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更新日:2024年03月22日
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3月20日発刊 旅の情報誌「ひととき」最新号
全国知事会の「休み方改革プロジェクト」でリーダーを務められる愛知県の大村知事が旗振り役となり、官民を挙げた「休み方改革」が進められています。JATAもこのプロジェクトに賛同し、年が明けた2024年1月19日、髙橋会長が大村知事とスタートアップを支援する「STATION Ai」の佐橋社長と会談を行いました。この記事は3月20日から1か月間、東海道・山陽新幹線のグリーン車全座席に搭載される旅の提案誌「ひととき」に掲載されています。愛知県の具体的な取組みとともに、三者による休み方、観光需要の平準化、オープンイノベーションの可能性について、「じゃたこみ」でも会員の皆様に共有いたします。
おことわり 記事及び画像は「ひととき」4月号より。sponsored by 愛知県
▾ 2024年3月20日発刊 旅の情報誌「ひととき」第24巻第4号 P46-47より
コロナ禍で一気に普及したテレワーク。 対面を避けつつコミュニケーションを取る手段として普及したが、いま、「観光地の再生」にも有効なワークスタイルとして注目を集める。 観光地を元気にする仕事に取り組んだ後は、温泉やサウナで汗を流し、ご当地グルメに舌鼓――。 そんな新しいワークスタイルを提案する、愛知県・蒲郡温泉郷の取り組みをレポートする。
● 風光明媚な地に建つ温泉旅館は、絶好のワークスペース
コロナ禍以前から、日本の観光地は様々な課題を抱えていた。かつては隆盛を極めた団体旅行は右肩下がり、連休などに旅行客が集中する需要の偏在 も解決できないまま。そんな中、これらの課題を、コロナ禍によって普及したテレワーク需要を取り込むことで克服しようとする旅館が生まれてきた。 団体旅行用にたくさん用意していた客室の一部を賃貸オフィスに改装し、そこに企業を誘致することで曜日に左右されない収益を得る――。もともと旅 館は風光明媚な地に建ち、温泉などのリラクゼーション施設も整っているので、そのアセットを活用して、都心のオフィスでは体験できないワークスタイルを提案しようというのだ。
● 仕事の後は、温泉入り放題「サ活」にも対応
愛知県蒲郡温泉郷にある、西浦温泉の旬景浪漫銀波荘と三谷温泉の平野屋でも、客室の一部をサテライトオフィスに改装し、企業等に貸し出す事業を始めた。どちらも、オフィスの賃貸料に温泉やサウナなどの利用料も含んでいる。
▸ 蒲郡温泉郷は、蒲郡、三谷、形原、西浦の4つの温泉からなる、愛知県最大の温泉地。 名古屋駅から東海道線の新快速で約40分。豊橋駅からなら約10分。
銀波荘では、三河湾の絶景を望める5つのオフィスを用意。目の前にビーチが広がり、散策で一息入れられるのが嬉しい。そのビーチに面したカフェ は、以前は大浴場だったスペース。ワークスペースを充実させ、従来の旅館とは一線を画するカジュアルな空間だ。 安藤壽子氏(専務取締役)は「1泊2食付きの従来の温泉旅館のビジネスモデルとは異なる、新たなチャレンジです」と話す。
平野屋の特徴は、自身もサウナーだという平野寛幸氏 (代表取締役社長) がこだわり抜いたサウナ。「仕事が終わった後にサウナで心身を整え、あすの 仕事につなげていただく。それも、最高のサウナで」というだけあって、共用サウナだけでなく、なんと客室をまるごとサウナに改装した貸切サウナ(料金別途)も用意。普通のオフィスでは考えられないワークスタイルを提案している。
● 観光地は、ビジネスチャンスの宝庫
温泉旅館内の賃貸オフィスに入居して働くワーカーにとって重要なのは、そこで働く理由。そこで注目したいのは、観光地周辺の地場産業だ。 もともと観光は、農林水産業はもとより、幅広い地場産業と結び付いている。 蒲郡の場合、商標登録もされている蒲郡みかんの栽培が盛ん。みかん狩りは蒲郡を訪れる観光客に人気の体験コンテンツのひとつだ。 現在、地元の観光協会を中心に、改めてその魅力を再評価し、蒲郡みかんを活用した「選ばれるまち蒲郡」を目指した取り組みも進展している。
