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旅行業法・約款トピック解説

第1回自由な発想で商品造成を!

弁護士 三浦雅生

2005年4月1日から新しく旅行業法と標準旅行業約款が施行されました。
主催旅行と従来の包括料金特約付企画旅行が募集型企画旅行になるなど、旅行業界にとって大きな変化となった新旅行業法と標準旅行業約款。今回の改正で大きく変わった点、わかりにくい箇所などを中心に、三浦弁護士に解説していただきます。

(JATA法務・弁済部)

新業法と約款の定説はこれから

4月1日から新しい旅行業法と標準旅行業約款が発効された。春の訪れとともに、新しい皮袋を得た業界は、その対応に忙殺されながらも、その中に注ぎ込むべき新酒の構成に社内の衆知を集めていることだろう。

そんな中、JATAから新業法・約款の業界への周知徹底のための原稿を書くようにと依頼された。ありがたい話ではあるが、JATAは業者団体というだけではなく、旅行業協会として業法に基づく指定を受けている旅行業者に対する指導・研修・苦情処理機関でもあるから、新業法・約款に関する一定の見解を示せば、いくら執筆者名を付してもJATAの見解という誤解を受けかねない。さらに厄介なのは、新しい業法・約款だけにその解釈につき定説はまだできていない。

「行列のできる法律相談所」を見た方は判るように、凡百の弁護士が4人集まると、結論が一致するのはせいぜい2、3人に過ぎない。ということで、これから書いていく内容は、書いている時点での私の見解で、JATAの見解でもなく明日の私の見解でもないことをお断りしておく。どうしても、確たる見解を聞きたいという具体的な問題でお悩みの方は、それなりの相談料を負担して当事務所へどうぞ。

「企画旅行」って何なんだ!

いくつかの旅行会社の集まりにお呼びがかかり、新業法・約款の講演をしたが、どこでも決まってでる質問が、「これまで売ってきた旅行商品を今後は企画旅行として売ったらよいのか」「逆に手配旅行として売ってはいけないのか」あるいは「企画旅行にすれば値付けが自由になったと聞いたが、宿泊だけ、運送だけの商品でも企画旅行になるのか」といった質問だ。

今回の改正の目玉商品だけに、企画旅行に質問が集中するのはよく判る。また、企画旅行に関連して、旅行会社は値付けの自由を得たのが今回の改正の成果と言われているだけに、その成果を十分に利用したいという積極的姿勢とも言えるだろう。

どのようにして売るかが問題

そこで、基本的なことを確認しておきたい。たいていの質問者は、「この商品は企画旅行になるのか?」と聞いてくるが、これは問題設定の仕方が間違っている。「なるのか?」ではなく、「どのようにすれば企画旅行として売れるのか?」が問題なのだ。つまり、旅行会社の販売戦略の問題である。企画旅行商品として売りたいならば、企画旅行の要件を満たすように作ればよいし、手配旅行商品として売りたいならば手配旅行の要件を満たすように売ればよいのである。

旅行会社が主体性をもって、自由な発想で商品造成をすればよいということである。特に、今回の改正により、旅行会社は旅館、ホテル、バス会社等との契約を工夫することで、独自の値付けをすることができることが明確になったのだから、なおさらの話だ。

旅行商品は「契約の塊」

旅行商品は、旅館、ホテル、航空会社、バス会社等が提供する宿泊サービス、運送サービス等旅行サービスの消費者に対する各種供給契約を両者の間に入り、お膳立てするサービス(手配サービス)の提供契約を旅行会社が消費者と結ぶことを内容としている。
そこでは、

  1. 宿泊・運送機関等と消費者との間の宿泊契約・運送契約等と、
  2. 旅行会社と消費者との間の旅行契約という、二層構造になっている。

しかも、通常、1.は複数の契約からなる複雑さだ。2.によって、1.が形成され履行されるという仕組みになっており、全ての契約をコントロールするのが旅行会社で、その意味で旅行会社は契約管理責任者である。

