11月号インデックス年頭所感新春巻頭インタビュー│新春企画「私たちが描くツーリズム 夢の扉」│
JATA NOW/消費者相談室VWCニュース Cafe de JATA 添乗員のための旅行医学バックナンバー

   JATA NOW
P4-7 【新春企画「私たちが描くツーリズム 夢の扉】


 
 ペットは日本の家庭に広く定着し、国内の犬猫飼育数は約2684万頭(一般社団法人ペットフード協会調べ)。日本の15歳未満の子どもの数の倍以上になっており、もはや飼い主と一緒に人生を歩む、かけがえのないパートナーとなっています。1世帯あたりの年間ペット消費額は、犬24万8916円、猫12万8941円と、この不況下でも2008年度から20%以上増加(アニコム損害保険の2009年アンケート調査)しており、ペットビジネスの規模は無視できないものです。車での愛犬同伴旅行を一度以上体験している飼い主は7割近くになっており、経験のない飼い主をみても約7割は「いつか一緒に旅行してみたい」という願いを抱いています(ペット総研調査)。このようなニーズがあるにもかかわらず、旅行会社のペット同伴旅行はあくまでも「ペットはペット」としてしか捉えておらず、「家族の一員」として捉えるものは少ないのが実情です。





 そこで私たちは、既存の「わんちゃんと行くバスツアー」など、人が中心となっているツアーよりも、ペットと人が対等の立場で心から楽しめるツアーが必要と考えました。開放的な土地で過ごせば、人間同様にペットのストレスも解消され、ペットと家族の絆もより深まるのではないでしょうか。そこに、ペットツーリズムの実現性が大きく広がっていると考えます。
 また、住宅環境や家庭の事情により飼うことがでない人たちのために、「ペット貸し出し制度」を設けることで、ターゲットの拡大に繋がるでしょう。



 あえて、個人旅行ではなく団体旅行を推進します。団体旅行は、バスや列車、フェリーを貸し切り、ペットと飼い主だけの別世界を作ることができます。交通機関の中でイベントを開催することで、ペット連れ旅行者同士の交流も可能。ペットが
ゲージなしで自由に動き回ることができるようになれば、移動しながら楽しめる「動くイヌ・ネコカフェ」が実現します。クルーズなら、飼い主同士のコミュニケーションを船内で図ることができ、ツアー本体をより楽しめます。非日常空間を演出するなら、クルーズは有効な移動手段だと思います。



 ペットツーリズムで重要となるのが添乗員の存在です。添乗員には、旅行に参加する飼い主の不安を解消する相談役として、動物の正しい知識が求められます。また、旅館やホテルを利用する際のマナーを熟知し、飼い主に正しい知識を与える役割を担うことも期待されます。つまり、ツアー管理だけでなく、ペットインストラクター、エンターテイナー、ペットシッターなど、幅広い知識が求められるため、資格制度化への検討も必要でしょう。資格を持つ添乗員の存在が安心・安全を与えるだけでなく、ペットの排泄物や衛生面などの問題点に対する解決策の徹底にもなるため、添乗員の育成は重要なポイントです。そして、飼い主に正しいマナーを身につけてもらうための講習会を開くなど、受け入れ先の宿泊施設と旅行者、旅行会社との間に信頼関係を築くことも重要です。
 また、ペットを旅行の参加者と考え、さまざまな切り口からの企画立案が求められます。他のペットや飼い主との交流につながるツアー、新たにペットを飼い始める人のためにペットインストラクターを講師に招いた「しつけツアー」など、多様なアイデアを立案し、商品化実現に向けて取り組むべきと考えます。



 
 オタク文化は日本が誇るサブカルチャーの一つで、アニメやマンガを始め、ゲーム、アイドルなど多様なカテゴリーがあります。それぞれのターゲットの焦点は非常に狭いものの深い需要があります。なんといってもマニアックな人たちは自分の趣味嗜好のためならば、時間や金銭を惜しみません。一旦心を掴めば、リピーターは確実に獲得できると思います。
 そして、オタクは外界とコミュニケーションを取るのが苦手かと思いきや、mixi(ミクシィ)などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、掲示板、ブログ、動画サイト、ネットゲーム、Twitterを通じて日本中、世界中の仲間たちとつながりを持っています。また、アニメやマンガの舞台が「聖地」とされ、多くのファンがわざわざ訪れる現象も起きています。何より彼らは、度々見ず知らずの同志たちとオフ会と呼ばれる会合を行うほど行動的です。海外旅行で現地のオタクとの、オタク文化を含めた文化交流には惹かれるのではないでしょうか。



