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日本国内の世界自然遺産地のひとつ白神山地での実地研修報告:
JATA社会貢献委員会・環境対策部会

JATA社会貢献委員会・環境対策部会(糟谷部会長)では、日本で初めて世界自然遺産に登録された白神山地で研修旅行を実施しました。
平成18年にも白神山地で実地研修行なっておりますが、今回は各社役員クラスの方に参加していただき、環境保全の大切さ、エコツアーなど環境に配慮した旅行商品の造成に理解を深めていただくことを目的に、実地研修を行いました。

実施日 平成20年10月16日(木)〜10月18日(土)
現地協力 青森県 新幹線交流推進
秋田県 山本地域振興局
ガイド 10月16日(木) 原田 勇成 氏
10月17日(金) 工藤 光治 氏
10月18日(土)斉藤 栄作美 氏

旅程

月日 時間 内容 備考
10/16 午前 青森空港着
昼食(白神勉強館)
ガイド:原田勇成氏
不老ふ死温泉泊
午後 十二湖エコ・ミュージアムセンター湖郷館
トレッキング
(十二湖散策、白神岳が見える場所)
宿泊先到着・休憩/夕食
10/17 午前 宿出発
トレッキング
(暗門の滝散策(第1〜3の滝))
ガイド:工藤光治氏
ブナの里白神館泊
午後 昼食(アクアグリーンビレッジANMON)
ブナ林散策(1H)
白神山地「いのち輝く森」映像観賞(30)
マタギ文化講演会(於:白神山地ビジターセンター)
関係者との意見交換会
(於:白神山地ビジターセンター)
宿泊先到着・休憩/夕食
10/18 午前 宿出発
釣瓶落とし見学
岳岱自然観察教育林散策
桂岱町有林「ブナの植樹」体験
ガイド:斉藤栄作美氏
午後 昼食(清流荘)
世界遺産センター
天然秋田スギ 仁鮒水沢スギ植物群落保護林散策
二ツ井道の駅
大館能代空港へ

研修旅行の目的

  1. 白神山地の観光の現状、課題などを学ぶ。
  2. 白神山地の観光関係者と、白神山地の自然の保全と観光の両立について意見交換する。
  3. ガイドによる解説で、白神山地の自然の素晴らしさを知る。また、マタギの文化について学ぶ。

観光のポイント


青池

十二湖

点在する33の湖沼が、大崩からみると12個見えることから十二湖と名づけられた。代表的な「青池」は、透き通った湖水から見える湖底が深い青色に染まっている姿は幻想的。鶏頭場の池から青池、湧壷の池、小夜の池などを散策ルートに沿って見学した。



不老ふ死温泉の露天風呂

不老ふ死温泉

言わずと知れた温泉旅館。海に沈む夕陽を見ながらの入浴は最高。しかし、完全に海に沈むところまで見ることのできる日は少ないとのこと。
この日もあと少しのところで雲にさえぎられた。楽しみは次回にとっておこう。



暗門の滝

暗門の滝

世界遺産登録地に足を踏み入れることのできる数少ない場所。第3の滝までは比較的急勾配は少ないが、第2、第1の滝へ向かう道はかなり急階段となっている。頭上注意などの表示もきちんとされており、安心感はある。滝の荘厳さもさることながら、紅葉と渓谷のコントラストの見事さを見ると、観光客を集めるのも頷ける。



釣瓶落峠

釣瓶落とし

秋田と青森の県境、藤里町を流れる藤琴川の源流部にある釣瓶落峠。バスから降りてしばらく峠見学をした。山頂は紅葉が終わりかけていたが、中腹から下は紅葉のピークを迎えていた。谷底に吸い込まれるような感覚を味わいながら、紅葉に彩られた峠をみると、自然の雄大さを実感する。



教育林

岳岱自然観察教育林

ブナを主とする天然林で、平成4年に自然観察教育林として指定された。それほどの急勾配もなく、安心して散策できる。快晴の天気の効果もあり、非常に気持ちの良い散策であった。途中、ブナに人為的に付けられたキズがあった。心ない人の行為に憤りを感じる光景であった。



  • キズつけられたブナ

  • これで樹齢3年!

