3月号インデックス│特集│PeopleJATA NOWCave de JATA添乗員のための旅行医学バックナンバー
   People
P2 【特集】



 長年、学生の就職活動状況をリサーチしていますが、一時期「就職先企業を選ぶ際に重視する点」の調査で上位に入っていた「大企業である」「業界順位が高い」の順位が下がり、職場の雰囲気や将来性、仕事内容を重視する学生が増えています。特に今年は「社会貢献度が高い」のポイントがアップしています。リーマンショック以降は、企業の外見にこだわるのではなく、その職種や会社が自分に合うかどうかをしっかり見ようとしています。
 企業の人気ランキング調査で旅行会社は上位に入ったりしますが、学生が内定会社を決める段階で、実際には旅行業界がどのような人材を欲しがっているのかがわかりにくく、就職先の候補から外れてしまうことが多いのではないでしょうか。ただ単に「旅行が好きな人」といった漠然とした考えの母集団にしないために、自社が望む人材像を明確に打ち出す必要があります。


 旅行会社からは、優秀な女子が目立つ半面、優秀な男子は金融や商社などの業種に流れ、なかなか集まらないという話をよく聞きます。エントリーシートの提出、学力・適性テスト、面接という今の就活システムは、全般的に女子が優秀に見えてしまいがちです。特にサービス業は女子の志望者が多く、母集団が大きいことも関係しています。
 優秀な学生は「入社後、自分がどんなことに携われるか」「自分がどのように成長できるか」の観点から会社を見ています。そこで、優秀な人材を多く集められる企業は、採用活動を会社の重要なミッションに位置付け、多くの人材とパワーをかけます。学生の就職活動がスタートしてから選考日までの数カ月間に、複数回のセミナーを開催するだけでなく、セミナー後も継続して学生と接触する機会を設けています。また、その際には経営者や仕事のできるエース級社員と話をする機会を積極的に持つことで、会社側の採用にかける本気度をアピールしています。それによって学生は会社の意気込みを感じ取りますし、自分が入社した後の人材育成にも期待を寄せます。


 観光学科系の学生は旅行会社の良いところも課題もある程度理解していると思いますが、他学科の学生は旅行業界を詳しくは知りません。入社後のミスマッチを防ぐには、会社情報を可能な限りオープンにする必要があります。今は就職活動の情報を共有するインターネットサイトもあり、上辺の取り繕いやごまかしはすぐにバレてしまいます。一方で学年が近い先輩や同級生の口コミは受け入れやすい傾向があります。会社が直接学生と接触する機会を増やし、会社の真の姿を伝えていくための工夫が必要です。
 ミスマッチを防ぐために学生と直接接触する機会としては、インターンシップ制度の導入もよいと思います。2013年入社対象者の採用活動に関して、経団連の「倫理憲章」で採用広報活動期間の規定が変更になったことに伴い、(12月1日以前に実施可能な)要件が厳しくなりましたが、それでも積極的にインターンシップを行っている会社は少なくありません。インターンシップは良いことも悪いことも含めて、学生が業種や会社について知る機会です。それにより会社と学生との心理的距離が近くなります。学生も、同じような条件の2社から内定をもらった場合、より理解している方を選ぶものです。


なお、今年は就職活動のスタートが例年より2カ月ずれ込んだことから、4月上旬〜下旬に大手を中心とした、多くの企業の内定提示が集中すると予想されています。学生も企業研究に割ける時間が短く、自分の方向性を定められないまま選考に突入する可能性があります。そのため今年は、5月以降も自らの就職の方向性を修正して臨む優秀な学生が多くいるものと思われます。そのタイミングで適切な情報とメッセージを発信し、旅行業界が望む人材を広く学生たちにアピールしていってはいかがでしょうか。




 近年、当社のような大手ではない会社にも高学歴で優秀な学生からの応募が増えました。最近の学生は自分のやりたいことを的確に把握していて、それができる会社や部署で働きたいという意識から、会社の規模にこだわらない様子がうかがえます。特にサービス産業はやりがいを見つけられる業界として注目されていると感じています。
 それに、企業の哲学や姿勢をよく研究しています。当社では社員の資質として「旅が好きである」ことは必要だと思っています。好きでなければお客様の心理はわかりません。一方で旅行は歴史や音楽、文化、地理など幅広い知識と興味が必要とされる総合企画産業です。旅行以外にも広い視野を持ち、いろいろなところにアンテナを張れる人を求めています。入社を希望する学生はそういった当社が希望する人材の内容をよく調べてきていますね。
 採用情報は可能な限り自社サイトで発信しますが、会社説明会で社長や役員クラスが直接出席し、まず会社のポリシーや考え方、企業姿勢を説明しています。仕事の大変さはもちろん伝えますが、その大変さの中でどんな体験が得られるのかをあわせて伝えています。