 日本や海外には、何万、何十万人の来場者が訪れるオタクイベントが多くあります。日本なら、東京ビッグサイトで開催されるコミックマーケット(コミケ)、海外ならフランスの「JAPAN EXPO」、アメリカの「ANIME EXPO」などです。海外イベントには日本から有名なアーティストや人気声優、アイドルもゲストとして毎年参加。最近ではアキバのアイドルAKB48がJAPAN EXPOに参加し、ファン向けのフランス旅行が企画されました。結果的には、ツアーの評判はあまりよくありませんでしたが、これは「オタク観光」の先駆けであり、発展させればますますよい商品ができるのではないでしょうか。






 現状、海外のオタクイベントを訪れる人は、専門家や言語に長けている人がほとんど。そうでないオタクは、ツアーなら参加しやすいのではないでしょうか。海外オタクとの交流の場を設けたり、現地限定のグッズを販売すると需要が広がりそうです。
 カメラ小僧(通称:カメコ)さん向けには、世界のコスプレ
イベントツアーがよいと思います。アニメやゲームに出てくる
キャラクターは、どちらかと言えば日本人離れしたスタイルと顔立ち。特に欧米人がコスプレすると、まるで本物のようになり、とても人気があります。旅先の風景と合わせて、オタク×フォト観光になるのではないでしょうか。

 韓流ドラマ、海外のティーン向けドラマの俳優の追っかけ、特に男性同士の恋愛を描くボーイズラブのファン(通称:腐女子)がターゲットになりそうです。欧米の男性は女性オタクが好む見目麗しい人が多く、池袋で話題となった執事喫茶のように、ヨーロッパの古城ホテルで欧米人の男性執事に囲まれて過ごす企画はウケそうです。オプションで、少年合唱団の
コンサート見学があると、なおよさそうです(なぜか少年合唱団ファンの女性オタクも多いのです)。
 ゴシック&ロリータ(ゴスロリ)ファッションの女の子たちもよいでしょう。ゴスロリファッションでヨーロッパの綺麗な街並みを歩いて、美しい背景で写真を撮り、お城のような建物でお茶会を開いたり、ゴスロリファッションショーを開催しても面白いと思います。



 日本人の日本アニメオタクはもちろんですが、海外コンテンツのオタクも数多くいます。特に、スパイダーマンやバットマンを代表とするアメリカン・コミックス(アメコミ)ファンは、コアなファンが多いです。アメコミは映画化されているものも多く、非オタクが映画からはまるパターンも。アメコミと同時にアメリカ文化が全体的に好きな人など、比較的おしゃれ系な人が多いのも特徴です。



 オタクは常にユニークなもの、人と違うもの、メジャーからは外れているけどもっと評価されてよいもの、皮肉っぽいもの(ネタ)を求めていて、それが見つかると一気に白熱し、広がりを見せます。
 注意点は、オタク間の情報網。計り知れないものがあるため、評判は良くても悪くてもすぐ広がります。しかし、オタクから発信されるものはいつの間にか世間一般に広まります。ある意味、流行や文化、新しいものの発信源でもあるのではないでしょうか。




 
 最近では女性だけでなく、男性までもがエステに通う時代。「美容」は年代、性別、国境を越えて人々が求めるものであり、人が一生を通して付き合っていく課題だと思います。世界には数多くの美容法があり、日本に導入されていても高額で、本当に現地で行われている美容法と同じなのかという不安もあります。現地で行われている美容法を現地の値段で試したいというニーズはあると思います。
 「美容」という身近なテーマを通して世界の国々や文化に新たな関心を持ってもらい、旅行に興味がなくても美容には興味がある女性層を掘り起こすことで、新規市場の開発が期待できます。



 「美容」というとエステやマッサージなどが思い浮かぶかもしれませんが、日々のストレスや溜まった疲れを癒すもの全てを「美容」とします。エステはもちろん、スポーツ、音楽、食など人に
よってさまざま。「美容ツーリズム」は固定観念にとらわれず、多種多様な「美容」を組み込んで体験できるツアーがよいと思います。



