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   旅行業界にできる復興支援 Part.2
P2 【特集/旅行業界にできる復興支援】


 震災後JATAは東北事務局を通じて東北地区の会員会社の被災状況の確認を行い、3月下旬、復興のための施策を検討するためJATA内に復興プロジェクトワーキンググループを設置。4月15日に「日本を元気に、旅で笑顔に。」をスローガンとした「東日本大震災からの復興に向けた宣言」をリリースしました。4月下旬には金井耿会長がJATA東北事務局(仙台市)を訪問し、被災状況などを視察しました。一方でJATAによる被災地への直接的な支援として、4?6月にかけて計3回のボランティア活動を実施。会員会社から参加者を募り、宮城県東松島市にて民家の泥の掻き出しなどを行いました。6月5日には駐日外国公館関係者等45人も参加、ボランティア活動のほか、翌6日に比較的早く観光が再開された松島、世界遺産に指定された平泉を視察し、東北の現状に理解を深めてもらいました。


 
リリースは朝日新聞、読売新聞の全国版、日本経済新聞の東京本社版に全面広告として出稿。

 旅の力を活用した取り組みとして、6月6日からJATA、日本政府観光局(JNTO)の初の共同キャンペーン「日本からの“ありがとう”キャンペーン」がスタートしました。7カ国語でありがとうと書かれた3枚セットの絵葉書を2種類20万セット用意し、海外旅行に行く日本人旅行者などに配布。海外で出会った外国人に葉書をプレゼントし、日本への義援金を含めた支援に感謝の気持ちと日本が安全であることを伝えるとともに、訪日旅行への興味を喚起してもらう狙いです。そのほか、被災した子どもたちに旅で笑顔になってもらいたいとの願いを込めて、
7?8月の夏休み期間に計3回、被災地の小学生を東京に招いて東京ディズニーランドや都内観光などで楽しんでもらう招待旅行を実施する予定です。
 旅行業界として、観光に支障のない地域に向けた継続的な送客、今夏の電力事情に呼応した長期の旅行の提案や日本の元気を世界に届けるお手伝いなどを行うことが復興に向けてこれからますます必要となってきます。また、被災された方が少しでも早く通常の生活に戻るためのボランティア活動など社会貢献事業に力を入れていくことが引き続き求められています。

 
「日本からの“ありがとう”キャンペーン」では、富士山を共通とし、仙台の七夕祭り、松島の東日本版、清水寺と天橋立の西日本版の3枚2種類の絵葉を配布。  


4月27日:21人(JATA社会貢献委員会メンバー+JATA事務局) 4軒
5月27日:79人(JATA会員会社社員+JATA事務局)     13軒+側溝
6月 5日:85人(JATA会員会社社員+JATA事務局+駐日外国公館) 4軒+側溝

 JATAでは旅行会社から参加希望者を募り、宮城県東松島市で4月27日、5月27日、6月5日の計3回、駐日外国公館関係者を含め延べ185人によるボランティア活動を行いました。
 深夜に東京からバスで東松島に向かい、朝8時から活動を開始。1チーム約10人に分かれ、床上・床下浸水した民家の泥の掻き出しや家財道具・食器の後片付け、側溝の泥の掻き出しなどを行い、その活動は3回であわせて20カ所以上となりました。参加者たちは一様に「直接支援をしたかったが一人では力が小さすぎる。そんな時にこの取り組みがあり、参加できてよかった」と言い、被災地の人々の1日も早い復興を願いました。



