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   旅の力
P2 【特集】

 「女性だけのマーケティング本部」は、2007年4月、社長の発案によって結成されました。社内に女性の活躍の場を増やすことと、女性の方がより柔軟なアイデアが出るだろうという狙いがあったようです。私はそれまで宿泊の予約担当でしたが、「女性の意見を出せる場」に魅力を感じ、頑張ってみようと取り組みました。
 マーケティング本部始動後、まずは夏の閑散期の底上げを狙い、今までにはなかった女性目線で企画したファミリー向けのイベント「ホテリエ体験」を行いました。子ども向けに、ホテルの裏側見学や、パティシエ体験をしてもらうものです。おかげさまで好評をいただき、翌2008年、2009年と恒例のイベントになりました。これをきっかけにファミリー需要が増え、閑散期の集客増に繋がっています。

 現在、リーダー、広報、宿泊、料飲、婚礼、デザイナーの各担当者、姉妹ホテルであるキャッスルプラザ担当の計7人で活動しています。プランのアイデアは、週1回行う企画会議、通称「レディース会議」で出し合います。会議といっても堅苦しいものではなく、雑談を交えながらアイデアを出し合うアイデアフラッシュを行い、気に入ったプラン案から話を広げ、「それ、面白そうじゃない?」と具体化していくことがよくあります。その中で生まれたのが「プロポーズ大作戦」です。これは、当ホテルをプロポーズの場に選んでいただき、そのお手伝いさせていただくもの。メインダイニングでのお食事のほか、事前に打ち合わせたタイミングで花束を用意し、ピアノの生演奏で思い出の曲を弾くなど、女性好みのサプライズを用意してプロポーズを演出します。元々このアイデアは、会議中の「ロマンティックなプロポーズをされてみたい」といった雑談から広がったんです。残念なことに(?)、マーケティング本部の女性は皆独身でしたので、夢が広がり一気に具体化しました(笑)。

 タイトルの妙もあってか、テレビや雑誌で紹介された「プロポーズ大作戦」ですが、商品化にあたっては「ホテル的にそれはどうなの?」という意見は出ました。もともと当ホテルは、名古屋では歴史あるホテル。50〜60代以上のお客様も多く、「由緒ある」イメージがあったからです。しかし、女性ならではの目線で新たなマーケットを掘り起こすことも私たちの役目のひとつ。社長の「やってみたら」の一言で商品化できました。
 こういった冒険的なアイデアをプラン化できるのも、マーケティング本部が社長直属の部署であり、「頭で考えるよりも、まずは実際にやってみろ。アイデアはどんどん出せ」と
チャレンジさせてくださるから。もちろん、集客的に今ひとつだったプランもあります。それでも、「何がダメで何が良かったのかを分析して、次へのチャレンジにしなさい」と次を促してくれるため、失敗に臆することなく、分析とチャレンジを繰り返すことができるんです。その結果が、今までは取り込めていなかったお客様が増えるなど顧客層の広がりに現れていると思います。

企画会議 
通称「レディース会議」。週に1回行われ、アイデアを出し合う。ここで練られた企画案は、社長を交えた月2回の会議で提案。商品化へのアドバイスをもらう。

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 2007年5月に世界の家庭の味をヒントにした飲料「世界のKitchenから」ブランドが誕生し、今年で4年目になります。世界中のお母さんの知恵をヒントに、日本人の味覚にあうように“ひとてま”加えたおいしさをお届けするブランドで、2009年度は前年度比で3割増と順調に売り上げを伸ばしています。
 同ブランドのアイデアは、新商品の企画開発合宿でデザインなども手がける若い女性社員の「私たち女性が飲みたい飲み物ってないよね」という発言がきっかけ。「もっと手作り感があって作り手の顔が見える自家製のような飲み物がほしい」という気持ちにその場にいた女性が共感したことから生まれました。
 最初から「私たちが飲みたいもの」の企画立案を任され、コンセプトを固めていきました。その中で出てきたキーワードが、女性が好きな「旅」と「食」。私自身、旅行が好きで、大学時代にヨーロッパ各国を旅行。また、日本でも美味しいと評判の店にはすすんで足を運びます。そんな実体験を元に考えてみると、異国で出会った美味しい記憶って、高級レストランに限らない、地元の伝統食だったり、家庭の味だったりしたなって。そこから「世界中のお母さん」というキーワードが生まれました。コンセプトを上司に伝えたところ、「現地に行って本物を味
わってくるように」と海外現地取材をさせていただきました。女性向けの商品ということで女性の感性を大切にした方がいいとの判断があってのことだと思っています。

