会報誌「じゃたこみ」 【法務の窓口】
第108回 「下請法」から「取適法」へ

更新日:2026年01月20日


法務・弁済部
(監修 弁護士 三浦雅生)

今、ホットな法改正の1つ
 2026年1月1日、「下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)」の改正法が施行されました。法律の名称も「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わり、略称は「中小受託取引適正化法」、通称は「取適法」となりました。
 今回の改正には、中小の事業者も急激な物価上昇を乗り越えて賃金上昇を実現できるよう、それを阻害するような商慣習を一掃して価格転嫁と取引の適正化を進める、という背景があるようです。
 改正内容の議論の段階から、法律の所管官庁である公正取引委員会から何回か説明の場が設けられ、また私たち旅行業者の監督官庁である観光庁からJATAにも、改正内容や「価格転嫁・取引適正化」に関する周知依頼が何回もありました。
 非常に力が入っており、注目度も高い法改正ですので、この機会に法令への理解を深め、自社の商慣習を見直していただくことを強くお勧めします。

ランドオペレーターに手配を委託した際の「納品日」の考え方
 公正取引委員会が出している「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」の中に、役務提供委託の例の1つとして「旅行業者が、旅行者から請け負う宿泊施設、交通機関等の手配を他の事業者に委託すること」という記載があります。標準旅行業約款でも旅行業者の債務について、「旅行サービスの提供を受けることができるように手配すること」と定めているとおり、これはまさに旅行会社自身の業務ですので、これを他の事業者(例えばランドオペレーター)に委託することは、旅行業者にとって「取適法上の代表的な役務提供委託」にあたるということになります。
 取適法では、委託事業者に「発注した物品等を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内」に「支払期日を定める義務」が課せられています。2025年12月17日にJATA速報第21号でお知らせしたとおり、先日、公正取引委員会から「旅行業者がツアーの手配のみを他の事業者に委託した場合の『受領日(納品日、役務完了日)』は、各ツアーの出発日と考えられる」との考え方が示されました。少なくとも出発日までには手配は完了しているものだろう、との考えに基づくものではないか(そこまでの言及はありませんが)と推察されます。
 なお、非常に長期間の出張などで、出発時には帰国日の手配が未完(予定が決まっていないため)の状態で出発することもあるようです。委託事業者には「発注内容等を明示する義務」も課せられていますので、必要なタイミングで過不足なく「発注内容」や「支払期日」等の必要事項を明示し、その通りに支払いを行うことが求められます。

・「協議に応じない一方的な代金決定」が法令で明確に禁止に
 今回の法改正では、「委託事業者の禁止行為」に「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」が追加されました。これまでも「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が策定・公表されていましたが、今回「法令違反」にランクアップした形です。何をもって「一方的」とするか、など難しい面もありますが、いずれにしても取引先とのコミュニケーションを密にして、適正な取引を行っていこう、という取組みが求められています。

・「優越的地位の濫用規制」にも注意
 せっかくの機会ですので付け加えますと、独占禁止法では「不公正な取引方法」の一つとして「優越的地位の濫用の禁止」が定められています。取適法の規制と似ていますが、取適法では対象となる取引の種類が決まっており、取引当事者の資本金額・従業員数という規模の基準がある一方、独占禁止法の「優越的地位の濫用の禁止」にはそういうものはなく、すべての取引・取引当事者に適用されます。取適法に関連して、こちらもご確認いただければと思います。

【参考:JATA速報】 ※いずれも会員ログインが必要です
●【重要】「取適法 (下請法)」が適用される「役務提供委託」における「納品日(役務提供完了日)」の考え方等について
https://www.jata-net.or.jp/membership/jata-news/membership07_03/251217_compliance/
●【重要】「取適法 (旧下請法)」施行に伴う「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の改正について
https://www.jata-net.or.jp/membership/jata-news/membership07_03/260114_compliance/

担当 法務・弁済部/コンプライアンス推進部 鷲谷敦子