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第2部 国内旅行振興に向けた提言とアクションプラン

(1)国内旅行総需要創造にむけた関係諸機関への働きかけや、社会構造的な需要喚起の推進と需要を刺激する旅行商品の積極的な造成

インバウンド振興の重要性への認識とともに、わが国の観光振興への期待が高まっている。インバウンドの振興も国内旅行の振興も根源において、美しい日本、魅力ある日本の形成と、日本人、外国人を問わず観光交流を通じて地域を活性化することにおいて同一の目標を目指すものである。国際情勢に左右されない安定的な市場として国内旅行の健全な発展は、国や地域にとっても重要な課題である。

しかし国内宿泊旅行者数の推移を見る限りにおいては、ここ数年ほとんど著しい伸張はみられない現状である。三連休化の実現による旅行の分散化効果は明らかであったように、旅行に出かけることを困難にするハード、ソフト両面のバリアを除き、旅行しやすい環境づくりのために機会を逸することなく、観光諸団体と連携し、政府・自治体、関係機関への適切且つ、継続的な働きかけが必須である。

また旅行会社の本来の存在意義である、地域、消費者、サプライアーをプロとしてコーディネートする能力に磨きをかけ、弾力的な休暇制度を利用して旅行するお客様の受け皿となるような旅行商品等、新たな需要を吸収し創出する商品造成努力が必要である。

アクションプラン

1.国内旅行総需要創造のための社会環境整備に向けた行動の継続

国内旅行総需要創造のためには、魅力ある商品づくりと並行して社会的な環境整備が必須であることから、これまで以上に関係団体と連携を密にして休暇制度、税制の改善にむけて関係諸機関への働きかけを継続する。

2.JR各社、航空会社、宿泊団体、バス協会等との連携の強化

個々のJATA会員会社との連携はもとより、業界として、これらの個別企業・業界団体と定期的な意見交換を実施し、消費者ニーズを先取りした国内旅行商品開発に向けて検討を行う。

(2)地域及びサプライアーとの積極的協働による新たな観光資源・観光魅力の発掘とその商品化

これまで「国内旅行の現状」と課題で見てきたように、これからの国内旅行振興のキーワードのひとつは、「地域との連携」、「地域との協働」である。市場環境が劇的に変化しつつある中で、旅行会社、サプライアー、観光地域のそれぞれが厳しい状況に直面し、生き残りをかけた自己変革を迫られている。その三者が共通して目指すものは、地域の新しい観光資源を発掘し、地域の観光魅力を消費者に伝え、より多くの旅行者に訪れていただくことである。

新たなデスティネーションや新たな切り口の旅行商品を模索する旅行会社、従来の団体中心から個人旅行者にとって魅力ある施設づくりや商品開発に努力するサプライアー、そして新しい観光資源や観光魅力を見出し、作り出しながら、市場との十分な接点がもてずに誘客に結びつけ切れていない地域が、互いに連携し協力することにより、それぞれがメリットを享受できるwin-win-winの関係を作り出すことが可能である。

そのための第一歩は、旅行会社側が徹底してさまざまな地域に足を運び、地元の観光関係者から直に話を聞き、実際に観光資源を見て、体験することにある。宿泊施設の経営者から、「旅行会社の商品企画担当者は会って話をしても、ほとんどが料金交渉で、地域の観光資源や旅行者のために新たに整備した観光プログラムに興味を示してくれない」という声があがっている。旅行会社の社員が実際にさまざまな観光地に旅行者として出かけ、その地域での滞在や観光を自ら楽しむことなしに、顧客にとって魅力のある旅行商品を企画造成することは難しい。また、現地を体験するのであれば、狙いとする顧客層の視点で見ることが重要である。30代女性に的を絞った商品を作るのであれば、30代女性がどのようなことに興味を抱き、どのようなものに感動するかを十分把握した上で現地をみないと「的外れ」な企画で商品を造成してしまうだろう。

次に考慮すべきことは、観光地を育てるという視点に立って、短期間での営業成果のみを期待せずに継続的に地域とのかかわりをもつことである。地域やサプライアーから旅行会社に新しい商品企画を提案しても、パンフレット1ページあたり1000人は集客できる商品でないと企画に取り上げてもらえない、という嘆きを耳にする。由布院や黒川温泉が今日のような注目を集めるまでには、30年以上の長期間にわたって観光地づくりに取り組んできた歴史がある。小野川温泉も取り組みを開始してから、営業的な採算ベースに乗るまでには何シーズンかかかっている。顧客のニーズをつかんだ商品であれば、当初は少ない集客で採算割れするような企画であっても、必ずいつかブレイクする時が来るとの信念をもって辛抱強く商品の投入を続けるべきである。

