実施日 2003年6月25日
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溝口 薫平 氏 (由布院玉の湯代表取締役社長) |
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小野 正文 氏 (ゆふいん山水館代表取締役会長) |
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秋永 祥冶 氏 (山のホテル夢想園取締役総支配人) |
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麻生 雅憲 氏 (株式会社翼代表取締役) |
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藤林 晃司 氏 (有限会社山荘無量塔代表取締役) |
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桑野 和泉 氏 (由布院玉の湯専務取締役) |
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米田 誠司 氏 (由布院観光総合事務所事務局長) |
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| ※役職はヒアリング当時 |
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■ 成熟期→再生期 由布院のまちづくり
由布院のまちづくりは住民の主導による住民のためのまちづくりが基本である。その発想はまちづくりの全ての部分に及んでいる。「量より質」「経済優先より生活優先」「ものづくりよりひとづくり」。よって「観光より地域」が先に来るのである。また、由布院のまちづくりを語る時、そこには欠かせない人物がいた。行政の強力なバックアップもあり由布院は自然環境を中心とした癒しのまちづくり。健康保養温泉地へと変貌を遂げた。
由布院には小規模な旅館やホテルが点在している。大きなことがよいという時代に、小規模であることを逆にスケールメリットとして捉え、色々な宿が重なりあうことによっていろいろな層を受け入れて個性ある「地域」を形成していった。「旅館ありきではなく、まず地域ありき」である。旅館の板前は直接農家から野菜を仕入れスローフードを早くから実践した。また、板前同士の交流も活発で、そこには由布院に長期滞在するお客様への思いがある。由布院のまちづくりは資金不足から全てが手作りで始まった。それ故、既成の質感に飽きた人々の心をしっかりと掴んだと言える。そのような由布院も現在、温泉地としては成熟期を迎え、次の一手を打つ時期が迫ってきている。
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由布院では日観連に加盟している宿が40年間欠かさず毎月1回会合を開いたり、現在でも2年に一度海外視察を行うなど常に人脈ネットワークを保ち続け、時代にふさわしいまちづくりのフットワークの基礎となっている |
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辻馬車がお客様の意見を吸い上げて早期に解決するシステムとしても機能していたり、月に一度旅館経営者が他の旅館の料理を試食するなど、お客様の満足度を高めるための努力を行っている。 |
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狭い地域では互いに足を引っ張り合うことがあるが、やはり強力なリーダーの存在が欠かせない。それにも増して由布院では料理人の貸し借りや財務面の開示など、地域全体としてオープンな特質を作ってきた。それは全てにおいて小さいけれどもいいものを提供するという考え方に基づいている。 |
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現在の由布院には年間400万人の観光客が訪れ、100万人が宿泊しているが、年々観光客の数が増えるにつれ訪れる人々の層も多様になってきていることから、「良いもの」を提供するという観点から、観光客の総量規制も検討している。 |
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<1>開発を極力避けた素朴な風景が人々の心を掴む:由布岳
<2>レンタサイクルを利用して自然散策を楽しむ観光客
<3>効率的に由布院のまちを散策できるレンタサイクル店が人気
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由布院では消費者が望む旅館を旅行会社が扱っていないことも多い。事実旅行会社が扱いにくい旅館も多く、消費者意識とのギャップの解消なども課題である。 |
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成熟期を迎えた由布院では「次の由布院」を目指して旅行会社と次世代のリーダー達との交流を活発に推し進め、共に地域と観光を発展させていきたいとの考えがある。
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<現地視察>