▸ 写真上 : 大浴場のレイアウトを生かして作られた銀波荘のカフェ。近隣農家のみかんを搾ったジュースが提供される。 ▸ 写真下 : 平野屋に誕生した賃貸オフィス。温泉旅館の持つ和のテイストと温かみを生かしている。
また、三河湾沖で獲れるアカムツやニギス、メヒカリなどを狙った漁業も盛ん。 それらは、大学の分析により、うまみ成分や健康成分が他地域の魚より高いという折り紙付きだ。この化学的な分析を行うことを提案した、山本水産の山本大輔氏(専務取締役)は、「メヒカリは唐揚げ、アカムツは刺身でも煮つけにしても美味しい」と太鼓判を押す。
市内の飲食店や旅館、海産物店などで提供され、観光客を喜ばせている。しかし、各地の地場産業は、後継者不足やeコマース等のデジタル化の遅れなど、山積する課題に直面している。「課題のあるところにビジネスチャンスあり」。その意味で、観光地はビジネスチャンスの宝庫とも言える。
● スタートアップとの連携に期待
こういった地域課題の解決役として期待されているのが、独創的なテクノロジーと身軽なフットワークを持つスタートアップ。地場産品とスタートア ップのAI技術等を掛け合わせることで、新たな販売開拓や生産効率の向上、効果的なPRなどの変革が起こるかもしれない。 地場産業との結びつきが強い観光地にスタートアップが入ることで観光地は、クリエイティブかつイノベーティブなビジネスフィールドになる可能性を秘めている。
◂ 写真上 : 蒲郡みかんは、温室と露地の両方で栽培され、一年中、楽しむことができる。◂ 写真下 : 蒲郡の沖合底引き網漁船等で揚がる魚の数々。 特に優れた成分をもつ魚種は「がまごおり撰魚」と呼ばれる。 魚はクロムツ、アカムツ、ニギス、メヒカリ、ユメカサゴ、スルメイカ、シロムツ。
愛知県観光コンベンション局
▾ 2024年3月20日発刊 旅の情報誌「ひととき」第24巻第4号 P48-49より
JATA会長 : 髙橋 広行 × 愛知県知事 : 大村 秀章氏 × STATION Ai株式会社社長 : 佐橋 宏隆氏
画面左から : 日本旅行業協会会長 : 髙橋広行 1979年日本交通公社入社。2014年JTB代表取締役社長、20年に取締役会長に就任。21年より日本旅行業協会会長としても活躍。 愛知県知事 : 大村秀章 1982年農林水産省入省。1996年衆議院議員。内閣府副大臣、厚生労働副大臣等を歴任後、2011年より愛知県知事を務める。 STATION Ai株式会社 : 代表取締役社長 兼 CEO : 佐橋宏隆 2004年ソフトバンクBB入社。13年からSBイノベンチャーの事業推進部部長に就任。21年STATION Ai代表取締役社長兼CEOに就任。
日本の観光需要は、週末や連休など、特定の期間に偏っている。このため、旅行者は、混雑や料金の高騰に直面している一方で、観光産業で働く側も、労働生産性を高められない状況が続いている。この問題を解決すべく、愛知県で始まったのが「休み方改革」と観光イノベーションの創出だ。指揮を執る大村秀章知事とお二人のオピニオンリーダーに、その意義と可能性を語っていただいた。
● 教育現場の改革が観光需要平準化にもつながる
大村秀章 愛知県知事
大村 : 現在、愛知県が進めている「休み方改革」の中で、特に注目を集めたのは、次の2つの取り組みです。 1つ目は、「県民の日学校ホリデー」です。11月27日を「県民の日」、21日から27日までの1週間を「あいちウィーク」とし、期間中の平日1日を公立学校は休校日としました。さらに、8割を超える私立学校も休校日を設けていただきました。特に昨年は24日が金曜で、平日にも関わらず、観光地が賑わったと聞いています。観光施設や交通機関の皆さんが割引等を行ってくださったのが大きかったですね。 2つ目は、「ラーケーションの日」です。これは登校しなくても年に3日までは欠席扱いしないという制度です。統計によれば、土・日曜に働く人は、およそ2~3人に1人いらっしゃいます。このようなご家庭では、家族と子どもが一緒に過ごすことが難しい。こういった課題を解決するために、保護者と共に校外で自主学習活動、例えば各地の史跡を訪ねる旅行や、自然に親しむキャンプに出掛けやすい環境を整えました。これらの取り組みは、結果的に、週末や特定期間に集中しがちな観光需要を平準化することにもつながります。
