平成18年度受注型企画旅行推進セミナー講演内容 詳細レジュメ

標題に「受注型企画旅行の活かし方」とありますが、活かし方というよりも、約款改正のバックグラウンドをご説明したいと思っています。

今回、受注型企画旅行契約という契約類型が導入されるに当たっては、その前、約3年間はかなり旅行業界、JATAさん、ANTAさんが戦略的に動かれたように思われます。どういう点が戦略的であったかというと、標準旅行業約款制度というものをうまく使っているというところであります。

皆さん旅行会社は相互に競争関係にあります。従って、例えばハワイ4泊6日のツアーを最低10万円で売ろうと言ってしまうと、公正取引委員会に独禁法違反の価格協定ということで捕まります。
それと同様に、契約条件が同じである場合、例えば、ある旅行会社さんが取消料も取らないで契約を解除できるようにしますということも、本来は自由競争の範囲なので、全く自由なはずです。
ところが、標準旅行業約款というモデルがあって、1カ月前から取消料がかかるようになっています。ほぼ100%近い旅行会社がこの約款を使っています。

つまり、標準旅行業約款を使っている旅行会社さんは、全部あの中身でカルテルを組んでいるのと同じことになります。しかし公正取引委員会は文句を言いません。ただ、内心は不愉快なはずです。それは、彼らがつくっているガイドラインでは、業界団体が標準契約書をつくることはカルテル類似行為とはっきり書かれているからです。

しかし、旅行業界はそれが許されています。なぜかというと、標準旅行業約款制度という形で法令の中に規定されていて、国土交通大臣がつくるという形になっていますので、法令に基づく行為ということで違法性がないと理解されています。
しかし、実質を見れば、従来の約款と異なっているのは、受注型企画旅行契約という契約類型を導入したという点なんですね。ということで、従来「包括料金特約付きの企画手配旅行」と言われていたものを「受注型企画旅行契約」という名称に変えて、かつ少し中身を変えたというところが、今回の約款改正の最大の特徴なんですね。

それがどういう意図をもって行われたのかというと、受理の合法化ですね。げた履き問題を正当化する目的が一つにあったということだと思います。
もう一つは、サプライヤーの意識改革にあったんだろうと思います。げた履き問題というのは、皆さんご承知のように、従来の企画手配旅行という契約類型があって、これは内訳明示型の企画手配旅行契約だったんですね。

内訳明示型というのは、費用と報酬を分けて明示しなければいけないということです。例えば、職場旅行を受注した場合には、航空券代が幾ら、バス代が幾ら、ホテル代が幾らという項目のほかに、「旅行業務取扱料金」という欄があって、上記の10%と書くか、あるいはお一人様1000円とか2000円とかというふうに書かなければいけなかった。全体をグロスする包括料金のほうは特約という形で別途認められていたわけですね。

その内訳明示型の企画手配旅行契約ですと、お客様は、その取扱料金をなんで一人あたりこんなに取るんだと、あるい10%も取るのは取り過ぎじゃないかという話になってきて、皆さん方もそれをだんだん削らざるを得ない。場合によってはそこが空欄になったり、ゼロになってしまう場合がある。そうすると、当然のことながら、旅行会社はどこで儲けるんだという議論になるわけですね。そこで一番履きやすいところにげたを履かせるという問題が出てくるわけです。

これは、当然のことながら、一般のお客さんが見て、あうんの呼吸でやっている分には問題はないんですが、取扱料金はゼロで、旅行会社のほうは航空会社、あるいは旅館さんからコミッションをもらっているんだろうというふうに誤解しているとすれば、明らかに刑法上の詐欺罪に該当する行為ですね。

実際上、10年ぐらい前までは、5年置きぐらいに、修学旅行の分野で増収賄で旅行会社のほうがよく挙げられていました。先生を接待して、何とか修学旅行を取ろうとするわけですね。

ああいうときに捕まった、あるいは捕まる前の捜査段階で、参考人として旅行会社の担当者は呼ばれます。私どもは事務所のほうで控えていて、彼らが取り調べを終えて帰ってくると、警察から何を聞かれたかということを聞くわけですね。

