3月号インデックス特集1│特集2│旅の力JATA NOW Cafe de JATA 添乗員のための旅行医学バックナンバー
   旅の力
P2 【特集/旅行会社のリスクマネジメント】







 当社では以前から危機管理(リスク管理)対応マニュアルはありましたが、2003年のイラク戦争をきっかけに、今後、海外における事故だけではなく企業経営に影響するような幅広い分野でのリスク発生に対する体系立った危機管理が必要であると考え、対応マニュアルの整備に着手しました。現在では、事件・事故、自然災害、食中毒、新型インフルエンザといった感染症のほか、システム関係のトラブルや情報漏えい、テロ、反社会的勢力に対する対応など、想定されるリスクをジャンル分けして作成しています。
 リスクには、事故のように発生を受けて被害の状況を把握しどう対処するかが大きな焦点となるものと、感染症や情報漏えいなど発生そのものは第一段階で、その後拡大の可能性があるものなど、リスクの内容によって受けた被害やお客様への対応はもちろん、被害を拡めないための対応、収束に向けた対応など想定されるリスクによって対策は異なります。また、リスクは、いつ、どのような形で発生するか予測できませんし、全く同じリスクが発生することは100%ありません。そのため、各分野のリスクを想定し、それぞれの状況に応じた基本的な指標となる対応マニュアルを作成しました。とはいえ、状況が異なる中でも、その対応に共通する部分もあります。迅速な情報収集と会社対応の一元化による適切な情報発信です。特に対策本部を設置するようなリスクについては、情報をそこから一元的に発信するよう徹底しています。

 ひとたび事件や事故、トラブルが起きれば、お客様相談室にも電話が集中します。それが大きなリスクであれば、対策本部を設置し連絡系統が一本化され、そこを起点に社内外に対し会社としての明確な対応や情報が発信されます。お客様相談室としても本部と連絡を密にとりながら的確な解答ができます。CS的な観点から言いますと、各部署で言っていることが異なることが一番混乱をまねく原因となります。
 また、発生した事例については、細かなものから緊急対応した事例までその詳細をファイリングし、データーベース化しています。そして類似のリスクが発生した場合に参考にしています。ただし、それらはあくまでも事例として参考程度にとどめるようにしています。繰返しになりますが、リスクに同一のものはありません。状況やお客様が違えば、対応が違うのは当然ですから。

 マニュアルを整備するに当たり、海外にグローバル展開する企業や食品・流通など異業種のリスク管理もリサーチし、旅行業にも参考となる部分は積極的に取り入れました。基本となるものを作成し、それに各部署の意見なども取り入れ随時更新を重ねることで、現場の実態に合うものになりました。しかし、危機管理対応で大切なことは、マニュアルを作って安心してしまわないことです。1年に1回はマニュアルの内容や連絡網の確認を行うほか、ゴールデンウィークや年末年始など長期の休み前にも必ず連絡網のリストを見直してもらっています。さらに重要なことは、いかにマニュアルがしっかりできていても「想定外の事態は必ず起こる」と考えて対応することだと思います。完璧な対応マニュアルなどないと考えることから危機管理は始まっています。事態をいかに的確に把握し、情報を社内で共有した上で、どう迅速かつ適切に対応するかを常に意識することが大事だと考えます。
 今後については、さらに一歩先に進み、事前の予防策(リスク予防)にも着手していきたいと思います。


●事件・事故
●自然災害
●食中毒
●新型インフルエンザ
●システム関係のトラブル
●情報漏えい
●テロ、反社会的勢力に対する対応 など






 2011年4月出発の商品から、ANAハローツアーの全方面、全コースに、海外旅行保険を組み込みました。ANA’sシリーズと旅ドキシリーズでは補償内容に差がありますが、全商品に海外旅行保険を組み込むのは業界初だと思います。もともと当社では、1993年から現地でのケガ・病気の治療費を50万円まで補償するサービス(ハローアシスト)を行っていますが、今回のサービスは、これを拡充させたものです。
 2010年夏に起きたスイスの列車事故では、当社のツアーに参加されたお客様も被災されました。普段から海外旅行保険の必要性を認識してきたつもりですが、海外旅行保険への加入の有無で事故後の対応が迅速に出来る、出来ないなど、改めてお客様にとっての「安全」「安心」とは何か、旅行会社ができることは何か、を考えるきっかけとなったのも事実です。

 この事故を機に、社内で経営企画部や販売統括、CS推進などのほか、総務などの管理部門を含めた横断的なプロジェクトチームを立ち上げました。当初は、いかに任意の海外旅行保険の付保率を高めるかを中心に話を進めていましたが、いろいろな面から対策を検討する中で、「ハローアシストを拡大する形で何かできないか」との意見が出て、全商品に海外旅行保険を組み込む「あったかサポート」を開始することにしました。
 サービス開始にあたり、引受保険会社と何度も打ち合わせをしました。9月頃に当社から保険会社に提案し、12月に入って内容が固まりました。短期間で商品に組み込むことができたのも、ハローアシスト時代から20年近い実績があったからこそ実現できたと思っています。

 ANA’sシリーズでは治療・救援費用の保険金額を無制限、賠償責任の保険金額を1億円にするほか他、死亡補償、携行品損害なども付いていますが、旅ドキシリーズは治療・救援費用と賠償責任のみ付保し、保険金額をそれぞれ1億円としました。お客様サービスの一環としては十分な補償額になっていると思いますが、それでも決して任意の保険に入らなくていいというものではありません。この補償はホールセラーとしてのお客様に対するサービスと考えており、足りない分は任意で海外旅行保険に加入していただくことが必要で、お客様には引き続き保険を勧めていただきたいと思います。補償内容については、任意の保険同様に補償対象の有無があります。今回の商品発売とあわせ専用ダイヤルを用意してお客様や販売する旅行会社からの問い合わせに対応します。
 FITが増えている今、お客様が旅行会社、パッケージ旅行に求めるものは何かと考えたとき、答えのひとつが「安心・安全」だと思います。品質への安心はもちろん、何かあった時のフォローも求められている時代です。お客様が安心して旅行に行く気分になる。そんな状況を整えるのも我々の役目だと思っています。


●経営企画部
●販売統括
●CS推進
●総務・人事などの管理部門
●予約センター
●WEB販売部 など


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