5月号インデックス│特集│旅の力JATA NOWVWCニュース Cafe de JATA 添乗員のための旅行医学バックナンバー
   特集:ワーク・ライフ・バランスを味方に2
P2 【特集】
近年、内閣府や厚生労働省が進めているワーク・ライフ・バランス。
仕事と生活の調和とも言われていますが、
すでに取り入れている会社もあれば、なんとなく分かってはいるものの、
特別なことはしていないという会社もあるでしょう。
ワーク・ライフ・バランスとは何なのか。旅行業とどのような関係があるのか、
概念から応用までを探ってみました。

 コンサルティングで初めて企業の方とお会いすると、ワーク・ライフ・バランスを「ワーク=仕事」と「ライフ=家庭や趣味」のバランスを取るために、仕事だけを頑張りすぎずほどほどにして、早く家に帰ってライフを充実させましょうと解釈されていることがあります。しかし、 ワーク・ライフ・バランスは、どちらかをないがしろするトレードオフの関係で成り立っているものではなく、双方をうまく調和させ相乗効果を及ぼし合う好循環を生み出すことが本来の目的です。
 経済がグローバル化し、成熟した消費社会となった日本において、ライフで得た経験をビジネスに昇華させて、ワークとライフを循環させることができる人がこれからの真のビジネスマンだと考えます。つまり、ワークとライフはバランスを取るものではなく、互いにシナジー効果をもたらすものなのです。プライベートで得た経験がヒントになってビジネスに生かされるといったことは、多いのではないでしょうか。そういった情報や経験をインプットする時間を意識して得るためには、ワークを効率化しなければなりません。そのため、ワーク・ライフ・バランスを語るとき、「仕事の効率化=ライフの時間を増やす」といったこと切り口が、比較的多く取り上げられるのでしょう。

 旅行業、宿泊業などは、ライフでの経験を生かしやすい業種です。自分たちがサービスを受ける側にまわることも多く、プライベートで得た経験を業務に生かすことが可能です。何より、サービスを提供する側がワークとライフを充実させていないと、旅行というわくわく感がある商品の提供は難しいですよね。旅行は購入時から楽しみを提供するもの。旅行会社側にもワーク・ライフ・バランスの実践は求められていると思います。
 実際に、旅館やホテルなどの宿泊施設ではワーク・ライフ・バランスに取り組み、そこから生まれた従業員の視点を顧客サービスに生かしている企業がいくつかあります。例えば、ある宿泊施設では、子育て世代の従業員やアンケートで得た情報から、専属コンシェルジュが託児やキッズプログラムの提案をするプランを用意したりしています。従業員がゆとりある気持ちで働いて接客することで、お客様の立場でサービスを考えたり、お客様の言葉にならない小さな希望や需要を拾うことができているからではないでしょうか。

 女性の仕事と育児の両立の観点から語られることも多いワーク・ライフ・バランスですが、高齢化社会を迎え、介護を分担しあえる兄弟姉妹が少なくパートナーもいない独身男性が増えている今、十数年後には男性社員が親の介護で休業や時短勤務を余儀なくされると予測されています。そうなったとき、ワーク・ライフ・バランスが定着していない企業で働き続けることは困難であり、会社を引っ張る世代が介護休業や退職を選ばなければならなくなります。育児も同じですが、ワークとライフの両方をきちんとこなしたい優秀な社員にとって、両立が難しい職場は働きにくい職場となります。そのためにも、今から少しずつ仕事の在り方を変えていく必要があります。
 今、ワーク・ライフ・バランスを推進する企業は増加傾向にあります。私たちは主に経営者層とお話しさせていただくことが多いのですが、旅行を福利厚生の一環ではなくワーク・ライフ・バランスの要素のひとつとして提案するならば、人事担当者だけではなく経営戦略を担当する経営者層に響く提案がよいのではないでしょうか。

 企業がワーク・ライフ・バランスを推進する中には、休暇取得率の向上も含まれています。あるインターネット関連企業では、リフレッシュ休暇を「休んでファイブ」という名称にしています。平日5日間の休暇がもらえるものですが、休暇制度をわかりやすい名称にすると、従業員に覚えてもらいやすくなりますし、新しく設定した休暇を告知するときの注目度が上がります。例えば、「○○旅」などと旅の名前を付けた休暇制度を提案するのもよいかもしれません。
 経営者層にとって、何が仕事や従業員のためになるかは重要な課題です。休暇取得をワーク・ライフ・バランスのひとつの要素に加えることは、旅行業界にとってはチャンスとなるでしょう。ライフ・ワーク・バランスの導入を進める企業に旅行を絡めた休暇制度など、「旅行がいかにワークに貢献できるのか」、「その企業に何が必要で、その従業員が何を吸収できるのか」を具体的に提案できるようにするとよいのではないでしょうか。


◎内閣府 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章 2007年
ワーク・ライフ・バランスが実現した社会の姿とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」である。

内閣府・男女共同参画会議「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会 2007年
ワーク・ライフ・バランスとは、「老若男女誰もが、仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発など、様々な活動について、自ら希望するバランスで展開できる状態」である。

内閣府「子どもと家族を応援する日本」 重点戦略検討会議 2007年
ワーク・ライフ・バランスとは、「個人が仕事上の責任を果たしつつ、結婚や育児をはじめとする家族形成のほか、介護やキャリア形成、地域活動への参加等、個人や多様なライフスタイルの家族がライフステージに応じた希望を実現できるようにすること」である。

出典:(財)日本生産性本部『次世代のための民間運動〜ワーク・ライフ・バランス推進会議〜』


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