そして、契約の基本原理は「契約自由の原則」である。契約をするかしないか、契約をどのような内容にするか、契約書を作るか否か等は、基本的に全て契約当事者の自由な意思に委ねるという原則だ(「基本的」というのは、多くの契約が約款という共通契約条項に拠っている部分があるため)。そこで、旅行商品も、旅行会社が1.2.の内容をどのような内容にするかを決めて、消費者の承諾を得れば、その内容が消費者契約法等の規制に反しなければ、その内容で法的な効力を生じるということになる。

つまり、旅行商品では「表示が命」ということだ。このことは、契約が消費者と事業者との間の意思「表示」の合致である以上は当然のことと言われるかもしれないが、旅行商品が、1.2.という二層構造をもっていることから、通常の契約以上に表示が重要性をもってくるのである。旅行会社は、消費者がその旅行商品を購入することで、どのような旅行サービスの提供を受けられるのか(1.の内容)、旅行会社がどの範囲でどのような形で、そうした旅行サービスの提供に関与してくれるのか(2.の内容)を明確に、しかも判りやすく表示しなければならない。この点さえ押さえてくれれば問題は殆どない。

「企画旅行」として売る要件

そこで、最も関心の高い企画旅行として旅行商品を販売する要件であるが、これは、募集型企画旅行契約の部と受注型企画旅行契約の部各第2条に書いてある。次の2つだ。

1.計画性
旅行会社が旅行計画(旅行の目的地・日程・旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービスの内容・旅行代金額)を作ること

2.包括料金性
提供される旅行サービスに係る費用と旅行会社の受け取るべき報酬を包括した旅行代金で旅行を実施すること

募集型か受注型かは、旅行計画を作るきっかけが、募集のためか、消費者からの依頼かの違いだけである。
今回の改正の目玉の1つは、従来の包括料金特約付企画手配旅行を従来の主催旅行と一緒に「企画旅行」という器に盛って、旅程管理責任、旅程保証責任、特別補償責任という三大責任を旅行会社が負うことにしたこと。そして包括料金特約付企画手配旅行に出て行かれて、手配旅行契約の部に残されたのが、実は、企画性のない手配旅行のみ(同第2条1項参照)という点がみそだ。つまり、新約款では、従来の内訳明示型の企画手配旅行というものはなくなってしまった。

ということは、募集ではなく、旅行者からの依頼によって旅行商品を作る場合には、受注型企画旅行という形で売るか、単純な手配旅行として売るかしかないことになる。前者は旅行会社は三大責任を負いますというのに、後者は全くそうした責任を負わないというのだから、商品特性の違いが実に鮮やかであり、正確に説明すれば、よほど特別の事情でもない限りは、消費者は受注型企画旅行という形を選択するだろう。しかも、企画旅行となれば、旅行代金は込み込み料金だから総額での競争となり、旅行会社の取り分たる手数料部分は消費者には判らないから、手数料部分のみの減額を求められるといった理不尽なこともなくなり、旅行会社は仕入れ力の勝負が可能になるという訳だ。

単品商品販売には表示を明確に

ということでお判りのように、企画旅行の要件のうち、1.の計画性は三大責任を旅行会社に負わすための要件であって、手配旅行との違いを示す要件は、2.の包括料金性にあるといえる。そこで、旅行会社が自ら三大責任を負うということであれば、これまで、宿泊サービスのみに自宅からの日程を付けることで、主催旅行として販売してきた単品主催の如き手法も、企画旅行として許されるといって良いだろう。むしろ、単品商品の場合には、企画旅行としての販売方法とそれ以外の販売方法とが並存する可能性があることから、企画旅行として販売しない場合には、「企画旅行商品ではないこと」、「旅程管理責任、旅程保証責任、特別補償責任を負わないこと」を明確に表示する必要があるだろう。

つまり、旅行商品を企画旅行として販売することは容易だが、企画旅行ではない方法で売る場合の方が注意が必要ということになる。次回はそのあたりを具体例でお話ししよう。

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