さらに、テーマづけによる新たな付加価値は、成熟段階を過ぎた既存の観光地を再活性化する有効な手法であり、これまでこうした観光地への送客によって収益を上げてきた旅行会社が、今後真剣に取り組むべき課題である。団体旅行中心の商品企画において旅行のテーマは、さほど意識されてこなかったが、多様な趣味・興味をもつ個人が中心の旅行市場においては、従来の多くの旅行者を集めた観光地でさえも地域の個性やテーマ性を打ち出さなければ、消費者から背を向けられ衰退の一途をたどることは、多くの観光地における実例が示している。一方、テーマの打ち出し方によっては、従来オフシーズンであった時期の集客を底上げすることも可能である。海外旅行の市場においては、カナダの秋(メイプル街道)、北欧やアラスカの冬(オーロラ)、ドイツの冬(クリスマス)など、日本人観光客のオフシーズンにその地ならではの観光資源を活用したテーマ性を打ち出すことで、需要喚起に成功している例の枚挙に暇が無い。国内でも、流氷や厳しい寒さをテーマにした冬の北海道や、雪の中の合掌造りをライトアップした冬の白川郷などは、テーマと地域の個性を活用してオフシーズンの集客に成功した例といえよう。

今後こうした取組みを行う際に、地域および旅行会社双方が、より一層配慮すべきことは、サステイナブル・ツーリズムの考え方を取り入れた観光資源の開発・保護である。長期間にわたって多くの観光客に楽しんでいただくためには、旅行商品の核となる地域の自然や歴史・文化といった観光資源の保護は当然のことながら、観光地の地域住民の生活や環境、経済に対する配慮も計画的かつ持続性をもってなされることが不可欠である。従来、ともすれば「資源消費型」の大量集客観光に傾きがちであった観光旅行のスタイルを見直し、新たな持続可能な観光のスタイルを模索し、確立すべき時期に来ている。

アクションプラン

3.自治体・地域との連携強化のための方策の検討

各種観光振興の動きとの連携、(社)日本観光協会との観光振興活動における相互協力、百人委員会の活動との有機的な連携等を検討する。宿泊施設若手経営者をはじめ、地域において今後中心的な役割を担う次世代のオピニオンリーダーとの意見交換の実施等、地域との連携強化をはかる。

4.地域観光関係者との継続的な意見交換

国内旅行委員会では、2003年度に北海道で委員会を開催するとともに、道内の観光関係者と有意義な意見交換を実施したが、今後も地域観光関係者との意見・情報交換を継続的に実施し、受け地側、旅行会社側双方の立場から、常に新しい魅力を発信する観光地づくりと旅行商品づくりを目指す。意見交換を実施する地域は、新たな観光資源、観光魅力の発掘とその商品化が可能な地域であることを前提に、地域の受け入れ体制を考慮に入れ選択する。

5.新たな観光資源・観光魅力の発掘と商品化の試み

「地域との連携による新たな観光資源・観光魅力の発掘とその商品化」の具体的な実践事例として、会員各社が次のような取組みの機会を得られるよう地元と会員会社との橋渡しに努力する。