そうすると、警察のほうは、贈収賄もありますが、どうも見積りがおかしいということで、これは詐欺じゃないかということでそっちの方の話を結構聞いているんですね。それを何とか阻止しようということで、いろいろ動いて贈収賄で挙げられる程度で終わってはいますけれども、旅行の仕組みが非常に複雑なために、なかなか警察のほうも挙げられなかったという事情はある。

しかし、旅行業者は、何とか営業の利益を上げたいと一生懸命やる中で、そんなことをやっているというのはやっぱりよくないだろうと。だったらキチッとげたを履かせた営業ができるようにするためにはどうしたらいいかということを考えたわけですね。 そこで、内訳明示型企画旅行というような契約類型があると、どうしてもお客様のほうから内訳明示を要求されてしまうので、標準旅行業約款から内訳明示型というものをなくしてしまったわけです。包括料金特約付の企画手配旅行契約を受注型企画旅行契約という名前に変えて、かつ従来の主催旅行と全く同じように、特別補償も、旅程保証も、旅程管理もつけるということで、旅行会社の責任を非常に重くしたわけです。

一方、手配旅行契約は残っています。こちらは、内訳を明示する形にはなっているんですが、ほとんど単品手配を想定したような約款のつくり方になっていますので、本来は売りっ放しで終わりなんです。旅行会社は航空券のチケットを渡す。あるいは旅館のバウチャーを渡す。それで後は終わりという契約なんですね。

もう一つは、主催旅行と企画手配旅行の中で料金を定めて募集してしまう契約類型を企画旅行という言葉で呼ぶことにしました。
これはどういうことかというと、旅館さんが1万円で売っているものを、例えば旅行会社が独自にきれいなパンフレット等をつくって、1200円で売ってもいいじゃないかと、要するに値決めを自由にできるということをアピールするために、そういった概念を持ってきたわけです。

当時の国交省も、その約款の中で、企画旅行という形で、グロス料金というのを認めただけではなくて、旅行業法第2条第1項1号に旅行会社が値決めをすることを前提とした規定を置いてくれたわけです。
ああいう規定を置くことによって、サプライヤー、主に旅館さんやホテルさんも旅行会社が値決めをするのはやむを得ないんだというような理解が広まったわけですね。そういった形で、サプライヤーの意識改革をするという目的は達せられたんではないかと思います。

そういった形で、受注型企画旅行契約というのは、当然のことながら、営業のときに内訳明示型の企画手配旅行というのはなくなったということをお話して、自信を持って内訳明示の要求は拒んでいただく必要があるだろうと思います。

ただ、そうは言っても、営業の現場の中で、お客様の中には内訳明示がないとオーケーするというわけにはいかないという方も結構いらっしゃいます。そういう場合には、内訳を明示することもやむを得ないかもしれません。ただ、その場合には、取扱料金という項目は絶対に入れないでいただきたいと思います。先ほど申し上げたように、従来の内訳明示型企画手配旅行契約が刑法上の詐欺罪に当たってしまうというのは、そういった取扱料金なんていうものがあって、それと並列した形で航空券代、あるいはホテル代、バス代というものがあるために、一般の方たちが見たときに、取扱料金と別なんだという理解をしてしまうためなんです。

従って、そういった場合には、欄外のあたりに米印でも付けて、「各料金はいずれも当社販売価格です」という表示をしていただきたいんですね。つまり、これは旅行会社が仕入れてお売りしているわけですから、当然のことながら、仕入値ではありませんということをはっきり明示していただきたいんです。ここまで書いておいていただければ、仮に内訳明示した場合でも、詐欺とかなんとかという問題は一切起きないだろうと思います。

また、今回の約款の中には企画料金というものが明示されました。これは、お客様に日程等を明示する企画書面の段階で、料金表の中に、企画料金が幾らですと、あるいは企画料金は諸経費の10%です、というような明示していただいて、さらにお客様と契約を結んだ段階、いわゆる契約書面を交付するときに、契約書面の中にもそういった企画料金というものを旅行代金の内訳として書いておいていただければ、企画料金をもらっていいということです。

