
当社では以前から危機管理(リスク管理)対応マニュアルはありましたが、2003年のイラク戦争をきっかけに、今後、海外における事故だけではなく企業経営に影響するような幅広い分野でのリスク発生に対する体系立った危機管理が必要であると考え、対応マニュアルの整備に着手しました。現在では、事件・事故、自然災害、食中毒、新型インフルエンザといった感染症のほか、システム関係のトラブルや情報漏えい、テロ、反社会的勢力に対する対応など、想定されるリスクをジャンル分けして作成しています。
リスクには、事故のように発生を受けて被害の状況を把握しどう対処するかが大きな焦点となるものと、感染症や情報漏えいなど発生そのものは第一段階で、その後拡大の可能性があるものなど、リスクの内容によって受けた被害やお客様への対応はもちろん、被害を拡めないための対応、収束に向けた対応など想定されるリスクによって対策は異なります。また、リスクは、いつ、どのような形で発生するか予測できませんし、全く同じリスクが発生することは100%ありません。そのため、各分野のリスクを想定し、それぞれの状況に応じた基本的な指標となる対応マニュアルを作成しました。とはいえ、状況が異なる中でも、その対応に共通する部分もあります。迅速な情報収集と会社対応の一元化による適切な情報発信です。特に対策本部を設置するようなリスクについては、情報をそこから一元的に発信するよう徹底しています。

ひとたび事件や事故、トラブルが起きれば、お客様相談室にも電話が集中します。それが大きなリスクであれば、対策本部を設置し連絡系統が一本化され、そこを起点に社内外に対し会社としての明確な対応や情報が発信されます。お客様相談室としても本部と連絡を密にとりながら的確な解答ができます。CS的な観点から言いますと、各部署で言っていることが異なることが一番混乱をまねく原因となります。
また、発生した事例については、細かなものから緊急対応した事例までその詳細をファイリングし、データーベース化しています。そして類似のリスクが発生した場合に参考にしています。ただし、それらはあくまでも事例として参考程度にとどめるようにしています。繰返しになりますが、リスクに同一のものはありません。状況やお客様が違えば、対応が違うのは当然ですから。

マニュアルを整備するに当たり、海外にグローバル展開する企業や食品・流通など異業種のリスク管理もリサーチし、旅行業にも参考となる部分は積極的に取り入れました。基本となるものを作成し、それに各部署の意見なども取り入れ随時更新を重ねることで、現場の実態に合うものになりました。しかし、危機管理対応で大切なことは、マニュアルを作って安心してしまわないことです。1年に1回はマニュアルの内容や連絡網の確認を行うほか、ゴールデンウィークや年末年始など長期の休み前にも必ず連絡網のリストを見直してもらっています。さらに重要なことは、いかにマニュアルがしっかりできていても「想定外の事態は必ず起こる」と考えて対応することだと思います。完璧な対応マニュアルなどないと考えることから危機管理は始まっています。事態をいかに的確に把握し、情報を社内で共有した上で、どう迅速かつ適切に対応するかを常に意識することが大事だと考えます。
今後については、さらに一歩先に進み、事前の予防策(リスク予防)にも着手していきたいと思います。
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