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  シリーズ:添乗員のための旅行医学  
P10-11 【シリーズ:Cafe de JATA】

柏木:当社は「旅を通じて社会貢献を」をテーマに、国内外のエコツアーやボランティアツアー、国際交流ツアーなどを取り扱っています。ツアーの内容は、砂漠の植林や農作業の手伝い、子どもたちとの交流、家庭生活体験など多岐にわたります。参加者の年齢層は大学生から最高齢の95歳とさまざまですが、交流・体験系には大学生が、植林・作業系には60歳以上の年配の方が多く、ツアーによって年齢層に偏りが見られます。
 なかでも人気のツアーはカンボジアの自立支援と砂漠の植林。植林は、自分が植えた木に名札を付けるため愛着もひとしおのようで、長年にわたって木の成長を追って見ようと、リピーターとして継続的に参加される傾向があります。亡くなられた奥様が植えた木を見るために参加されたご主人もいらっしゃいました。

清田:ツアーの企画は、NGO・NPOの活動をネットで調べたり、アースデイなど社会貢献関連のイベントに参加して情報を集め、それをヒントに造成しています。もともと環境分野に興味があって入社したので、自分で企画した環境系のツアーが実現すると嬉しいですね。 
 ボランティアツアーの内容は事前にNGO・NPOの方々とも打ち合わせ、大まかなことを行程に組み込みますが、その場で変更になることもしばしば。現地で実際にボランティアを受ける方々がその時望んでいらっしゃることを提供したいからです。

   また、「話が違う」などのトラブルを回避するために、事前に写真付きの資料を用意し、しつこいほど事情を説明します。重要なのは、マイナス面の説明をきっちりすること。例えば、「宿泊はホテルですが、決してきれいなホテルではありませんし、シャワーからお湯は出ません」など。一つひとつの問い合わせに対し、お客様が不安に思われていることを想像しながらお答えしているので、旅行後の苦情はほとんどありません。

柏木:よく「なぜお金を払ってまでわざわざボランティアをしに、海外へ行くの?」と聞かれます。
 ボランティアツアーに参加する学生や20〜30代の若者にとって、旅行は特別ではなく、プラスαの誘因があって行くもの。そのプラスαがボランティア活動なのではないでしょうか。日本にもボランティア活動はありますが、日本は海外ほどボランティアに対する意識が高くないため、参加しても周囲の目を意識して思いっきり活動できなかったり、事前に多くの手続きをしなければならないなどの受け入れ側の体制の問題もあり、思いはあっても参加となると二の足を踏んでいるようです。そんな中、テレビや新聞で伝えられる途上国の厳しい現状を知って、関心が海外へ向き、「真実かどうか、自分の目で見て確かめたい」。そして「自分にできることがあればやりたい!」「まずはツアーで参加してみよう」と思うのかもしれません。もちろん、理由はいろいろあり、単に「人と違った経験をしてみたい」という理由で参加される方もいらっしゃいます。

清田:いざ参加してみると、既知の情報と現実とのギャップに驚かれる方が多いようですね。先進国との差、途上国である原因、生活の厳しさ…いろいろなことを感じられるようです。しかし、一見貧しいと思われる現地の人が人生を悲観することなく、前向きに生きている姿に触れていくうちに、「豊かさとは?」「幸せとは?」と、根本的な問題に立ち返り、これまでの価値観が一変するようです。それこそが当社のテーマにある社会貢献に通ずるもの。社会貢献の第一歩は「知る」、そして「考える」ことだと考えています。

柏木:「知る」からにはありのままの現地の実情を知っていただきたいので、ツアーには観光を組み入れ、さまざまな角度からその国を見ていただけるよう心掛けています。
 例えば、中国にはもともとあまり豊かではない上に、砂漠の拡大で生活が脅かされる地域がある一方、急速に発展を遂げる北京や上海などの大都市があります。地域の格差はもちろん、同じ地域の中でも、薪で火を起こして料理をしている生活の中に薄型テレビがあったり、ぼろぼろの衣服をまとって携帯電話を持っていたり、貧しいはずの地域が観光地化して栄えていたりと、意外な光景を目にすることがあります。
 参加者は旅行中、多くの疑問を抱き、多くの矛盾を感じます。でも、どれも現実であり真実です。いろいろな側面からその国のきれい事ではない現実を見て、知って、自分なりに考えていただくことにツアーの意義があると思います。

  
清田:ボランティアツアーの人気デスティネーションのひとつであるカンボジアは、長い内戦による地雷の問題が頻繁にメディアに取り上げられているためか、ボランティアのイメージがつかみやすく、高い集客率があります。同じようにスリランカにも地雷は埋まっていますが、メディアで取り上げられていないために世間のスリランカへの関心は薄いのが現状です。援助やボランティアを必要としている地域に向けてどんなに良いツアーを企画し、それに社会的意義があっても、ある程度メディアによる露出がないと世間の意識に根付かず、集客できないのが残念ですね。

柏木:
そうですね。集客できずに催行中止となってしまう場合、お申し込みいただいたお客様には別のツアーをおすすめすることもできますが、それまで綿密な打ち合わせをさせていただいた現地の方々やNGO・NPOの方々にはツアーを催行しない限り、何も返すことができないので本当に申し訳なく思います。NGO・NPOの中には素人のボランティア活動を良く思われない方もいらっしゃいます。根気強く当社のコンセプトを説明し、これまでの実績を踏まえて、やっとご理解いただいて商品造成が実現したのに、集客できず中止に。商売としてやっている手前、仕方がないことですが、自分がボランティアをしていたときとの立場の違い、ボランティアを商品として扱うことに対する戸惑いを再認識し、葛藤が生じますね。
柏木:現在、ツアーを構成する柱は、環境、教育、福祉、平和などさまざまですが、今後は環境分野をもっと掘り下げ、企業のCSR担当者が参加して勉強できるようなプログラムなど、専門性を持たせたツアーを実施したいと思います。学生や若い方にも参加していただき、より問題意識を高めていただきたいですね。

清田:ツアー後も参加者の問題意識が続くように、日本に戻ってからもツアーと同じテーマにそって学べるような活動を一連の流れとして実行していきたいと考えています。日本でも気軽にボランティアや勉強会ができるような環境づくりとして、世界の諸問題を啓蒙することから始めなければならないのかもしれません。
 
 当社のツアーが世界の真実を知る「きっかけ」、考える「きっかけ」、ボランティア活動をする「きっかけ」、などあらゆる「きっかけ」となり、その「きっかけ」を常に世に送り出す旅行会社であり続けたいと思います。

柏木:最近の若者は何事にも無関心といわれていますが、内に秘めた熱さは持っています。見た目は派手な今どきの子でも現地に着くと一変。ノーメイクで汗だくになって活動したりします。若者の熱さを引き出すためにも、これからももっと旅行にプラスαの魅力を持たせられるよう追求していきたいですね。「若者は目的を持つと強い! 今、若者こそ熱い!!」と思っています。

取材の中で、旅に必要なのは「ロマン、休み、お金」という話をお聞きした。そのうちお金はなくてもロマンがあれば行く人は行くとも。長期の休みは会社勤めをしているとなかなか難しいが、せめて旅に対するロマンだけは持ち続けていたい。ロマンを持った人の話はきっと「旅をしたい」と思わせるはずだから。(し)

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