これは、実は旧約款の時代からあったんですが、約款上の制度としてあったわけではなくて、旅行会社のほうで企画旅行が最終的に取り消された場合、あるいは企画どおりの手配ができなかった場合でも、最低限企画料金だけは取りたいということで、事実上慣行として行われてきた事柄だったんですね。国交省の方ではそれだったら、約款上の制度としてきちんと書きましょうということで書いていただいたわけです。これは当然のことながら、取消料はかからない前段階で契約が解除された場合でも、企画料金だけは取れるという仕組みにしたものですので、ぜひ積極的に利用していただいたほうがいいだろうと思います。

ただ、企画料金と書くと、当然のことながら日本のお客様は、企画に対してお金を払うのを嫌がる方が結構いらっしゃいますので、たたいてくる可能性があります。この企画料金をもっと安くしろという形ですね。ただ、そうやって企画料金を安くしていきますと、今、申し上げたような最低限もらえる報酬というものがどんどん安くなってしまう危険性があります。もし安くしなければいけないという場合には、企画料金のほうは定率、現実にかかるホテル代等の例えば10%なら10%、あるいは15%なら15%という表示にしておいていただいて、そちらのほうをおまけして、企画料金それ自体を直接おまけするというようなことは避けたほうがいいんじゃないかと思います。つまり、全体の料金は減額するけれども、企画料金自体はあまり下げないようなやり方の表示の方がいいのではないかと思います。

最後に、企画のパクリの問題がよくあるという話をお聞きしました。これは今回の旅行業約款の中で、企画旅行契約を結ぶ段取りが若干変わりました。従来は契約を結んだ上で企画書面を渡して、お客様の承諾を得ればそのとおりの手配を行う。企画書面に対して承諾が得られない場合には、また別の企画書面を出すということでかなり細かに規定されている部分がありました。あの条文というのは、承諾期間の問題などがかなり複雑に書いてあっていて、普通に読んでもよくわからないようなところですから、これが整理されました。

今回の旅行取引の手順というのは、まずお客様に企画書面を出して、お客様が、これはいいねと言ってくれた場合に企画旅行契約を結ぶということになりました。そうしますと、お客様の中には、何社か呼んで、こういった形で職場旅行に行きたいけど企画書面を出してくれと言って、A社、B社、C社の企画書面が出たときに、お客様のほうで、A社の企画がいいなとは思ったんだけど、たまたまB社の社長と懇意だったために、B社のほうを選んで、実際にはA社が出した企画書面で旅行するというようなことが行われていると伺っています。

そこで、このようにB社がA社の企画をパクッたときに、何とか制裁を加えられないかということですが、可能性としてあるのは、レジュメに書いたように、まず一つは、その企画が知的財産権の対象といえるのかどうかということですが、これは残念ながらありません。どう考えても皆さんがつくる企画書面が知的な創造物とは考えられません。

次にあるのは、営業秘密の扱いができるかどうかということですね。不正競争防止法という法律がありますが、3年ぐらい前に強化されました。営業秘密と呼ばれるものについては、これを第三者が盗んできて使うという場合には、差し止め請求、それから損害賠償請求が認められるということで、かなり知的財産権に近い扱いになりました。従って、もし皆さんが作る企画書面がかなり特徴的で一般にはあまり知られていない、例えば秘密のデスティネーションというか、そういったものを含んでいる場合、場合によっては営業秘密ということで保護することは可能です。

ただ、この場合には厄介な手順を踏んでいただく必要があります。何が厄介かというと、秘密というのは人に知られていないようなものが含まれていることが前提なんですが、社内でも秘密として扱うということと、お客様との関係でも、その秘密が漏れないように秘密保持契約を結ぶということが必要になってきます。

社内で秘密に扱うというのは一体どういうことかというと、例えば部長さん以上しかその企画書面を見られないような規則をつくるとか、あるいはその書面に厳秘という判を押して、どこか鍵のかかる金庫の中にしまっておく。そういう扱いをして、誰が見ても、これは秘密として扱っているなと思うような環境づくりをしていただく必要があります。それから、お客様に対しては、その企画書面を他に漏洩してはいけないという秘密保持契約を結んでいただく必要があります。

最後に、事実上の防止策。これが一番重要だろうと思いますけれども、例えば皆さんがすてきなリゾートを見つけ、そこに一戸しかホテルなかったら、その部屋を全部買い占めてしまうということですね。そういったことで、一定の期間、先行者利益を確保するということが必要になってくるだろうと思います。お金がないとできないことですが、そういった形しかないだろうと思います。
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