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由布院玉の湯
地元の素材を最大限活用した食事。箸も地元の竹細工製品で、一膳数百円。
経済効率性よりも、地域とのつながりを大切にする。
客室稼働率90%以上。女性のリピーターが多い。
前日夕食時に、朝食のメニューを個々にオーダー。 |
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山荘無量塔
由布院の人気旅館のひとつ。
ライフスタイルの提案ができる宿、「こんな別荘に住みたい」と思う宿をめざして作った。
人の手を入れても、もとの自然以上の環境となるように配慮。 |
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空想の森アルテジオ
音楽にまつわるさまざまな分野のアートを集めた美術館。館内には読書室やレストランもあり、ゆっくりとした雰囲気の中で、芸術と食を楽しむこともできる。 |
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時間的な制約もあり、町の隅々まで視察することはできなかったが、視察した施設は、ことごとく由布院の自然やまちとの調和の中で、施設の個性を明確に打ち出している。
<旅行会社が対応可能なこと> サステイナブル・リゾート商品の開発
年間400万人の観光客を受け入れる由布院は、地域として受け入れられる人数の限界に達しており、これ以上マイカー利用の観光客が増えると、コミュニティーとしての機能が麻痺し、由布院の魅力が失われてしまうことが危惧されている。
旅行会社と由布院の観光関係者および行政が一体となって、由布院の魅力を維持しつつ多くの観光客に訪れていただけるような「サステイナブル・リゾート」のあり方を研究し、旅行のシステムとして具体化する。
今後、国内旅行を考えていく上で「サステイナブル・ツーリズム」の考え方を避けて通ることはできないが、由布院での「サステイナブル・リゾート」商品開発のノウハウは、国内の他地域に展開可能なものとして価値が高いと考えられる
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実施日 2003年6月26日
地元参加者 後藤 哲也 氏 (新明館 代表取締役社長) |
| ※役職はヒアリング当時 |
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1. 田舎は、「いなからしい、おしゃれ」を提供すべき
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田舎なら、「いなからしい、おしゃれ」を提供しなければならない。それは地域性ということだ。田舎で都会のような便利の良いおしゃれを提供してもそれは違う。例えば、床の間に豪華に花を生けるよりも台の上に一輪の花を差したほうがお客様は感動するし、その地域にあった方法でおしゃれを提供しなければ折角、街から来たお客さんも感動しない。これが「いなからしい、おしゃれ」というものだ。 |
2. 街の個性をつくる
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個性ある街をつくるには、まず自分が一生懸命勉強することから始めなければならない。「この街をこうしたい」という強い気持ちがあれば有名な設計家が作った建造物がいかに、その街の個性や特性を無視したものかが分かってくる。全ての人に好かれるような街ではいけない。街の好き嫌いが出て初めて個性ある街といえるのである。
街の中、あるいは店の中に1つでもそぐわないもの、溶け込まないものがあると全体に違和感が出てしまう。看板ひとつとっても、その看板の前で写真を撮りたくなるくらい街に溶け込んでいなくてはならないし、逆に街に浴衣姿の人が歩くことで街全体の風景を作ってくれる。人が歩いていない温泉地など温泉地といえるのだろうか。18年前に黒川を改革しようとした時には周りから変人扱いされ大変苦労したが、現在では田舎を作り上げたことに逆に感謝されている。このような黒川も新しい建造物などが次々に出来始めており、田舎らしいおしゃれが失われていくのではないかと危惧している。また、そうならないために自らボランティアで積極的にアドバイスをすることにしている。 |
3. 日本の中に本当の日本を取り入れる
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今の時代は、日本の中に本当の日本を取り入れることが重要であると思う。都会の人が田舎に来て何を求めているのか。そのような人たちの心を打つものを提供しなければならない。つまり、その地域に根ざした日本らしいものを取り入れなくてはいけない。長い伝統があるのであれば、その伝統が伝わる雰囲気のものに作らなくては意味が無いし、お客様の心に届かない。由布院に外国のお客さんが来なくなったのは、街に西洋を取り入れてしまったからである。彼らは日本独特の日本らしさを求めているのだから。結局はお客さんから「いいところに来た」という言葉を頂けるかどうかである。 |
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<1>温泉街全体が「田舎らしさ」を追求してつくられている
<2>各宿には嗜好を凝らした露天風呂を設けている
