当社では、1992年から仕事と家庭の両立という観点で、育児休暇など主に女性に向けた制度の整備に取り組んでいました。さらに、1999年の男女雇用機会均等法改正以降、この数年は建設現場にも当たり前のように女性がいる状況になり、男女ともに仕事と家庭の両立を支援していく必要性が高まりました。そのような中、2008年に厚生労働省の「仕事と生活の調和推進プロジェクト」に参画する機会に恵まれ、これを機に社内でワーク・ライフ・バランスという言葉を使い始めました。
国のモデル事業に参画し、会社のトップがワーク・ライフ・バランスの推進を宣言したことは、社内への告知に非常にインパクトがありました。ただ、すでに制度面はある程度整備されていましたので、ワーク・ライフ・バランスを推進するにあたり、当時、取得率が低かった「現場異動時休暇」の取得率向上を柱のひとつにしました。「現場異動時休暇」とは、ある現場から、次の現場に異動する際に、最大3日、土日を含めると5日間の休暇が取得できる制度です。休みが取りづらい現場勤務者の休暇取得推進を目的に1999年に設定しましたが、2008年時点の取得率は30%未満でした。そこで、次の現場が決まった時に渡す関係書類の中に「現場異動時休暇」をいつから取得するかを記入させる欄を作るなどして、最初から予定に組み込むようにしました。もちろん、現場によって事情が異なりますので、人事側から直接推進していくというよりは、各支店・現場単位で上司及び本人に対して取得するよう促しています。その結果、2009年は70%を超える取得率となりました。
ワーク・ライフ・バランスは、個人個人の働き方に対する意識・考え方により異なるものだと思います。「ライフを充実させなさい」、「ノー残業で早く帰りなさい」と会社が一方的に勧めるものではなく、また、単なる労働時間の短縮が本質ではありません。ただ、休みたいときに休める環境を整えることは会社の役割であり、それには日頃のコミュニケーションが大事だと考えます。
ワーク・ライフ・バランスの推進は「働き方の変革」、つまり「意識の変革」ですので、10年単位の長い時間で取り組む必要があります。「現場異動時休暇」も、会社側からのアプローチを終えてしまうと、取得率は再び減少してしまうと予想しています。現在の取り組みに触れている世代が10年後、20年後に所長など上司の立場になったときに浸透しているよう、地道に取り組んでいきたいと思います。
ワーク・ライフ・バランスという言葉は会社の取り組みで初めて知りましたが、この言葉があることで、仕事と仕事以外のバランスを意識するようになりました。だからというわけではありませんが、「現場異動時休暇」は比較的きちんと取っています。直近では、今の現場に移った今年1月に連休と組み合わせて取得しました。このときは、熊本県阿蘇の黒川温泉に2泊し、その前後に福岡に1泊ずつ、4泊5日の旅でした。毎回休暇を利用して旅行をするわけではありませんが、夏季休暇なども合わせると年に1〜2回は旅行に行きますね。ただ、5日間の旅行はさすがにこういう機会がないと行けないので、いいきっかけですし、旅行好きな妻への家族サービスも兼ねて行きました。それに、異動前、工期が終わる最後の1〜2カ月が非常に忙しく、さすがにストレスも溜まりますから、「現場異動時休暇」を利用して旅行に行くことは自分自身のよいリフレッシュになっています。次の現場への切り替えにもなりますし。
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