会報誌「じゃたこみ」 【資源エネルギー庁より】あれから11年、福島の「今」~福島第一原発の廃炉作業とALPS処理水~

更新日:2023年12月22日


 JATAでは、国内旅行委員会や社会貢献委員会が中心となり、東北地方の復興支援のため「観光誘客促進等の支援」への協力を行ってきました。一連の取り組みの中で、観光庁・経済産業省などと協力して福島県の復興支援と、福島第一原発におけるALPS処理水の処分に係る風評被害の回避に向けた取り組みも開始しています。昨年度は「福島の復興と被災地域の観光促進」について勉強会を開催したり、福島県浜通りエリアの観光コンテンツや現地での取り組みを視察するツアーを実施したりするなど、会員会社における理解促進に努めてきました。この度、観光庁より最新の情報を入手しました。ぜひご一読ください。

 東日本大震災が起こった2011年から、今年で11年が経過しました。特に、原子力発電所での未曾有の事故によって大きな影響を受けた福島県では、復興に向けた様々な取組が進められており、交通・社会インフラや新たな産業拠点の整備、農林水産業などのなりわい再建も進み、住民の皆様の生活も再開するなど、着実な復旧・復興の歩みが見られます。

 

福島第一原発の現状
 「福島第一原発」の廃炉作業と併せて構内の除染が進んでおり、今では、ほとんどの敷地内で通常の作業服での活動が可能となるなど、大幅に環境が改善しています。

「福島第一原発構内の作業員
 (いわゆる防護服が必要なエリアは敷地全体の数%のみ)」


「福島県の空間線量」

 

ALPS処理水の海洋放出
 福島第一原発では、原子炉内に残る事故で溶けて固まった核燃料などを冷やすため、常に水がかけられています。この冷却水に、地下水や雨水が混ざり合うことで、高い濃度の放射性物質を含んだ水が日々発生するため、これを浄化処理し、敷地内でタンクに貯蔵してきました。
 このタンクが既に1000基を超え、敷地内のかなり広い面積を占有する状態となり、これからの廃炉作業に影響が出てしまうことから、政府は2021年4月、安全性を確保し、政府をあげて風評対策を徹底して行うことを前提に、「2年程度後を目途にALPS処理水を海洋放出する」という基本方針を決定しました。
 ALPS処理水とは、浄化装置によりトリチウム以外の放射性物質を除去し、環境放出の際の規制基準を満たした水のことをいい、浄化装置の名称(多核種除去設備(ALPS))から、そのように称されています。
「ALPS処理のプロセス(「汚染水」から「ALPS処理水」へ)」
 ALPS処理水の処分方法の決定は、「廃炉」と福島の「復興」に向けた大きな一歩となりますが、他方で、安全性や、風評影響への懸念などのご意見が多くの方から出ているのも事実です。
 ALPS処理水には、水素の仲間である三重水素(トリチウム)が含まれていますが、水道水や食べ物、私たちの体の中にも普段から存在するもので、希釈して規制基準を満たして処分すれば、環境や人体への影響は考えられません。
 実際、トリチウムは原子力発電所を運転すると必ず発生するため、世界の原子力発電所では各国の規制に基づいて海洋や大気などに排出されていますが、我が国はもちろん、諸外国でもトリチウムによる影響は確認されていません。
 また海洋放出については国際原子力機関(IAEA)が、世界各地の稼働中の原子力発電所にて、日常的に行われており、国際慣行に沿っていると評価しています。
 ただ、現在タンクに保管されている水のうち約7割には、当初の浄化性能が劣っていたなどの理由から、トリチウム以外の放射性物質も規制基準を超える濃度で含まれているため(「ALPS処理水」でない水も含まれるため)、これらの水を処分する際は、トリチウム以外の放射性物質について、規制基準を満たすまで再処理(二次処理)を行います。

「全世界の原子力発電所からのトリチウム放出例(世界地図)」

 

福島県産品の安全性
 福島県内で生産・流通する農林水産品や加工食品などは放射性物質に関する検査が行われております。検査は、食品の安全基準を定めている国際的な委員会が、これ以上の措置をとる必要がないとしている指標に基づく厳しい水準により行われ、安全が確保された基準値以下の産品のみ市場に出荷されています。

「福島県産農林水産品と検査状況」

 

 これまで復興に取り組んできた方々の努力を無にすることがないよう、政府は前面に立って全力で風評影響の払拭に取り組んでいきます。

■問い合わせ先
 経済産業省資源エネルギー庁
 原子力発電所事故収束対応室
 TEL:03-3501-1511(代表)