3月号インデックス│特集│旅の力JATA NOWVWCニュース Cafe de JATA 添乗員のための旅行医学バックナンバー
   旅の力
P2 【特集】




 国が「インバウンド、アウトバウンドの需要を喚起し、地方を活性化するための有効な手段」(国土交通省航空局 渡邉一洋空港部長談)と期待をかけているチャーター。2009年度は金融危機や新型インフルエンザの影響により、インバウンド、アウトバウンドとも厳しい年になりました。その中で本邦発のチャーターは、規制緩和された成田空港などの影響で2009年は2256便と2008年度の約30%増となり、2007年度並にまで回復しました。
 第三国の航空会社によるチャーターは、成田発26便、地方空港発18便、中部発2便(いずれも2009年度)と「まずまずの滑り出し」(田口政策官)。個札販売に関しては「定期便就航への足固めに100%の個札販売を希望する航空会社もあります」と、一定の反応があることを明らかにしました。



 田口政策官は旅行業界のチャーター活用に次のような期待を寄せています。「昨年、当局の航空協議で合意された
ポーランドでは、ポーランド航空が日本への乗り入れを希望しており、定期便就航をにらんだチャーター便の運航が見込まれています。チャーターは目新しいデスティネーションの広がりにも繋がります。旅行会社が中心となって企画・集客できる手段であり、国交省では成田空港における発着枠の早期調整などを含めた必要な制度を整備し自由度を高めました。今後も成田、羽田をはじめとする全国の空港でチャーター利用が広がるようにしていきたいと思っています」。
 2009年度の本邦発チャーターを方面別で見ると、大洋州、北米、ロシア、欧州が2007年度を上回っており、中でもロシア方面へのチャーターが急激に拡大しています。このようにチャーターは、新しいデスティネーション開拓や旅行需要喚起に期待されています。





 昨年度はパラオへ160便、アラスカとヨーロッパへ各60便、ホノルル線を80便運航するなど、約460便を運航しました。今年度はバリ島、シェムリアップ、ケアンズ、セブ島、海南島などへの運航も計画しており、昨年度並みの規模で推移していく見通しです。定番のパラオ、アラスカ、ヨーロッパへは東京や名古屋、大阪などから、ホノルルへは直行便のない地方都市からの運航が中心です。利用する機材は350席前後の長距離用大型機材ジャンボ機(B747)と、230席前後の中距離用中型機材B767が中心です。ジャンボ機は退役が進んでおり、今年度下期以降の長距離向けには250席前後のB777を利用する予定です。中型機材を積極的に活用することで、大型機材用の滑走路を持たない地方都市空港からのチャーター便の拡充を図るほか、新規需要の創造も視野に入れています 。



 従来のITCは運航方面が同じであればどの便も同じサービスを提供していましたが、近年は、その便独自のオリジナル企画を実施したチャーターも運航しています。チャーターでは、航空会社が考えて提供するサービスだけではなく、旅行会社と共に顧客のニーズを汲み取り、そのニーズに合致するサービスを立案、実施することが可能です。好例は1機全体を家族旅行専用機に仕立てたジャルパックのハワイ行きファミリージェットです。

 この商品は子どもの世話に長けた子育て経験のある客室乗務員が搭乗したり、機内に赤ちゃんの授乳専用ゾーンを設けるなど、機材を小さな子どもさんがいる家族向けのツアー専用に仕立てているのが特徴です。
 このようにチャーターは、その便、ツアーオリジナルのサービスをつくり上げることが可能です。今後も、お客様のニーズにきめ細かく対応した、チャーターならではの高付加価値商品に取り組んでいきたいと思います。顧客が最も求めている地域へベストシーズンにチャーターを設定する従来からの方針に加え、このようなチャーターならではの取り組みにより、新たな需要創造に繋げたいと考えています。
 行政やJATAに臨むことは、まず海外旅行の需要喚起。CIQの整備とともに、何よりもデスティネーションのプロモーションを含め、海外旅行の素晴らしさを旅行会社、航空会社と一体となって訴えていきたいですね。

  モンゴル航空は1989年、新潟にチャーター便で乗り入れたのを機に、ウランバートル?新潟間にプログラムチャーターを運航。後に路線を関空線に変更し、2002年に正式に定期便化。2003年からは成田へ週3便(冬季は週2便)で定期便を運航しています。
 日本へのチャーター便の取り組みは、2008年に大相撲のモンゴル巡業はありましたが、観光目的のチャーターは昨年から。しかし、新型インフルエンザの影響で海外旅行需要が伸びなかったことから昨年は羽田発の1本にとどまりました。実質的に今年が本格的始動の元年です。現在3機の保有機材でアジア5路線、ヨーロッパ2路線を運航していますが、機材繰りをうまく行い、余裕がある分をチャーターとして運航しています。今年は日本向けには7月から8月にかけて広島、岡山、新潟からチャーター便を運航します。モンゴル政府には新機材の導入も要望しており、納入は未定ながらチャーターへのやる気は満々です。折しも2015年にはウランバートル近郊に新しい空港が完成します。これを弾みに、日本向けチャーターや日本とカンボジアなどとの間の第三国チャーターも手がけていきたい。
 日本人に対する査証が今年4月1日から免除になったことも、訪モンゴルツアーに弾みをつけそうです。6月にはモンゴル航空とモンゴル旅行業協会が日本のテレビ局や新聞社などをウランバートルへ招待するプレスツアーを行ったばかりで、来年以降の需要拡大に期待しています。