  • こちらは樹齢400年


ブナの植林

ブナの植樹

桂岱町有林でブナの植樹を行なった。地面を堀って苗木を植えるのだが、地面の下は石がごろごろしており、簡単に深く掘れない状況であった。今回植えたブナが数十年後に立派なブナ林になることを願う。



高さ58mの天然杉

仁鮒水沢スギ植物群落保護林

天然秋田スギの代表的な林であり、林野庁では昭和22年以降保護林として保存を図っている。50m級のスギが林立する景観は圧巻。足元が滑りやすいところがあり注意が必要。日本一高い天然杉は58m。15階建てのビルに相当する。

白神山地が世界自然遺産に登録された登録基準(クライテリア)

陸上、淡水域、沿岸・海洋生態系、動・植物群集の進化や発展において、進行しつつある重要な生態学的・生物学的過程を代表する顕著な例であること。

白神山地自然の特徴

白神山地のブナ林は、純度の高さやすぐれた原生状態の保存、動植物相の多様性で世界的に特異な森林であり、氷河期以降の新しいブナ林の東アジアにおける代表的なものである。また、様々な群落型、更新のステージを示しつつ存在している生態学的に進行中のプロセスとして顕著な見本となっている。

1.白神山地の観光の現状、課題

  1. 平成13年から急激に観光客が増え、その後も漸増傾向にある。
  2. ガイド件数は増えているが、ガイド利用人数は減少している。
    (小グループのガイド利用者が増えている)
  3. 観光客が暗門の滝に集中している。
  4. 旅行形態が団体旅行から個人旅行に移行している。
  5. 団体旅行のガイド利用を向上させる必要がある。
  6. 秋田県側は観光客数が伸びが宿泊に結びつかず「通過型」の傾向が強くなっている。
  7. 東北新幹線の延伸や米代線開通を契機に広域観光を推進する必要がある。

2.白神山地の環境保全で懸念されていること

  1. 登山道や遊歩道の裸地化※十二湖(青池)、暗門の滝、岳岱、トレッキングコース
  2. 駐車場でのアイドリング車両による環境への影響 ※暗門の滝、十二湖駐車場等
  3. 白神山地観光地への交通渋滞の影響 ※西目屋村大川から暗門地区・十二湖周辺

3.地元の取組み

青森
  • 白神山地ブランド化情報発信事業(「リゾートしらかみ」沿線市町村のPRを中心とした白神山地の魅力を首都圏観光客に対して情報発信を行なう。
  • 東北新幹線全線開業に向けて、新幹線停車駅から二次交通で結ぶ「その先のあおもり」の魅力を向上させ、青森県全体の観光振興や新幹線開業効果の向上につなげていく。
  • 山海の幸を活用した「食」を基軸とした地域振興を図るため、平成17年、18年の二ヵ年「海彦山彦の幸活用モデル事業」を展開。食を通じた観光振興や観光と農林産業の融合による取組を行なった。
  • 通年型観光を目指し、冬の白神山地の魅力を発信していきたい。


地産地消メニュー

秋田
  • 八峰町、藤里町には、ビジターセンターを設置して白神山地の説明とマナー等の案内をしている。
  • 八峰町、藤里町では案内人を養成して、案内人が利用者をガイドすることで白神の適正な利用と環境保全に対する配慮を行なっている。
  • ガイドのスキルアップを図るため、青森県側等へ現地視察・情報交換会を行っているほか、白神山地を核とした少数滞在型モデルコースを作成する予定。

4.地元から旅行会社への要望

(1)地元のガイドをつけて欲しい。
暗門の滝など、ガイドなしのお客様がとても多い。収益を環境保全に活用していることもあり、また、安全対策の観点からも是非、地元のガイドを活用してほしい。
(2)少人数グループや滞在型のツアー造成をお願いしたい。
特に秋田県側は大型バスの通れないところも多く、また、観光客は多くきても通過型になっている。連泊への受入体制等についてもアイデアをいただきたい。