<3>黒川温泉では多くの草木が自然に見えるように、計算されている
(自然を「つくる」苦労を話す後藤氏=写真中央=)
<4>温泉めぐりパンフレット。黒川温泉では他の宿の露天風呂に入力できる仕組みが整っている |
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4. 50年間女性のお尻を追いかけて、女性心理を勉強した
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黒川のような山の中に、どうやってお客さんに来てもらうかを考えた時、やはり女性の心理をつかむことが重要と考えた。50年間女性の行動を観察して、女性心理を勉強し続けた。すでに30年前には軽井沢の街にすわって、女性を観察していた。やはり男性よりも女性の感性は鋭く、打てば敏感に響くので旅館のような商売は必ず女性が主役になる日が来ると思っていた。例えば自動販売機一つとっても、ホテルでは120円のジュースを200円で売っているが、これを100円で売れば、お客様は「今時、100円とは安い」と感動してくれる。小さいことだが、女性はこれを次の女性に話してくれる。こんな小さな部分も考えていく時代ではないだろうか。 |
5. 黒川と東京ディズニーリゾートの共通点
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東京ディズニーリゾートから重役を含めた視察団が来訪した際のことだが、彼らには驚いた。それは東京ディズニーリゾートが人間心理を徹底的に研究して日本人に一体何を提供するべきかを考えていたからである。そしてまた行きたくなるような方法を一生懸命考えている。つまり全体像を描きながら総合力で勝負しようとしている。これは黒川と共通する点である。黒川の景観は今日植えた木が明日には昔からそこにあったように見えるように作り上げている。本物志向のこの時代には剪定された木々よりも全てが溶け込むように作ったごくありふれた自然が好まれるのである。これは木の性質などを熟知して初めて可能となるもので、黒川では20年前から苦労しながら実践してきた。お金をかけた豪華なお風呂より、正にそこから湯が湧き出ているような雰囲気を演出した方が、お客様は感動する。すべては全体像を見て、総合力でお客様を感動させることに尽きる。 |
6. 旅行会社がすべきこと
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航空運賃が下がったことや旅行会社の努力により、黒川のような交通不便の場所にも遠方からお客様が来て、小さな旅館を含めて助かっているのは実情であるが、大型バスで乗り付けて団体客が観光するような雰囲気にはしてはいけない。なぜならお客様はバスを見た瞬間に、二度と来たいと思わなくなるからである。新明館ではコミッションは10%しか支払っていない。そのために旅行会社からの送客はほとんどない。こちらも旅行会社に頼ろうとは思っていない。旅行会社の役割は温泉地においては他のところにあるのではないだろうか。例えば積極的にお客様を街に出歩かせることで、温泉地全体を活性化させるように仕掛けるなどが考えられる。 |
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<現地視察>
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新明館
黒川温泉のシンボル的存在の旅館。後藤氏手掘りの洞窟風呂で有名。
客室は、バス・トイレ無し。シンプルなつくりだが、置物や窓ガラスなどに細かい工夫がなされており、女性客のリピーターが多いとのこと。
宿泊客以上に、日帰りや他館宿泊客が、洞窟風呂に入浴に訪れる。 |
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山河旅館
後藤氏が全面的に設計アドバイスをして建築した旅館。
中心部からは徒歩20分ほどの距離があるが、徒歩や車で訪れる入浴客が多い。
もともと単なる斜面だったところに樹木を植え、水を引きこみ、あたかも昔からあったように林の中のせせらぎが演出されている。 |
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山みず木
中心部から離れた棚田に、樹木を植え、流れを作って、黒川の自然を演出した土地に建設された旅館。
宿に面した川岸に大規模な露天風呂をそなえ、多くの宿泊客や入浴客を楽しませている。 |
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町内は道も狭く、大型車の通行は容易ではない。それゆえに町内の道は、浴衣がけの宿泊客や九州各地からの日帰り客が多く目に付く。街で見かけるのは、ほとんどが女性で、男性は女性と同伴のカップルまたは夫婦。男性グループは皆無に等しい。視察当日は、たまたま26日(風呂の日)で、立ち寄り入浴が無料であったが、普段でも「温泉手形(町内のお好みの三ヶ所の露天風呂に入れるパス)」を利用して、町内を歩く観光客が多い。
後藤氏の言うように、町内の樹木や建物は周囲によく調和している。山みず木にしても、その土地がかつて水田であったとは想像できない。 |
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