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JATA知床実地研修、地元の方々との意見交換会報告

2007年12月3日
(社)日本旅行業協会
環境対策部会

当協会の環境対策部会(糟谷部会長)は、環境保全活動を行っている市民団体や小学校の環境学習を支援しています。また、サステイナブルツーリズムに関する各種セミナーを開催。さらに日本を代表する自然を有する尾瀬や世界遺産に登録された地域を訪れ、地元観光関係者と、観光と環境保全について意見交換も行っています。
今回は、当協会会員会社の役員クラスの方々と知床を訪ねました。

実施日 平成19年10月11日〜10月13日
協力 特定非営利活動法人 知床斜里町観光協会
(会長 上野 洋司氏=知床第一ホテル 代表取締役社長)
ガイド 松田 光輝氏((株)知床ネイチャーオフィス 代表取締役社長)
日 程

1日目

9:50 女満別空港発 ⇒ 小清水原生花園 ⇒ ウトロ着(昼食)⇒ 知床自然センターにてレクチャー ⇒ フレペの滝 ⇒ ホテル着 ⇒ 地元の方々と意見交換 ⇒ 夕食

2日目

8:20 ホテル発 知床峠 ⇒ 原生林トレッキング ⇒ 昼食 ⇒ 自然ガイドとの意見交換 ⇒ 知床五湖 ⇒ 夕食

3日目

8:20 ホテル発 ⇒ オシンコシンの滝 ⇒ サケ・マス遡上見学 ⇒ 網走(昼食) ⇒ 女満別空港(14:45女満別空港発)

1.知床とは

日本国内で3地域だけ登録されている世界自然遺産地のひとつである。陸と海と空の生物が互いに食べたり、食べられたりする関係を築きながら命の循環を繰り返していることを見て感じることができる地域。観光地の中に自然があるのではなく、自然の中に観光地があることを実感させる、実感しなくてはならない地域でもある。


  • 遠音別川を遡上するサケに群れる鳥

  • 草を食む蝦夷ジカ
  • ※ 海で育ったサケの仲間は、生まれ故郷の川に遡上し、熊など山の動物の食料となる。その糞としてサケは土に返り豊かな森をつくる。海と山の命、栄養の循環。この循環が知床の自然がもつ大きな特色だ。

2.世界自然遺産登録後の知床の観光客数(斜里町観光統計より)

屋久島、白神についで日本で三例目の世界自然遺産地として登録されたのが平成17年7月17日。その年は総入込数約173万人。登録後の翌年平成18年は166万人。平成19年はまだ半期の統計だが平成18年比12.6%の減少となっている。

  • ※ 世界自然遺産登録の前年平成16年は同約156万人。

3.知床では我々人間が訪問者

世界でも有数の高密度で生息しているヒグマ。今年のように“どんぐり類”が豊作のときはなかなか一般の人の目に触れることはないが、森の木の実や果実を主食とし、秋は遡上するサケなどを捕獲し命をつないでいる。高密度で生息するのは豊富に「エサ」があるからだ。ヒグマをはじめ、必ず出会えるエゾジカ、キタキツネ、鳥類では絶滅の危機に瀕しているシマフクロウ、鳥類生態系の頂点にいるオオワシやオジロワシ等など知床は野生動物の楽園といえる地域である。知床では我々人間が訪問者、お客様だ。離れた場所から「静かに」見ていきたい。

野生動物に出会ったときのお願い
  • むやみに近づかない
  • エサを与えない
    • 動物の行動を妨げ、人への警戒心を失わせ、交通事故にあったり、人を攻撃することに繋がります。
    • ゴミを捨てずに持ち帰ることも必要です。

4. 貴重な自然を守りながらその素晴らしさを体感するためには

(1)マナーを守る
  • 野生動物へ近づかない
  • 絶対に餌を与えない
  • ペットを連れて歩かない
  • 車の走行はゆっくりと((財)知床財団HPより)
(2)自然環境や自然に配慮する
  • 遊歩道や登山道から外れて歩かない
  • 植物を採取しない
  • ゴミを捨てない((財)知床財団HPより)

(3)可能な限り「ガイド付きツアー」に参加する
昨年知床を訪れた観光客は166万人。このうちガイド付きツアーに参加しているのは約4万人といわれている。屋久島や白神に比べてまだ普及はしていないが、知床の自然を熟知したガイドが同行すれば、旅の満足度も違うし、環境や自然への意識や配慮もより高くなる。

5. 地元観光関係者と意見交換

  1. 知床観光の現状
    • 世界自然遺産に登録された平成17年は混雑したが、今は落ち着きを取り戻している。
    • 周遊型のツアーに参加している旅行者が圧倒的に多い。
    • 地球温暖化の影響で流氷が年々少なくなっている。流氷がなくなれば生態系への影響もでてくる。
    • 知床斜里町観光協会としては「エコツーリズムの浸透」を図っていきたい。特にマスツーリズムの中にエコの要素をいれていければと考えている。
    • 「知床エコツーリズム協会」を設立しエコツーリズムのガイドラインやルール作りを進めている。
    • マイカー規制は一部矛盾したところもあるので、現在見直しに取り組んでいる。
  2. 地元から旅行会社へお願いしたいこと
    • 特定時期や特定観光地に集中がみられる。地元としては、オオワシなども見れ、食材も豊かな冬の知床を是非見て欲しい。
    • 知床では地元の路線バスを使った観光をして欲しい。
    • ガイド付きのツアーは満足度が違うので、現地知床のガイドを使ってツアーを組んで欲しい。
  3. 旅行会社が地元知床にお願いしたいこと
    • マイカー規制については上高地を参考にしてみてはどうか。
    • 冬の北海道は小樽も好調とはいえない。ただ、魅力は感じているので企画・販売してみたい。

6. 地元と旅行会社がともに手を携えて

環境対策部会ではこれまで8回の実地研修を行い、そのたびに地元の観光関係者と環境保全について意見交換会を実施してきた。特に日本国内の世界自然遺産登録地では環境保全がいつも話題になりがちだ。環境保全や自然保護については、さまざまな立場からそれぞれの意見、考えがだされている。人間が行かなければ環境や自然は守られるという考えも聞くが、ほんとうにそうだろうか。
日本国内の自然のほとんどは人間が手を入れてつくってきたもの。その自然は地元に住む人たちが守っているものである。そこに人間がこなくなり、経済的活動もなくなったら環境や自然は守れるのだろうか。
しかし、ただ地元に行き、観光地を周遊するだけでは、環境や自然への理解は進まず、守ろうという気持ちは芽生えづらい。そこに自然と人間の橋渡し、鎹としてのガイド(インタープリター)の存在があると思う。
今回は地元と旅行会社の役員クラスの方々が本音で意見交換する貴重な機会になった。守りながら活用するためにエコツーリズムの普及を熱心に志向している知床斜里町観光協会の上野会長、知床で生まれ育ち環境の保全や自然保護を最終目標として活動しているガイドの松田氏。お二人の熱い思いと知床のもつダイナミックな自然。参加した人たちとの本音の意見が絡まり、知床と旅行会社がともに手を携える観光への第一歩を踏み出せたことを実感した研修だった。

本件に関するお問い合わせ

社団法人日本旅行業協会 業務部第2グループ
  • TEL 03-3592-1274

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