 スパ、エステ、マッサージ、健康茶の試飲や美容に良いとされる食べ物の食事、美容に関する買い物(香水、シャンプーなど)、アロマテラピーのほか、ベリーダンスやフラダンス、タイ古式マッサージ、冷却美容、気整体、岩盤浴より効果的といわれる溶岩浴、デトックスなどが挙げられます。
 また、最近では滞在型の「ヘルス・リゾート」が注目を浴びています。自分の体質やリクエストに合わせた食事プログラム、エステや体質改善、デトックストリートメントなどを組み立ててくれるもので、タイ北部の古都チェンマイにあるタオガーデンや、王族の保養地ホアヒンのチバソムなどが、美容の意識が高い日本人にも人気が高まっています。欧米からは体質改善のために定期的に1週間ほど滞在する人も多いそうです。


 韓国、タイ、フィリピン、インドなどアジアの美容を連日体験できるツアー。食も、オーガニック食材を使ったメニューや美容によいものが中心。







 へと、思考過程を変えます。自らの目的によって旅行先を選ぶようになれば、もっと身近に海外旅行を感じることができます。そして、美容などの目的達成のためであれば、女性はある程度の価格を受け入れます。目標としては「化粧品を買う感覚での海外旅行」です。
 エステ、美容室、ダンス教室、化粧品販売店など美容に関係する至る所にパンフレットを設置し、女性向けファッション雑誌やTVで紹介すると、これまで旅行業の市場ではなかった新規市場に切り込むことができます。旅行会社が持つ世界の情報を、強制的に女性たちに伝えることが必要です。しかし、新規顧客開拓の前に、まず、20〜40代の女性顧客に美容ツアーのパンフレットを送ることが有用です。美容に感度が高い人は、美容に関するパンフレットが送られてくると、少しでも目を通してくれるはずです。


 美容ツアーは、行先を先に決めるわけではなく、旅行者が美しくなりたい!という思いから行先を決めるものであり、旅行会社の圧倒的な情報力がものをいいます。もちろん、販売担当者には、美容法の基本的な知識が求められます。インターネット広告代理店の(株)セプテーニが行ったアンケートでは、健康や美容に関して影響を受ける人として、友人・知人34.0%、自分28.2%となっています。できれば、実際にツアーに組み込む美容法を体験して、その効果と安全性を確かめる役割を
担ってもらいたいと思います。



 
  ニューツーリズムの提案で需要を喚起することも必要ですが、近年の若年層には、狭い世界にしか目がいかない“巣ごもり現象”が起きています。旅を体験させるには、まずは幼少期から海外に興味を持たせること=旅育が必要だと考えました。子どもたち自身が実際に旅行を体験するのが最も優れた旅育ですが、旅の教育的効果を重視していない親がいることもあり、授業形式による旅育が今後、重要になってくると思います。そこで、私たちゼミナールで行っている旅育を紹介します。



  私たちが考える旅育とは、旅を通して異文化理解や新しい知識を得ることです。旅には教科書やインターネットでは得られない、自分の肌で感じる新しい発見や知識、それによる異文化理解があります。
 また、今回、私たち学生が旅育をしたことで、自分たちも旅行の良さを再確認しました。旅育はする側、される側双方に効果があると思います。
         



 文京区のカブスカウト(ボーイスカウトの中で小学校2年生の9月から小学校5年生まで)の子どもたちを対象に、海外の楽しさや文化の違いを伝える旅育授業を実施。日本人に馴染みのあるハワイをテーマに、現地調査を行った上で旅育授業に臨みました。まず、事前に小学生に「ハワイのイメージ」「海外への興味」についてアンケートを行ったところ、“ハワイ=海”のイメージが強いこと、また、“海外の生活”に関心が高いことが分かりました。授業を2構成に分け、映像や写真、クイズ、ダンスを用いながら、子どもたちが授業により興味を持ってくれるよう工夫を凝らしました。





 授業後、海に偏っていた子どもたちのハワイのイメージが広がり、食べ物や言語などさまざまな分野に関心が広がりました。また、「今度ハワイに行きたいと思った」、「ハワイ以外の国の生活や自然、学校などのことも知りたくなった」という声も上がりました。つまり、旅育授業は異文化への興味を広げ、ひいては子どもたちに「お父さん、お母さん、僕を旅行に連れてって!」と言わせることができるのではないでしょうか。また、海外に興味を持った子どもは、将来大人になって海外旅行をする可能性が期待できます。子どもたちに向けた旅育は、未来の海外旅行者のボトムアップに繋がり、国際性のある子どもたちを育てることができると考えます。



 旅育は目先の商品づくりに役立つというよりは、むしろ将来の顧客をつくる意味合いが強いものです。下記のような効果が期待されますが、子ども向けの旅育イベントの開催、親向けの旅育講座の開催など、積極的な取り組みが有用ではないでしょうか。



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