  • (1)新たなソフト観光資源の「商品化」と流通・販売
    国内の観光地では、1980年代までの「男性中心・団体・宴会・施設内囲い込み型の観光」から、「女性中心・個人・町歩き型観光」へのシフトを進めている。その動きの中で、地域にさまざまな新しいソフト観光資源が生み出され、育てられてきている。これらの観光資源は、地域外からの観光客にとって魅力の高いものであるが、それらの中には市場に十分認知されていないものが多い。そのため、せっかくの地域の人々の地道な努力の成果である新しい観光資源が、近郊からの日帰り旅行者を呼び込むことはできても、宿泊を伴う遠距離からの旅行者の誘致につながっていない。
    JATAおよび各旅行会社が積極的に地域とつながり、このような「隠れた」魅力的な観光資源を取り上げ旅行商品化することにより、全国の市場に対してアピールし、宿泊観光客の誘致促進につなげることが可能である。
  • (2)その土地ならではのテーマによる、伝統的な観光地の再発見
    従来、温泉や食、歓楽のイメージで観光客を惹きつけてきた観光地の中には、その土地ならではの文化的・歴史的資源を持つところが少なくない。特に古くからの温泉地は、歴史的人物や文化人等が長期にわたり湯治をかねて逗留し、その足跡が周辺に残っている。しかしながら、昭和30年代以降の「観光ブーム」の中で、そうした個性ある資源が後ろに追いやられ、全国どこにでもあるような温泉と歓楽のイメージに塗られてしまったところが多い。
    こうした観光地に、その土地ならではのテーマを設定し、地域の歴史・文化的観光資源をテーマに関連付けてソフトプログラム化することにより、そのテーマに関心を持つ新たな顧客層の獲得が可能になる。
    前述のように、これからの消費者が興味を示しうるテーマは極めて多岐に亘るので、地域の資源をさまざまな角度から見直してみることで、その土地らしいテーマは必ず見出しうる。
    旅行会社は、こうして見出されたテーマに強い関心を持つマーケットを特定し、企画商品・企画提案型団体旅行商品としてアプローチすることで、地域にとっても旅行会社にとっても新しい旅行需要創出が可能になる。
  • (3)旅行商品化可能な新しいデスティネーションの発掘
    従来、土地の人々には観光資源として認識されてこなかった地域の自然、生活文化、町並みなどが、都市住民の目から見ると優れた観光資源となりうることがある。滋賀県長浜の黒塀の町並み、徳島県脇町の「うだつ」の町並み、長野県飯田市の農業体験などは、地域を別の角度から見直すことによって、観光資源として光を当てることによって、いまや人気の観光デスティネーションとなった事例である。
    日本国内には、このように地元の人たちにとっては「あたりまえの日常風景」でありながら、観光資源となりうる要素が数多く残されている。これらを見出し、観光資源として利用できるような形に作り上げ、新たなデスティネーションとして育てていくことは、まさに旅行者のニーズを知り尽くしたプロである旅行会社にこそ期待される役割である。
  • (4)新しいホテル滞在型旅行商品の開発
    全国各地で旅館の経営が行き詰っている一方で、都市ホテルの室数は外資系の積極的な展開もあり、年々増加の一途を辿っている。ビジネス客を宿泊の主要ターゲットとする都市ホテルは、一般的に週末の宿泊客が減少する。それをカバーするために各ホテルでは、女性やファミリー向けにさまざまなプランを開発し、営業努力を行っている。年末年始や夏休みなどの特定期間を除き、旅行会社はホテル滞在に付加価値をつけた企画商品の企画・販売に必ずしも積極的ではないが、「アーバン・ツーリズム」とも称される都市型観光や産業観光、美術館・博物館めぐりなど、テーマのある滞在型の旅行に対する需要が今後伸びることが予想されるなか、週末のホテルを起点にじっくりと地域を楽しむ滞在型旅行商品は、新しいマーケットの創造につながりうる。各地域のホテルが独自に開発した滞在型プランに、旅行会社が往復の交通をつけて主催旅行商品化することで、全国市場への展開が可能になる。
  • (5)サステイナブル・ツーリズムの地域における具体的展開
    これからの旅行・観光において、「サステイナブル=維持可能であること」はますます重要性を増してくる。観光客の増加により、その観光地の「サステイナビリティ」が脅かされている地域と連携して、旅行会社が新しいサステイナブルな旅行のしくみの開発に向けた取り組みを行うことは、旅行会社に求められる社会的な責務であるといっても過言ではない。

(3)市場ニーズを先取りした提案型国内旅行商品の開発

多様化の一途を辿っている消費者のニーズに対して旅行会社は、さまざまな商品開発の試みをしてきているが、国内旅行振興のためにはこの動きをさらに加速する必要がある。ここ10年ぐらいの市場動向をみると、女性誌などのマスコミが旅行トレンドを仕掛けてきた。最近では、シニア向け雑誌や男性向け雑誌の中心的な記事としても「トレンディな旅行スタイル」が取り上げられるようになった。旅行会社は、このようにして旅行におけるニーズやトレンドとして顕在化したものを追いかけて商品化することに努めているが、従来のビジネスモデルでは商品化が難しいものもあり、新しいニーズを十分には取りこめていないのが実情である。