5.旅行会社から地元への要望・感想

  1. 環境と観光は相反する部分もある。たくさん送って欲しいという反面、送れば汚れると言われる。たくさん送客しても良いところとダメなところをはっきりとしてほしい。たくさん送客しても良いところではきちんと受入体制を作ってほしい。ルールをきちんとしてもらえれば、それをパンフレットに記載することは可能。
  2. 安全が一番重要。そのための注意事項を明確にしてほしい。「自己責任」で自然を楽しむということをもっとPRしてほしい。安全対策のためにガイドを活用してほしいといわれるが、落石に関してはガイドでは防ぎきれない。“自己責任”をはっきり言って欲しい。
  3. ガイドの活用といわれるが、どこに依頼したら良いのかわかりにくい。
    尾瀬ではガイド組織を一つにする取組を行なっている。どこにどう依頼したら良いのか、仕組みをきちんと作って欲しい。
  4. 感想だが、暗門の滝などはきちんと整備されているのは良いが、まるでテーマパークのような印象を受けた。ここまでするかという感じはあった。「頭上注意」などの表示がきちんとできている点は評価できると思う。

6.マタギ文化講演会

「ブナの原生林」。その響きからは「手つかずの未開の森」を連想する人も多いのではないだろうか。確かに豊かな自然を残すこの白神山地には、人を近づけずに守るべきものはあると思う。しかし、人がいるからこそ、人が生活しているからこそ育まれる自然というものもある。白神山地を生活の場としていたマタギを含めた人々が育んできた自然と文化、歴史。地元でガイドをしている工藤光治氏の講演は、われわれ都会で生活している人間が忘れているものを思い出させる内容であった。
工藤氏の父の言葉 −「我々マタギは動物が憎いから殺すわけではない。この山で生きてゆくためには他の命をいただかなければ生きていけないので仕方がないんだ。憎くもない動物を殺すには殺す相手を苦しめることなく、ひと思いに一気に殺しなさい。そのためには鬼のような心になれ。動物を殺す度に鬼になる。また鬼で又鬼(マタギ)だ」−
長い間山で暮らしてきた人たちは掟として守ってきたものがある。その掟の基本はただ一つ「欲張らないこと」。心に染みる言葉である。


  • 地元ガイド:斉藤栄作美 氏

  • 地元ガイド:原田勇成 氏

  • 地元ガイド:工藤光治 氏


意見交換会

環境省や青森県等が呼びかけている入山マナー

  1. ゴミは持ち帰る
  2. 植物を採取しない
  3. トイレは入山前に済ます
  4. ペットの同伴はダメ
  5. 焚き火は禁止です
  6. 歩道を外れて歩かない
  7. 遺産地域内は禁漁区です
※お願い

「暗門の滝」へ行かれる場合は、靴は最低でも運動靴を用意し、特に紅葉期には時間にゆとりをもって行程を組んでください。

研修旅行に参加して

3日間とも天気に恵まれ、白神山地の豊かな自然を充分感じることができた。特に暗門の滝へ続く道から眺める紅葉、岳岱自然観察教育林の爽やかな空気は印象的であった。今回は初日が原田勇成氏、2日目が工藤光治氏、3日目が斉藤栄作美氏と、地元でも指折りのガイドさんから、地域特有の自然、文化についてのお話聞きながらのツアーで、非常に満足度の高いものであった。

自然を大切にすること、そして、いかに活用しながら保全していくか。重要なテーマである。この豊かな自然を守るためには「人の意識」が大切だと感じた。日々の生活の中で、難しいことではなくできることから一つずつ始めていく、そんな意識を持ってこれからも活動をしていきたいと思う。そして、旅行業界として「旅行」の中にその精神を少しでも取り入れていけたら、この実地研修が意義あるものになるように思う

本件に関するお問い合わせ

(社)日本旅行業協会 総合企画部 総合企画・情報管理グループ
  • TEL 03-3592-1271

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