髙橋 : 観光業が抱える課題の本質をついた改革ですね。日本旅行業協会としても、全国の支部と共に取り組んでいきたいと思います。 平日に家族で旅行がしやすくなれば、間違いなく国内旅行の総需要は拡大します。また、観光需要が平準化することによって、観光施設の稼働率が高ま り、正規雇用も増え、採用の拡大にもつながるでしょう。さらにオーバーツーリズムも解消すると共に、平日の旅行であれば旅行者はより低価格でより 充実したサービスが受けられるはずです。
佐橋 : 近年、多くの企業が働き方改革を進めており、ワーケーションを導入する企業も増えています。ところが、お子さんの学校があるから制度を使えていないという声がありました。愛知県の取り組みはワーケーションを普及させるきっかけになるんじゃないでしょうか。
● 観光におけるオープンイノベーションの可能性
髙橋 広行JATA会長
大村 : 愛知県では今年10月開業予定の日本最大のスタートアップ支援拠点 「STATION AI」を建設中です。これを中心にして、国内外のスタートアップやエコシステムのネットワークを融合して国際的なイノベーション創出拠点の形成を図りたいと考えています。 このプロジェクトではスタートアップと地域産業の連携強化にも取り組むことにしています。愛知県は製造品出荷額等が40年以上にわたり日本一というモノづくり王国ですが、実は農業産出額も全国8位であり、多様な産業が集積しています。 オープンイノベーションによって、これら既存の地域産業の活性化を図り、新規事業が生まれ続けるように促しています。観光も地域産業に深い関わりがありますから、スタートアップの皆さんにどんどん観光地に入っていただき、地域産業の活性化に一役買っていただきたいですね。
髙橋 : 農業、水産業、製造業などを観光資源としてどう発信して、どう販売に結びつけるかは長年の課題でした。 地域に埋もれていた、ある観光施設は、旅行会社とスタートアップが共同開発したデジタルの販売システムを活用したことで、世界中から半年間で2000名の集客ができるまでに成長しました。旅行者が簡単に予約・決済できるという圧倒的な利便性に加え、観光事業者にとっては人手をかけていた業務の効率化が図れ、生産性の向上に繋がっています。今後、スタートアップとの連携は不可欠といえます。
佐橋 : 実は、欧米では、ツーリズム産業はスタートアップの重要なフィールドです。例えば、旅行者の属性や行動データを集めることで、旅行者の分散化を図ると共に、それを地域の事業者が共有して、新しい事業展開につなげています。1事業者だけではなくて地域全体で取り組んでいることがポイントです。
大村 : 人流データや消費データを収集・分析し、それを次の一手につなげるような取り組みでは、ぜひ「STATION AI」の皆さんにも活躍してほしいですね。
● 全5エリアが開園したジブリパークへの期待
STATION Ai株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 佐橋宏隆
大村 : ジブリパークは8月16日に「魔女の谷」が開園し、全5エリアが開園しました。ジブリパークは旅の目的になるだけではなくて、この地域で暮らす人、働く人にとっても魅力ある資源であり、クリエイティブな人材を世界中から集める効果もあるだろうと期待しています。
髙橋 : ジブリパークをフックにし、愛知県全体の観光コンテンツをデジタル化してワンストップで提供できる仕組みを造れば、より効果的ですね。
佐橋 : 現在活躍されている起業家って漫画やアニメを見て育っている人が多 いんです。それらによって、子どもの頃から「こんな世界を作りたい」という発想を持てたのではないでしょうか。その意味でも、好奇心や夢を育んでいくフィールドとしてジブリパークに期待したいですね。
愛知県長久手市の愛・地球博記念公園内に作られたスタジオジブリ作品の世界観を表現した公園施設。 3月16日に「魔女の谷」が開園し、5エリア全てがそろう。チケットは予約制。詳しくは公式サイトをチェック。
名古屋市昭和区の鶴舞公園南側に整備中の「STATION Ai」は、スタートアップの創出・育成やオープンイノベーションを促進するために、国内外のスタートアップ支援機関・大学との連携等を通じて、様々な支援サービスを提供する予定。
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