これからは、むしろ旅行業界自らが消費者の生活の中に新たに見出されるニーズを先取りして、新しい旅行スタイルとして市場に提示し、トレンドを作り出していきたい。その際に留意すべきことは、トレンドにしていけそうなニーズは何か、そのニーズを満たすためにはどんなプログラム・旅行商品があるといいか、そのようなプログラムを行うのであれば、どの地域・どの施設が一番適しているかというように、ニーズから説き起こして、商品・デスティネーションを検討していくという発想である。従来、旅行会社は、「売りたいデスティネーション」があり、そのデスティネーションを売るために、その地域にある観光資源やソフトを探り出して商品化し、その商品を受け入れやすいターゲットに流行商品を訴求するという流れでマーケティングを行ってきた。旅行会社がトレンドを作り出していこうとするならば、商品開発における発想の転換が必要である。
これからの旅行トレンドにつながる可能性のある消費者の潜在ニーズとして、以下のようなものがあげられる。ひとつひとつのニーズをみると、ニッチ市場であり、一見すると既存の旅行会社のビジネスモデルである「マス・ツーリズム」と相容れないように思われかねないが、最近のフリープラン型の旅行に参加する旅行者個々人は、それぞれ異なったニーズやテーマを持って旅行を楽しんでいるのが実態であり、「ニッチの集まりとしてのマス」を意識した商品企画が重要になると考えられる。

なお、ここにあげた「ニーズ」のなかには、すでに旅行商品化の取り組みがなされているもの、すでに旅行会社以外のチャネルで「定番化」しているものも少なくない。

<ライフスタイル提案型の旅行>

  • 自然に触れる(エコツアー)
  • 農林漁業や「いなか生活」を体験する(グリーンツーリズム)
  • 海や渚、漁村の生活や文化・自然を体験する(マリンツーリズム)
  • 地方の伝統文化や生活に触れ、体験する
  • 地域で生活を疑似体験し、地域の人々と交流する
  • 本場の美術・芸術を鑑賞し、創作体験する
  • その地域ならではの「食」を体験する
  • ボランティア活動、NPO活動に参加する

<カルチャー旅行>

  • 世界遺産や文化遺産をたずねる
  • 歴史的人物の足跡をたどる
  • 趣味を極める
  • 学ぶ、スキルを習得する

<健康・美容追求の旅行>

  • きれいになる(エステツアー)
  • ダイエットする
  • 治療目的や健康増進のヘルスツーリズム
  • リラックスする
  • 介護ストレスを解消し、心身をリフレッシュする

<自分史振り返り型の旅行>

  • 自分の足跡をたどる
  • 若い頃やった事に再挑戦する
  • 旧交を温める

<その他>

  • マイカー旅行
  • 家族であるペットと共に旅行する
  • 「大人の旅」
  • 社内コミュニケーションを活性化する

(4)旅行業界挙げたデスティネーション・マネジメント機能の強化

従来国内旅行では、発サイドの旅行会社の担当者が旅行に関する情報収集、旅行企画、手配、オペレーションまでを一貫して行ってきたが、必ずしも旅行目的地の詳しい事情や最新情報に精通しているわけではない。諸外国のインセンティブ旅行や企業ミーティング等においては、地元の事情を熟知し、その旅行の目的に最も適合する現地プログラムを企画し、手配、運営を行う「デスティネーション・マネジメント会社(DMC)」と呼ばれる専門的なツアーオペレーターが活躍する。DMCでは商品開発担当を置き、地域内の隠れた観光素材を発掘し、そのうちインセンティブ旅行にふさわしいものを次々と旅行商品素材として提供している。

このようなデスティネーション・マネジメント機能を持つ専門会社(既存旅行会社の事業部)=日本版DMCの設立を提案する。DMCは、国内および海外の旅行会社に着地型商品を提供する。これにより、発サイドには知られていない地域の隠れた観光資源を新たに発見し、商品化を通じてニーズのある市場に提供することが可能となる。

アクションプラン

6.地域と連携した新たな観光資源・観光魅力の発掘と商品化のアクションプランの実施を通じて、デスティネーション・マネジメント機能の試行モデルを検討する。

(5)新たな時代を担う旅行業プロの育成

旅行会社は、改めて旅行業のプロの育成に注力すべきである。

<1>旅行販売のプロの育成

顧客のニーズに合う旅行情報と旅行商品を顧客に代わって探し出し、提供するという「購買代理」がこれからの旅行会社の目指すべき事業モデルであるならば、顧客との接点にあたる販売担当者は、デスティネーションと旅行商品に関して顧客を上回るレベルの知識を持つとともに、顧客の旅行に関するニーズを引き出して明確化するという点においてもプロであることが期待される。