 当社では、採用試験の後に社長や幹部によるグループ面接を行います。その後に若手社員と1対1の食事会を開き、働くにあたり気になることや実際の仕事内容などを質問してもらったりして、社員と率直に話す場を設けています。その後に最終面接を経て内定者を決定します。
 考えてみると、若手社員による選考が人事担当より後にあるのは、通常の面接とは順番が逆かもしれませんね。しかし、この流れが入社後のギャップを減らすことに役立っています。旅行業の中でもリテーラーやホールセラー、ランドオペレーターでは仕事や社風が異なります。それは社員に話を重ねて聞くことでわかることです。希望する人材とのミスマッチ、思い描いた仕事とのギャップは学生にとっても当社にとっても不幸以外の何物でもありません。選考段階でギャップを埋めることが重要だと思います。
 入社した際には、仲間として共に旅行業界を働き甲斐のある産業にしていきたいと思っています。

 観光を勉強していく中で、インバウンドを通して日本の経済を活性化させることに興味を抱き、就職活動は業種にこだわらず、インバウンド関係の仕事ができる職種を探しました。また、大学ではサービスやホスピタリティについても学んでいたため、そういった職業に就きたいとも考えていました。ブライダルやホテル業についても学びましたが、旅行業が最も自分の考えが生かせる業種と判断し、就職を決めました。

 観光学科での講義はもちろん、日本学生観光連盟に所属していたこともあって、旅行業界はツアーの企画や添乗するといった良い面だけでなく、 地味な事務作業が多いことや、休みが少ないなどの実状をある程度理解していました。ただ、会社説明会を通して「地道な作業があってこそお客様に喜んでもらえる」などと話を聞いて感動しましたし、何より働きたいというモチベーションが上がりました。一方で、観光市場は伸びしろがあるなどといった良い面が強調されがちですが、その説明に裏付けがあるかないかを学生は冷静に見ています。

 自分自身の成長のために、20代のうちは仕事に打ち込みたいと考えているので、休暇などの待遇はあまり会社に求めていません。 それよりも、会社の規模にかかわらず社長自身が成長戦略について明確なビジョンを示しているかどうかを重要視しました。そして、そのビジョンに沿って実際に社員が仕事をしているかというところも重要なポイントです。

 旅行会社は、かたちのないものを売る仕事。だからこそ想像力が大事だと思っています。例えば、他の業種との交流を活発に行うなど旅行業を違った角度から見るチャンスがあるとおもしろそうです。ゆくゆくは、インバウンドで日本経済の活性化を、ひいては地域交流や地域活性化の仕組み作りをしていきたいと考えています。



 両親が大の旅行好きで、幼い頃から旅行が身近な環境でした。小学生の時、家族旅行のプランニングを任されたことがあったのですが、相談に行った旅行会社のカウンターの女性社員から的確なアドバイスをいただいたことに感動し、それ以来ずっと旅行業界で働くことを夢に抱いてきました。今は就職活動の真っ最中で、他業界を見る機会も増えましたが、やはり自分のやりたいことは旅行業が一番近いと感じています。

 入学からの3年間、旅行業界について学んできましたので、特にギャップを感じたことはありませんし、旅行業界を目指す気持ちが薄れたことはありません。大学では利益率の低さなど厳しい現状も学びますので、観光学部系から旅行業界に就職を志望する人は皆、それらを知った上で活動するので、旅行会社を目指す熱い人たちだと思います。

 旅行会社ごとの特徴はある程度知っていると思いますので、この会社に入ったら何がしたいとそれぞれ理想はあります。常に「その会社で自分なら何ができるか」という視点で考えています。それと、仲間と気軽に話をして協力し合える風通しの良い職場環境かどうかが気になります。

 友人の中にはフェイスブックなどのSNSを使った情報収集をしている人もいます。私自身はあまりネットを通じたコミュニティサイトは利用しません。企業側がSNS等で発信する情報以上に、説明会に行って会社の方々から聞く生の声を大事にしています。

