会報誌「じゃたこみ」 【資源エネルギー庁より】
あれから13年、福島の「今」
~東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業とALPS処理水~

更新日:2024年11月11日


JATAでは、国内旅行委員会や社会貢献委員会が中心となり、東北地方の復興支援のため「観光誘客促進等の支援」への協力を行ってきました。一連の取り組みの中で、観光庁・経済産業省などと協力して福島県の復興支援と、福島第一原発におけるALPS処理水の処分に係る風評被害の回避に向けた取り組みも行っています。これまで「福島の復興と被災地域の観光促進」について勉強会を開催したり、福島県浜通りエリアの観光コンテンツや現地での取り組みを視察するツアーを実施したりするなど、会員会社における理解促進に努めてきました。この度、観光庁より最新の情報を入手しました。ぜひご一読ください。

 東日本大震災が起こった2011年から、今年で13年が経過しました。
 特に、原子力発電所での未曾有の事故によって大きな影響を受けた福島県では、復興に向けた様々な取組が進められており、交通・社会インフラや新たな産業拠点の整備、農林水産業などのなりわい再建も進み、住民の皆様の生活も再開するなど、着実な復旧・復興の歩みが見られます。

●東京電力福島第一原子力発電所の現状
 現在、東京電力福島第一原子力発電所では、継続的な注水により原子炉を冷却することで、安定した状態を維持しており、長期に及ぶ廃炉作業が多くの作業員の手で進められています。放射線の影響で人が近づけない場所でも作業ができるよう、ロボットによる遠隔操作など、新しい技術の開発や活用も進んでいます。また、廃炉作業と併せて構内の除染が進み、構内の放射線量は大幅に低下し、今では、ほとんどの敷地内で通常の作業服での活動が可能となるなど、大幅に環境が改善しています。
 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は世界にも前例がない取り組みです。国や東京電力だけでなく、国内外の叡智を結集させるため、様々な大学、研究開発機関や海外企業などが共同で取り組みを進めています。また、廃炉で培った技術力等をもとに、地域が活性化し、福島の復興と廃炉が両輪として進んでいくことを目指して、地元企業など地域の皆様にも協力いただきながら廃炉を進めています。

  
東京電力福島第一原子力発電所構内の作業員                                                                                                                                               福島県の空間線量

●ALPS処理水の海洋放出
  東京電力福島第一原子力発電所では、原子炉内に残る事故で溶けて固まった核燃料などを冷やすため、常に水がかけられています。この冷却水に、 地下水や雨水が混ざり合うことで、高い濃度の放射性物質を含んだ水が日々発生するため、これを浄化処理し、敷地内でタンクに貯蔵してきました。
 このタンクが1000基を超え、敷地内のかなり広い面積を占有する状態となり、これからの廃炉作業に影響が出てしまうことから、政府は2021年4月、安全性を確保し、政府をあげて風評対策を徹底して行うことを前提に、「2年程度後を目途にALPS処理水を海洋放出する」という基本方針を決定し、2023年8月に海洋放出を開始しました。
 ALPS処理水とは、浄化装置によりトリチウム(三重水素)以外の放射性物質を除去し、海洋に放出する際の規制基準を満たした水のことをいい、浄化装置の名称(多核種除去設備(ALPS))から、そのように称されています。
 ALPS処理水には、水素の仲間であるトリチウムが含まれていますが、水道水や食べ物、私たちの体の中にも普段から存在するもので、希釈して規制基準を満たして処分すれば、環境や人体への影響は考えられません。
 実際、トリチウムは原子力発電所を運転すると必ず発生するため、世界の原子力発電所では各国の規制に基づいて海洋や大気などに排出されていますが、我が国はもちろん、諸外国でもトリチウムによる影響は確認されていません。

                

 ALPS処理水の海洋放出については、原子力分野の専門機関である国際原子力機関(IAEA)が専門的な立場から第三者としてレビュー(検証)を実施しており、レビューの結果として、ALPS処理水の海洋放出は、「国際安全基準に合致」し、「人及び環境に対する放射線影響は無視できるほどである」といった結論が盛り込まれた包括報告書を2023年7月に公表しています。
 IAEAは、この海洋放出前に公表した包括報告書の評価をフォローアップし、海洋放出後の安全性について確認するために、継続してレビューミッションを実施しており、直近では、2024年7月に海洋放出後2回目となる報告書を公表しました。その報告書においても、「関連する国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかった」と結論づけられており、ALPS処理水の海洋放出が安全に行われていることが専門家的な立場から確認されています。
 また、こうしたALPS処理水の海洋放出に関する安全性やIAEAによる評価については、ホームページや、SNS、国際的なイベントなど国内外の様々な機会を活用して発信しています。
  ALPS処理水の海洋放出の前後に、東京電力に加え、原子力規制委員会、環境省や水産庁、福島県等が定期的にモニタリングを実施し、海水や魚類等の放射性物質濃度に大きな変化が発生していないか確認しています。これらのモニタリングの結果から、2023年8月の海洋放出開始以降、トリチウム濃度は十分低い水準であり人や環境への影響がなく、安全であることが確認されています。​

 ただ、過去に発生した浄化装置の不具合や、汚染水が周辺地域に与える影響を急ぎ低減させるための処理量を優先した浄化処理等により、現在タンクに保管されている水のうち約7割には、トリチウム以外の放射性物質も規制基準を超える濃度で含まれているため(「ALPS処理水」でない水も含まれるため)、これらの水を処分する際は、トリチウム以外の放射性物質について、規制基準を満たすまで再処理(二次処理)を行います。

                        

●福島県産品の安全性
 福島県内で生産・流通する農林水産品や加工食品について、食品衛生法による基準値が設定されている放射性セシウムの検査が行われております。日本の基準値は、食品の安全基準を定めている国際的な組織が、これ以上の措置をとる必要がないとしている指標に基づく厳しい水準により設定されています。現在、福島県を含む地方自治体では、生産、採取、漁獲される段階で基準値を超える食品はほとんどなく、もし検査で基準値を超える食品が確認された場合は、流通しないよう出荷管理が徹底されています。


福島県産農林水産品と検査状況

これまで復興に取り組んできた方々の努力を無にすることがないよう、政府は前面に立って全力で風評影響の払拭に取り組んでいきます。

お問合せ先
経済産業省資源エネルギー庁
原子力発電所事故収束対応室
TEL:03-3501-1511(代表)