<2>旅行企画のプロの育成

市場がテーマ性のある旅行、滞在型の旅行など「自分流」のこだわりの旅行を希求する傾向が強まるなかで、旅行企画造成の担当者は、従来の大量送客、スケールメリットによる効率化追求の事業モデルからの脱皮が求められる。今後の企画造成担当者に要求されるのは、ニッチ市場の旅行者の興味や絞り込んだセグメントのニーズを的確に把握し、それを満たすことのできる地域の隠れた観光資源を選び出して商品化するスキルである。

<3>添乗のプロの育成

旅慣れた旅行者が増加するに従い、添乗員の資質が旅行の満足度に与える影響がさらに大きくなってきた。添乗員の第一義的な役割である旅程管理や緊急時の対応が確実にできることは当然のことながら、ツアーのお客様との適切なコミュニケーションや気配り、場に応じた情報提供や雰囲気作りなどを行うことによって、お客様が楽しく、快適に旅行できるようにすることが、添乗のプロとして期待されている。また、テーマ性のある旅行においては、そのテーマについてお客様やインストラクターと一定レベルの話ができることも、プロとしての添乗員に求められている。


これら3分野のプロ育成のためになすべきことは、徹底的なデスティネーション視察(自らが旅行者として現地を楽しむこと)とこれからの旅行のプロとして期待される役割を念頭に置いた新たな資格制度の創設である。旅行業務取扱主任者資格では、約款や運賃計算など旅行業務を行う上の不可欠な知識を中心に認定を行っているのに対して、新資格制度ではマーケティング、コンサルティングなどのノウハウやスキル、地方別の詳細な旅行・観光地の知識、テーマ別の旅行に関する知識など、分野別に資格化することがポイントになる。

資格が認定された旅行会社スタッフは、「○○地域スペシャリスト」、「( )テーマスペシャリスト」などを名刺等に記載できるとともに、認定バッジを着用することにより、顧客からプロとしての信頼を得ることができる。

アクションプラン

7.旅行企画担当者のモチベ―ション高揚のための方策の検討

海外旅行では優れた旅行企画を表彰し、告知する制度があり、海外旅行企画担当者の動機付けとして有効に機能しているが、国内旅行の優れた企画についても、JATAとしてそれを顕彰し、広報宣伝する手段を検討する。

8.国内観光関連知識に関する新たな資格制度の検討

複数の政府観光局が、自国を旅行目的地としたあらゆる旅行形態に対応できる専門知識の習得を目的として、旅行会社社員を対象に養成講座を実施している。また一部旅行会社ではデスティネーション毎にプロフェッショナルを養成する社内教育システムを立ち上げている。

JATAでは「今後の旅行業界における自主的な資格認定制度に関する検討会」を立ち上げ、旅行商品販売従事者を養成対象にして、より専門性の高い知識の習得と情報の提供能力の向上、さらに旅行者のニーズを的確に把握し、旅程等を提案できるコンサルタント能力の修得をめざして、国家資格である旅行業取扱主任者とは別に業界の自主的な資格制度新設の検討を行っている。消費者の情報収集,旅行手配の方法が多様化する中で国内旅行に関する資格制度ができることは、旅行会社の経営者も、現場のスタッフも国内観光知識の習得に関して動機付けられることが期待できる。また、これを機に国内の観光地や観光施設も、マニュアルの作成、セミナーの開催、ニュースレターの発行などにより、旅行会社スタッフに対する情報提供をさらに充実することが期待される。

(6)旅行・観光に関する情報の共有化による流通効率化推進の環境整備

現在、各旅行会社は、それぞれが独自の方式で観光情報や契約施設の情報を持ち、独自のシステムで管理しているが、そのためのコストは旅行会社にとっての大きな経営圧迫要因になるだけでなく、各社に少しずつ異なる方法で情報提供しなければならない契約施設にとっても、大きな労力の負担となっている。

情報を持っていること自体に付加価値があった時代には、独自の情報システムと独自のデータベースを持つことが、他社に対する強力な競争優位となりえた。しかし、インターネットをはじめとして、一般消費者が旅行・観光に関わる極めて詳細な情報を、安価でかつ手軽に入手できるようになった今日、情報を「囲い込む」ことは、旅行会社にとって差別化という「資産」である以上に「負債」になってきた。

