5月号インデックス特集1│特集2│JATA NOW添乗員のための旅行医学バックナンバー
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P4 【特集2/トラベル・カウンセラー制度】



入社当初からずっとインバウンドの担当で、今年で入社5年目になります。インバウンドはアウトバウンドと業務内容が異なるうえ、学生時代に総合旅行業務取扱管理者資格を取っていなかったので、旅行業界に関する知識に長けていたわけではありません。入社2年目に上司から、今の業務範囲では旅行会社全般の幅広い業務知識が掴みにくいからという理由でT/Cを勧められました。
 T/Cは求められる知識の範囲が広く、業務時間外での勉強はかなり大変でした。でも、勉強してみると改めて自分がインバウンドの知識はあっても、アウトバウンドについては知らないことが多いことに気づきました。また、インバウンドのお客様は海外にいますので、基本的なやり取りはメール。普段からパソコンに向かって仕事をしていることが多いため、「コミュニケーション・スキル」やITリテラシーの勉強などができたのはよかったと思います。それと、旅行地理の教材などはとても役立ち、今でも活用しています。
 
 実際の業務に役立ったと実感したのは、自分にとってはインバウンドでも、海外の取引先にとってはアウトバウンドであるという視点が持てたこと。取引先がどのような視点や手順で自分たちと取引をするのかがわかり、今ではそれを踏まえて提案をするようにしています。そういう意味では日々の業務に追われる中、自分で目標を立てて取り組むよい機会でしたし、そういう意味でもやってよかったですね。
 T/Cを先に取得したので思うのですが、勉強する範囲が総合旅行業務取扱管理者と重複する箇所があります。T/Cの資格を持っていると総合旅行業務取扱管理者の試験の一部が免除されるなど考慮があると嬉しいですね。また、「販売実務」は主に店舗カウンターでの販売を想定した内容と思いますが、カウンター以外の販売業務の内容もあるとよいと思います。


 入社当初から中・東欧を担当していますが、初めはハンガリーやチェコ、クロアチアなど担当する国々に関する情報が少なく、時としてお客様のほうが詳しいことがありました。そんな時に会社からD/Sの取得を勧める回覧があり、また、当時の上司が資格制度に積極的だったことから取得しました。
 ハンガリーとチェコは、過去の添乗経験から首都のブダペストやプラハの知識はあるものの、それ以外の地域はあまり知りませんでした。D/S取得において主要観光地以外の地域を勉強したことで、中・東欧諸国をめぐる周遊ツアーの添乗中に「チェコにはプラハ以外にも魅力的な街がある」と紹介ができるようになりました。また、各国の関係性や歴史など、お客様への案内にも深みが出ました。さらに、数カ国周遊ツアーが主流の中、チェコ単独のツアーやこだわりの旅を作るなど旅行商品に広がりも出ています。こういったツアーは、ヨーロッパはほとんど訪れたという旅慣れたお客様に人気で、チェコ単独のツアーは今では平均月1本が催行されています。
 当社のクラブ欧羅巴のパンフレットでは、企画者の名前と顔写真を掲載し、その地域のスペシャリストである旨を表記しています。ツアー名に「スペシャリストと行く」などと銘打つこともあります。お客様に安心感を持っていただけるうえ、申し込み動機のひとつにもなっているようです。日本人になじみの薄い地域ほど、「スペシャリスト」の言葉が心に響くようですよ。
 D/S取得のための講座はイーラーニングなので自分の時間に合わせて勉強できるのがよかったですね。観光局独自の資料や講座などがあるとより勉強しやすいと思いました。取得後はD/S取得者向けの情報発信など継続的にフォローをいただけるとうれしいと思います。
 昨今、旅行商品は価格競争に陥っています。それでも「付加価値のあるツアー」なら高価格でもお客様に魅力が伝わり、選んでもらうことができます。D/Sの資格を活かし、今後は主要観光地だけでなく、その国の深いところまで見てもらえる高付加価値なツアーを増やしていきたいです。


 以前から日本も今後クルーズ人口が増え成長市場になると興味を持っていたものの、日頃馴染みのない分野で勝手な先入観もあり、取り扱いや商品造成に消極的でした。そんな時、日本外航客船協会が主体の 「クルーズアドバイザー制度」が2003年からスタート。自己啓発によい機会だと思いチャレンジしました。試験に向け勉強し始めてみるとクルーズは奥が深くて面白く、楽しみながら資格を取得という一石二鳥でした。クルーズへの興味が尽きることなく上級資格のクルーズマスターも取得し、同時にトラベル・カウンセラー制度のT/S、クルーズ・スペシャリストの認定を受けました。
 取得後は知識と自信もつき、既存の商品を見直すなど検証。クルーズの敷居の高いイメージを打破して最初の一歩を踏み出せる商品造成に、積極的に取り組んでいきました。需要がありながらも直行便がなく不便だったアラスカのクルーズに着目し、クルーズの発着に合わせて航空機を
チャーターするフライ&クルーズツアーを提案しました。会社としてはリスクの大きな企画でしたが、経験による直感だけではない、知識に裏付けされた根拠を示しながら勝算があることを会社に説得できたと思います。
 
 もし資格を取得していなければ途中で不安になり、チャーター便利用という大胆な仕掛けを成し遂げることはできなかったかもしれません。
 クルーズは、お客様から「あなたは乗ったことあるの?」と聞かれることも多く、プロの意見や情報を入手したい消費者側の要望があります。つまり販売側にもクルーズ経験が求められます。たとえ1度でも経験の有無の差は大きく、船会社から資格取得者向け特別料金を設定していただくなどT/Sならではの特典があるとチャレンジするかいがあるのではないでしょうか。また、約3000人いるクルーズコンサル
タントに対し、T/Sの条件であるクルーズマスターは39人です(2011年4月現在)。その希少性を広く宣伝し、旅行業界におけるT/Sの価値を高めていただいて、資格が活用できる環境になると嬉しいですね。

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