9月号インデックス特集 1特集2特集3VWCニュース │ Cafe de JATA│添乗員のための旅行医学バックナンバー
   添乗員のための旅行医学
P10 【Cafe de JATA vol.49】


成川 当社はロシアと貿易を行う大陸貿易のインハウスとして、以前はビジネス渡航と関係者のインバウンドを中心に取り扱っていました。近年それだけでは厳しいこともあり、5年ほど前から募集型の観光旅行に着手しました。

立川 とはいえ、まだ本数はそれほど多くありません…。観光旅行では後発なので、他社と同じことをしても集客は難しい。そこでロシアが誇るバレエや舞台、文学などを掘り下げ、その分野の専門家が同行するツアーの企画に絞り込むことで他社と差別化しています。

成川 でも、実際に企画するときは、いろいろ悩みました。ロシアに詳しくても文学やバレエは門外漢だったので…。


大森
 自分が担当する文学の場合、大学の恩師がチェーホフを専門としていたので、教授にツアーの同行を依頼したり、教授を通じて他の専門家を紹介してもらいました。成川さんが担当のバレエはどのようにして同行の解説者を見つけたのですか?

成川 バレエを専門とするカメラマンの旅行手配を何度かしたことがあったんだ。バレエのストーリーやダンサー、歴史に詳しいだけでなく、衣装や舞台設計などカメラマン的な視点でバレエを見ることができる人で、この人がツアーの同行者なら面白い解説をしてくれると思って お願いしたのが始まり。ツアーにはバレエに詳しいお客様が多いんですが、毎回、好評をいただいています。

立川 でも、ロシアの劇場のプログラム発表は早くても公演の2カ月前。通常は1カ月前だから、手配は大変ですよね。

成川 劇場毎に公演がない日がわかるから、その日を外して旅程を組んでいるよ。最近ではツアーのお客さまから、「○○という町の□□劇場で行われるトスカが見たい」といった個人の手配旅行に発展したことも。公演内容の確定とビザの申請のタイミングを図るのが難しいかな。



立川 ロシアにビジネス上のことで問い合わせをしても、なかなか話が進まないことがあって大変だよね。でも、一歩ビジネスから離れると、仲間をとても大切にする、一生付き合っていける人たちだと思う。

成川 当社のツアーで初めてチャイコフスキーの生誕地を訪れたとき、町に着いた途端、地元の人たちがパンと塩を使ったロシアの伝統的なおもてなしで出迎えてくれたことがありました。さらには副市長や地元テレビ局まで来ていました。

大森 こちらからは特に何も頼んでいなかったんですが、当時、団体で訪れるツアーは珍しかったようで、地元の方が気をきかせてくれたんですよね。地元の人たちとの交流も生まれ、お客様はすごく喜んでくれました。

成川 同行する先生がフィールドワークの中で現地の博物館や美術館の館長と仲がいいと、地元ボランティアによるミニコンサートを特別に開いてくれることもあって、そういうところがすごくフレンドリー。

立川 ロシアと繋がりが深い専門家が同行すると、こういう相乗効果が生まれますよね。

成川 もちろん、最初からツアーに組み込むことはできないから、現地でのサプライズ的なものだけど。

立川 ロシア人は日本人に友好的。戦後の復活が早かったことや、高い技術を持っていること、小さな国が世界に名を馳せたことなどが、その理由みたい。

大森 でも、ビジネス上だと大変なことも多い。日本人は前もって詳細まで打ち合わせますが、ロシア人は「なんでそんなに細かく決めるの?」といった感覚。日本人の感覚とのギャップは大きいけれど、本番では上手くやるんですよ。

立川 私はお客様から問い合わせが来たら、そういった国柄の違いを話してしまうことがあります。ただ、ロシアを旅行先に選ぶ方は、世界各地を旅行されていたり、ちょっと違った場所に行きたいと思っている方が多いため、意外に理解してくださいます。


晩年、トルストイが暮らしたモスクワ郊外の
ヤースナヤパリャーナ。
間近でプロの声を聞けるサロンコンサート。


間近でプロの声が聞けるサロンコンサート 。


チェーホフの生家があるタガンログの博物館内。専門家の講師の話を聞きながら
展示物を見て回る。
 

大森 仕事のために改めてロシア文学を読み直したけど、作家の創作活動になった場所に行ったり、作家の思考を辿るといった知的好奇心を満たす旅は楽しいと思った。

成川 私もこの仕事がきっかけでバレエを見るようになったけど、本場のバレエの楽しさは、目の前で見てみるとわかる。

立川 日本人にとって舞台やバレエはかしこまった印象がありますが、ロシアではとても身近な存在。アメリカやヨーロッパならお洒落して赴く場ですが、ロシア人にとっては普段着で楽しむところ。小さな町にも劇場があるし。

大森 文化的なレベルは高いよね。日本で有名なロシア文学者といえば、チェーホフ、トルストイ、ドストエフスキー。トルストイは日本にもファンが多く、広告を出すと必ず反応がある。

成川 音楽なら断然チャイコフスキー。ラフマニノフは、フィギュアスケートの浅田真央選手がフリープログラムの音楽に使用したことで認知度がアップしました。ところで、文学や音楽のツアーは今後も力を入れていくけど、他にやってみたいツアーはある?

大森 ロシアの宇宙開発関係のツアーを作ってみたい。ロケットの打ち上げを見に行ったり、人類初の宇宙飛行を体験したガガーリンゆかりの地を訪れたり。年配のお客様が多く、大人の旅行先のイメージがあるロシアだけど、子どもが行く教育的なツアーを作りたい。

立川 私は、もっと楽しげなツアーを作ってみたい。サッカー日本代表の本田圭佑選手が今CSKAモスクワに所属していますし、ロシアでもコスプレは人気。「今のロシア」のツアーもいいですね。

成川 自分は冬のロシア旅行を打ち出したい。他社から凍結したバイカル湖で犬ぞりを体験するツアーが出たときは、正直やられた〜と思いました。
旅行の好みが多様化する中、体験ものは重要になってきます。サンクトペテルブルクに代表される観光中心のツアーももちろんですが、ロシア旅行の多面性を知らせていきたいです。


チェーホフの生家があるタガンログの博物館内。専門家の講師の話を聞きながら
展示物を見て回る。



モスクワ観光定番の聖ワシリー寺院も
根強い人気。


黒海を臨むクリミア半島のヤルタ


9月24日から国際観光会議、世界旅行博が行われます。旅行者が多様化する中、旅行会社もさらに質を高め、成長しなくてはなりません。ツーリズムの潮流を、そして世界の観光の新しい可能性をこの観光会議や旅行博で感じていただ編集後記き、今後のビジネスにつなげてほしいですね。(S)

  添乗員のための旅行医学

9月号インデックス特集 1特集2特集3VWCニュース │ Cafe de JATA │添乗員のための旅行医学バックナンバー

Copyright (c) 2010 Japan Association of Travel Agents. All right reserved.