これからの旅行会社が、サプライアーや地域(自治体・観光協会等)とともに情報の共有化を図ることは、情報システム関連の負担をツーリズム産業全体として最小化することにつながる。

具体的には、観光地、観光関連施設、商品・サービス内容、料金、顧客属性、決済等にかかわる情報の様式(フォーマット)を業界全体で統一する。

また、それらの様式を電子化することによって双方の業務効率を上げ、パートナーシップを強化することが重要となっている。

アクションプラン

9.Travel XMLによる取引様式の標準化推進

すでにJATAにおいては「Travel XML」の名称で旅行会社とサプライアーとの「商取引の標準化」をすすめている。2003年9月に勧告された第一フェーズ仕様においては、「国内宿泊施設と旅行会社の宿泊に伴う情報」を標準化した。今後はこの標準化仕様を旅行会社システムと宿泊施設システムの双方において実際に利用し、宿泊予約関連業務の効率化を推進することが必要である。

(7)サプライアー・旅行会社間での決済手段の簡素化

現状と課題において述べたように、わが国のツーリズム産業は、固有の契約制度、料金体系、決済手段、言語等により「鎖国」状態にある。

決済の分野では、一部の旅行会社が予約データをもとにした決済方法を導入しているものの、大半は旅行会社が発行したクーポンをサプライアーが受け取り、金融機関を通じてあるいは直接に、そのクーポン券面金額を旅行会社から販売手数料を控除して取り立てる、という昔からの決済手法による取引を行っている。この手法そのものは、旅行会社に旅行者とサプライアー間の決済代行機能という付加価値を持たせ、サプライアーにとっては消費者との直取引に比べて資金回収のリスクの少ない決済手法であるという点において、旅行業の発展に大きく寄与してきたことは疑いのない事実である。

しかしながらこれら二種類の代表的な決済方法に加え、現在ではノークーポンでの処理、コミッションのみの後払いなどを含め、様々な決済方法が混在しており、そのことが業界全体の効率性の低下を招いている。
決済処理は産業全体では大きなコストとなっており、電子化を基本とした標準化が早急に確立される必要がある。

アクションプラン

10.クーポン決済に代わる決済手法の可能性、具体的な決済手段の検討

クーポン決済にかかわる宿泊施設、旅行会社双方の経費、作業時間の大幅な軽減をはかるために、JATA内に専門部会を設置し、クーポン決済に代わる決済手法の可能性、具体的な決済手段について検討を開始した。

(8)販売代理業から購買代理業へ、さらに付加価値創造業への転換

今日まで国内旅行業界は、サプライアーの商品を代理販売することによってサプライアーから販売手数料という収益を得る「販売代理業」として成長してきた。もちろん旅行会社ならではの付加価値をつけた企画商品を造成し販売することで「販売収入」を上げ、また顧客に旅行・観光情報の提供や旅程の作成などのサービスを提供することにより旅行取扱料金を収受するなど、顧客から収入を得る努力は怠ることなく続けてきた。

既述のように、ここにきてインターネット・エージェントの登場や、サプライアーの直販拡大が進んでおり、販売代理業としての旅行会社の存在意義は徐々に薄れてきている。これにともない、旅行会社の販売手数料収入は、減少傾向に歯止めがかからない状態になっている。すなわち、単なる販売代理では、旅行業の生き残りは期待できない状況であると言わざるをえない。

これからの旅行会社は顧客のニーズに合う旅行情報と旅行商品を顧客に代わって探し出し、提供するという「購買代理」、さらに高付加価値商品の提供によって収益を上げるモデルを確立することが求められる。
本提言(1)〜(7)を着実に、かつ市場の変化に遅れをとることなく推進していくことそのものが付加価値創造業モデルの実現につながるのである。

アクションプラン

11.旅行会社が介在することによってはじめて実現可能な旅行商品の提供

「市場ニーズを先取りした提案型国内旅行商品」の中でも、特に旅行会社がお客様と地域やサプライアーとの間に入ることによってのみ実現可能な旅行商品を提供し続けることが必要である。
これらの推進に関しては、優れてJATA各会員会社の営業戦略にかかわることであるが、JATA主催の会議・セミナー等において先行事例を紹介し、旅行会社が消費者にとって有用な存在で有り続け、旅行会社を使うことの有用性を訴える大きな流れを提起し、かつ会員会社の啓蒙に努める。


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