 商品企画チームは私と、きっかけとなった提案をした女性社員をはじめ、技術開発や社外のデザイナー・カメラマンなど大半は女性。すぐにコンセプトに共感してくれ、さまざまなアイデアを出してくれました。女性が多いからか細かなニュアンスなど、わざわざ説明しなくても通じました。こういった「女性的感覚」があったからこそコンセプトを共感・共有でき、よいものが作れたのかもしれません。
 飲料の開発は、飲料市場動向のみならず、世界情勢なども含めた社会動向も重要な要素になります。私たちは、マーケティングや調査を併用しながらも、時代の空気や感覚、女性同士の共感を大切にしました。その感覚が共有できたのは、女性の多いチームだったからかもしれません。

 同ブランドでは、パッケージデザインや広告にもこだわりました。2008年に発売した「とろとろ桃のフルーニュ」では桃色を基調にレースをあしらったデザインにしたところ、男性陣から「男性は持って歩けない」という意見も出ました。しかしながら、女性の感性を信じて発売前調査を行ったところ女性に高評価、かつ、男性にも評価が高かったため、発売に至りました。ブランドを立ち上げた当初から交通広告も行い、商品が生まれたストーリー、元になったレシピの背景を詳しく伝えるために文字中心のものにしました。女性は読んでくれるだろうと思っていましたが、予想通り好評だったようです。


「世界のKitchenから」ブランドの第一弾、「ピール漬けハチミツレモン」(現在は販売終了)の海外現地取材の様子。藤川さん本人は旅と食べ歩きが大好きで、「ピール漬けハチミツレモン」はイタリアの自家製酒「リモンチェッロ」から発案。 「世界のKitchenから」
女性が中心になって開発した、世界各国の家庭の味に“ひとてま”加えた飲料ブランド。「とろとろ桃のフルーニュ」は、ハンガリーのフルーツスープがヒント。女性がデザインを担当し、今年2月のリニューアルでデザインを変更したが、「かわいらしさ」は健在

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 お客様相談室ができる以前は、営業担当者が兼任でお客様からの問い合わせなどに対応していました。ただ、どういう状況でペンが書けなかったのかなどの細かな情報まで研究部に回って来なかったため、研究部の女性社員がお客様相談室の設立を提案。2000年5月に設立されました。設立当時からスタッフ全員が女性で、現在も女性だけです。
 当社の営業取引先は代理店様や販売店様なので、製品を使用してくださるお客様と接することはほとんどありませんが、相談室には直接、製品を使っているお客様の声が届きます。お客様からの指摘は大切な情報となるので、今ではその情報を元に積極的に改善案を提案しています。ペンは使う状況や保管方法などが人それぞれなので、問い合わせの内容だけでなく、その状況の背景を聞き出す必要があります。状況が分かれば最適な回答ができる上、製品の改善策を見つけ出すこともできますから。その意味でも、お客様の電話に応対する第一声が物腰の柔らかい女性の声だと、話しやすい雰囲気を演出できます。

 お客様の声は情報の宝庫。それを受け取る私たちが中心となって、会社の財産として情報共有していきたいと思っています。それにはまず部内での情報共有が大切ですが、これには苦労していません。一般的に女性はコミュニケー
ション能力が高く、観察力も鋭いため、別の人が受けている電話にも関心を持って聞いていたりします。すると、先ほど自分も似たような電話を受けた、他の人も受けていたなどと気がつくんですよね。短期間のうちに、似たような質問やご指摘が来ると、そこには何か問題が潜んでいる可能性があります。いただいた電話内容は報告書に集計していますが、そういった集計結果を待たなくても、「最近、こういう内容の電話が多いね」と一見雑談に思える場が話し合いや報告の場に変わるんです。データと日々の応対で生まれる実感の両方から課題に気づくことができ、その分、改善に向けた素早い提案ができていると思います。
 最近では、発売されているペンの種類が増え、替芯の販売場所のお問い合わせが多くなったことから、希望されるお客様への個別販売サービスを提案し、実際に開始しています。

 当相談室では、ストレスを発散しやすい雰囲気づくりに務めています。周りの状況に気が回るということは、難しいお客様からの電話もわかるもの。電話が終わった後に、報告も兼ねて「どうしたの?」「こういうことを言われた」とその場で話をすることは、ストレスをため続けないコツでもあるかもしれません。私も含めて全員が気を使って互いをフォローしているからこその雰囲気ですが、もし仮に男性だけの部署だったり、女性が1人しかいないような部署だとしたら、また少し違うものになっていたかもしれません。


現在、5人のスタッフで対応。会社内の業務改善活動である「拠点活動」では、毎年トップクラスの評価を受ける。

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