モンゴル航空が所有するB737-800



 課題は冬場の需要喚起です。定期便はアジアでは成田、関空のほかに、北京やソウルへも乗り入れています。日本以外はビジネス需要が多く、季節に関係なくイン、アウトの双方が順調です。観光にしてもウランバートルから済州島や海南島へチャーター便を運航しており、多くのモンゴル人が両地を訪れています。
 一方、日本路線の需要は日本からの観光に偏りシーズンも夏場に偏重。日本の旅行会社のツアーに頼っているのが現状です。モンゴルの冬はマイナス40度にも及びますが、冬場をどう売っていくかが今後の課題です。
 まだまだ渡航者が少ないモンゴルですが、チャーターはモンゴルの知名度を上げる有効な手段。積極的に取り組んでいきたいと思います。



 チャーターは新しいデスティネーションの提案や独自のサービスの提供など、旅行会社ならではの付加価値を高められるものの一つであり、需要創造や他社との差別化を図る上で今後も取り組んでいかなければならない分野です。JTBでは今夏、国内航空会社との協同による欧州7方面14本のチャーターや、羽田空港国際化に先駆けた羽田ホノルルチャーター、第三国の航空会社によるキューバチャーターなどを計画しています。
 ITCルールが緩和された昨年は、日本初の第三国の航空会社による岡山?パラオ間のチャーター、韓国の航空会社によるグアム、サイパン、フィジーチャーターを設定し、新たな機材の調達方法として需要を担えた商品になったと思います。
 一方、個札販売は航空会社の事情などもあり、実際にできたのは2つの方面のみでした。現ルールでは定期便運航権がある路線でしか個札販売ができない制約があり、チャーターによる直行便の個札販売は困難な状況。買取リスクをヘッジする手法としても期待できるだけに、せっかくのチャンスを生かし切れていないのは残念です。こうした規制もどんどん自由化すべきです。


 2008年のリーマン・ショック以降の旅客需要減によって定期便の運賃が下がり、定期便とチャーター便の垣根が非常に低くなったと思います。さらなるチャーターの魅力を引き出すには、まず航空会社に定期便と同じレベルのサービスを求めていきたいですね。例えばチャーターでは、座席クラスがビジネス、エコノミーと違う場合でも、まだまだ食事に変化がつけられないことが多々あります。普段ビジネスクラスを利用しているお客様目線で考えると、ダウングレードと感じられる可能性が高い。相手先の国の事情や路線の状況など航空会社と密に打ち合わせをして、
チャーターならではのサービス向上も狙っていきたいと思います。
 今後はLCCやオフライン航空会社の就航も増えてきます。JTB内では、チャーター航空会社に対する安全基準を取り決めていますが、指針となる旅行業界全体の基準があってもいいのではと感じています。また、新たなGSAとの取引も想定されるため、GSA業務自体の基準も必要ではないでしょうか。JATAにはこうした業界全体に関わる基準作りや、国に対する必要な制度作りなどの働きかけにも期待します。
 これからは、業界全体としてチャーターでデスティネーションや路線、マーケットを育てていくというビジョンやコンセンサスが必要でしょう。チャーターコーディネーターの設置は、旅行会社、航空会社、JATA、行政が一体となってその環境をつくる良いチャンス。旅行会社がチャーターの優位性を認識し目標感を持って事業を進めるためにも、チャーターの在り方を議論する時期にきていると思います。


 ITCルールが緩和されて1年経ちましたが、景気の低迷なども重なり、旅行需要回復のきっかけというほどにはならなかったのが正直なところ。ただ、航空会社からのチャーターのアプローチは増えており、定期便の減少という課題と日々向き合う地方の空港と旅行会社にとって、チャーターの利用に関するルールが緩和されていくことは非常に喜ばしいことです。例えば、韓国から到着した定期便が夜間駐機の時間を利用してサイパンへチャーターとして運航されるなど、この1?2年でさまざまな動きが出ています。
 2010年は広島?マカオのチャーター便を、正月を含めて4本するほか、例年の済州島へのツアーも催行する予定です。スイスなどのロングも予定していますが、広島空港単独ではなく複数の空港と共同で行っています。そのほか、ポーランドやクロアチアなども計画し、チャーターしました。都心部で人気が出た地域はその後、地方でも人気が出ますので、他社にツアーを卸売りするなどして協力を仰ぎつつも、チャレンジしていく価値はあります。



 地方の悩みとして、現行の定期路線の維持があります。定期便の維持の一翼を担う旅行会社にとって、定期便に余裕がある中でのチャーターの積極的な展開は難しいところがあります。しかし、新しいデスティネーションの拡大についてはチャーター便を利用した開拓が重要です。過去には、グアムへのチャーターを企画し、翌年から定期便化した実績もあり、チャーターを足がかりに定期便化につなげていければ嬉しいですね。
 一方で空港の課題もあります。広島空港は24時間運用ではないため、空港が開いている時間帯が限られています。その中で定期便以外のチャーター便を処理するとなれば、空港職員の数を考えても発着時間などに限界があります。地方空港の中でも比較的人員に余裕のある広島でさえそうですから、広島以外の地方空港では人的な対応が課題ではないでしょうか。
 JATAには、地方の行政と旅行会社が一緒に取り組める場の設定を期待します。どの航空会社がチャーターを希望しているかなどの情報の収集と発信もしてほしいですし、信頼できるGSAの指針も作っていただきたい。
 チャーターは魅力ある素材ですが、リスクが高いというのが本音。しかし、商品展開を増やす上でも、やらなくてはなりません。リスク分散に関するノウハウなどもチャーターコーディネーターと共有していきたいですね。

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