美しい映像が撮れましたね。普通に撮れる映像ではなかった。この映画の物語自体は地味な内容でね、明治時代の測量隊が北アルプスの山の中を測量して歩く、ある意味面白みに欠ける話だった。けれどもいい絵が撮れたことは保証できましたよ。結果的に映画はヒットしました。

また以前、私が撮影した『八甲田山』の雪のシーンは、本当の山奥でなくロープーウェイの横でも撮れたのかもしれない。それでも実際の出来事があったのと同じ場所での撮影にこだわり、結果的に観客動員600万人の大ヒットになった。日本人は本物を見抜く力があるんだね、きっと。
映画の企画も旅行の企画も、ある意味興行でしょう。反応がなければ意味が無いな。人に伝わらなければ作った意味が無い点は共通だよね。その意味でタイトルやキャッチフレーズはとても重要。『剱岳 点の記』は、やはり剱岳という山の名にインパクトがあった。最近話題になった『万引き家族』。これなんかもうまいよね。しばらく前にアカデミー賞外国語映画賞を取った『おくりびと』も題名が面白い。『八甲田山』はね、北大路欣也が劇中で言った「天は我々を見放した」って台詞が広まって、マージャンで振り込んじゃったりすると、みんな「天は我々を見放した」なんて言って流行語になった。そういう話題の広がりが映画のヒットにも影響したんだと思うな。

『剱岳 点の記』については、映画のヒット後にある旅行会社が「木村監督が同行して剱岳を観賞する旅」みたいなツアーを企画したんで、旅行者と立山の室堂まで出かけ1時間ほど山を眺めながら撮影時の裏話をするなどしたこともあったね。映画と観光は強く結びついている面があるわけだ。旅行会社の皆さんも、何か面白いアイデアを思いついたら声を掛けてください。

このページの先頭へ戻る