 普段旅行に行かない人たちに、もっと旅行に行ってもらえるような仕組みやサービスを考えたいです。現在はインターネット販売が広がっていますが、自分が感動したようなカウンター販売の良さをもっと知ってもらいたいですし、旅行の楽しさも感じてもらいたいです。少しでも出国率を増やしたいです。



 高校卒業後、留学中のオーストラリアで参加した現地のツアーで、ガイドの方にお世話になって旅行業に興味を持ちました。中国語と英語が少し話せるので語学が活かせることも理由の1つです。学校ではツアーコンダクター科を専攻しましたが、勉強していくうちに自分がやりたいのは、MICEなどを通して一企業の、さらには日本経済の活性化を図ることだと気づきました。

 現在、内定先の会社で早期研修として働いています。BTMを取り扱う部署で、オフィス内での仕事ですが、お客様の商談などをサポートする仕事がどういうものかが改めてわかりました。就職活動中は直接お客様と接する仕事に魅力を感じていましたが、サポート役の魅力も分かり、よい経験になっています。


 SNSも利用しますが、基本的には、先輩からのアドバイスで「無料の情報より有料の情報を活用せよ」という言葉を信用しています。就職関連の雑誌などを見て、経営者がどのようなことを言っているのかをチェックしました。会社の方針が分かれば、会社が求めている人材も推測できますので、自分の意志と合致しているかどうかを研究しやすいです。

 今の会社を決めたのは、大手の会社であることが大きいかもしれません。規模の小さな会社では1人ですべての業務を行うことが大きな魅力と感じましたが、大手の会社では数年ごとの異動で異なる職種が経験できるほか、規模の大きい仕事に携われる可能性が高いところに魅力を感じました。

 さまざまな部署や取引先でたくさんの人と交流の場を持ちたいです。まずは与えられたことを確実にできるようにし、最終的には自分自身が仕事の中心となって、会社、取引先、社会すべての利益になるような仕事がしたいです。将来はMICE事業にも携わっていきたいと考えています。


 以前は観光学科=旅行のイメージがありましたが、今はホスピタリティ系の学科や、社会の問題を解決するための学問として観光学そのものの概念が広がりました。ビジネスとしての観光や学問としての観光を学んだ視点から旅行業界を見ると、旧来型の旅行業のままでは魅力が分かりにくいのかもしれません。大学で旅行業について学ぶと、添乗員の待遇が厳しいことや、ツアーの企画といっても制約が多く、実現可能なものを作ろうとすると「企画はそれほど楽しいものじゃない」ことに気づいてしまうんですね。学生にとって旅行会社で働く魅力が感じられなくなってしまっているのでしょう。

 以前の観光学科の学生達の多くは就職希望先として旅行会社を中心に考えていたものでしたが、観光系学部として学習分野が広がると、ホテル業界に就職を希望する学生が増えているようです。これはホテル業界がインターンシップに非常に積極的なことも関係があるのではないかと感じています実際に社員が働いている現場を見ることで、その業界や会社にどんな人材が向いていて、どういう人材が求められているのか、そこで自分がどのように働くことができるのか、働きながら何を身につけられるかがイメージしやすくなるのだと思います。翻って旅行業界は、ネットで旅行の手配を終わらせる昨今の学生にとって旅行会社がそれほど身近ではなく、どんな仕事をしているのかがイメージしにくいのではないでしょうか。しかも、旅行業界のことを学んだ観光学科の生徒においても、在学中に一生懸命とった資格を旅行会社の社員が参加する授業や業界セミナーなどでいとも簡単に「資格を持っていても採用に役立たない」と言われてしまう。そうすると、今まで自分が何のために勉強をしてきたのか、その意義を見出せなくなり、旅行会社で何ができるのかが見えてこないのだと思います。

 観光(=旅)は、各自に与える多様な効果と社会を変える大きなインパクトを持っているはずです。そのためにどのような人材育成を行うのか、大学のカリキュラム編成にもさらなる改善が必要です。一方で業界には、どういう人材が欲しいのかを大学側や学生に発信してほしいと思います。「人間力」では抽象的です。例えば、学校の枠を飛び出して観光の活動をしている日本学生観光連盟のような、組織的な活動の運営に携わったことがあるなど、学生が想像しやすいものを発信していただきたいですし、それを我々大学関係者と一緒に作っていけたらと思います。

  People

3月号インデックス│特集│PeopleJATA NOWCave de JATA添乗員のための旅行医学バックナンバー

Copyright (c) 2012 Japan Association of Travel Agents. All right reserved.