 震災後、旅行者はどのような動きをし、夏以降はどう動きそうか。海外、国内、訪日旅行について旅行会社に伺いました。



 当社は東北6県に7カ所の事業所がありますが、幸いなことに震災後すぐにお客様、社員の安否を確認できました。その後3月いっぱいは、関西、九州など地震と関係の無い地域のツアーを含めキャンセルの対応に追われました。そんな中でも、新規予約者が全く無くなることはなく、3月末には予約がキャンセルを逆転。4月上旬から被害の大きかった宮城県、福島県を除く地域で広告を再開したところ、5月上旬には新規受注額が前年並みに回復し、連休明けには宮城県、福島県でも広告を再開しました。宮城県では、5月末催行の蔵王・日帰り温泉ツアーが大変好評で全設定日催行となるなど動きも出てきています。
 今夏の動向は、東北の夏祭り商品については前年同期と比べ予約は多くなっています。また東北の落ち込みを他の地域がカバーし、全社では前年を上回る受注状況となっています。お客様の東北を支援したいという気持ちが高いのではないでしょうか。またこの夏には産業界の輪番休業による休日の分散や企業の長期休暇の推進など、旅行業界にとって重要な季節となります。休日の平日へのシフトは、販売の機会を増やすものと期待しています。
 秋以降は新幹線の通常運行や仙台空港のインフラが回復すると聞いています。インフラが回復すればツアーの企画数も増えることから、夏以上に旅行需要が高まることを期待しています。被災地だけでなく日本を元気にするために業界全体で力をあわせていきましょう。



 今回の震災は過去にあったものと違い、親族に限らず「被災された方がいるから取り消す」などこれまでの常識を越える理由のキャンセルが相次ぎました。当社でも特例を設けて震災を理由に受け付けましたが、その定義にも苦労しました。類を見ない大震災ですから旅行業界全体としての方針を取りまとめるべきだったと思っています。
 震災後はキャンセルが出たものの、その直後から取りやめたお客様に対して旅行の再予約を促したところ毎月右肩上がりで戻っており、海外旅行の動きはさほど鈍くないようです。特にキャンセルの多かったファミリー層は、夏の早期予約の特典が奏功し早めに計画を立てられたお客様についてはアーリーサ
マー・レイトサマーの時期の予約が順調です。また、ルックJTBに関しては、西日本発、中部発の予約が好調です。夏休みが未決定の企業が多いのか一番のピークである8月はまだ動きが鈍いのですが、地震直後に自粛した人や今は旅行をするか迷っている人が旅行に動き出すことで需要が大きく伸びることも期待されます。なお、シニア層は秋以降には動き出すと見ています。
 今年は企業の節電対策による長期休暇の導入などもあり、これまでの日本人の旅行パターンが変わる可能性を秘めています。JTBでは各ブランド統一のロングバカンスを謳った商品をそろえて長期滞在型旅行の需要喚起や、販売店ではいつもの旅行にプラス1泊を促すキャンペーンも展開しています。新たな日本の旅行の在り方、ライフスタイルの変化となるきっかけにしたいですね。



 アジアインバウンド観光振興会(AISO)はアジアからの訪日旅行を専門に扱う旅行会社の団体で、会員29社が年間約150万人をお迎えしています。震災直後はアジア全域で訪日旅行を控える動きがあったものの、徐々に動き始めています。親日派の多いタイからは旅行会社のファムトリップ40人が4月30日に来日したのに続き、例年より安い価格が奏功して一般のお客様60人が翌5月1日に来日。マレーシアからも5月下旬に150人の団体が来日しました。これらのツアーは主に東京を中心にした3?4日間のものです。アセアン諸国にとって日本は憧れの旅行先であり、その中でも東京は別格。まずは東京に来ていただき、「東京は元気で大丈夫だったよ」という情報を広めていきたいですね。今、AISOの会員各社が赤字覚悟でこういった活動を続けていますが、それを呼び水に他社が追従すれば、これからの訪日旅行に弾みがつきます。今秋以降は各国から「日本を助けたい」気持ちが後押しをして、前年並みに回復すると見ています。
 ところで気になるのは、日本の表玄関である成田空港や羽田空港の到着ロビーが節電対策で暗いこと。到着して最初に足を踏み入れる場所が暗いと、いまだ混乱中の印象を与えかねません。節電はやむを得ないですが、国策としてインバウンドを推進する以上、到着便が集中する時間帯ぐらいはパッと明るくして歓迎ムードを出してほしいですね。

 

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