環境保全活動 実施報告 「環境ラベリングバスAA」で行く
富士山麓でのごみ拾いとエコツアー
実地研修報告

更新日:2022年03月11日


2008年6月23日
(社)日本旅行業協会
社会貢献委員会 環境対策部会
国内旅行委員会 運輸・航空部会

JATA社会貢献委員会 環境対策部会(糟谷部会長)及び国内旅行委員会 運輸・航空部会(池田部会長)では、環境を守ることの難しさや大切さを、ごみ拾いやエコツアーを通して実感していただくため、富士山麓での実地研修を行いました。
今回は、初めて国内旅行委員会と連携して開催し、環境ラベリングバスについての説明会をバスの中で実施するなど、環境に配慮した観光バスの普及・促進も目的の一つとしました。


  • ゴミ拾い前のオリエンテーション

  • 回収したゴミの前で
実施日 平成20年6月6日(金) ~ 6月7日(土)
参加者数 総勢28名
協力 特定非営利活動法人富士山クラブ
富士河口湖町
富士山登山学校ごうりき
日 程

1日目

7:00
新宿集合・出発
  • ※ 車中、環境ラベリングバスについての説明会を実施。
9:30
西湖いやしの里根場到着 見学
12:00
富士山クラブもりの学校でゴミ拾いのためのオリエンテーション
13:00
ゴミ拾いの現場に向け出発
13:30
清掃活動・ゴミの分別 ~ 15:40
16:20
ホテル到着
17:30
河口湖町、富士山登山学校ごうりき、富士山クラブと意見交換会

2日目

8:00~
富士山エコツアー体験
15:00
Aコース 青木が原樹海ツアー(西湖野鳥の森公園-紅葉台)
15:30
Bコース 吉田口登山道ツアー
(北口本宮冨士浅間神社-馬返し-三合目往復)
東京へ向け出発(17:00 新宿着・解散)

1.環境ラベリングバス説明会

  • 往路のバス車内で、環境ラベリングについて説明会を実施。
  • お客様による、環境に優しいバスを利用した旅行選択を通じて大気環境の改善、バス旅行の需要喚起、開発、促進を図ることを目的に、平成18年にこの仕組みができた。
  • 評価結果をバス本体及び旅行パンフレット等に掲示し、旅行選択の幅を広げて旅行商品の差別化を図っていくことで、環境に配慮したバスを使用した旅行の需要拡大や旅行単価のUPに繋がればよい。
  • 現時点では自主的な取組であり、法的拘束力がないことからまだ発注は少ないが、積極的に提案することで、環境への貢献と旅行単価upの効果がだせるのではないか。
  • 旅行会社として積極的に提案するには、今後、AA、Aランクの台数を増やしていくことが重要。
  • 五合目からの登山道は、関係者の努力、登山者のモラル向上により、「故意によるごみの投棄」はほとんどない。
    問題は、山麓での不法投棄と以前から捨てられたゴミである。

2.青樹が原樹海でのごみ拾い

  • 県営林道本栖線の道路沿いから少し入ったところの、「武田の石塁」と呼ばれている青木ヶ原樹海内の石積みの近くで清掃活動を行った。
  • 一見、ごみは見当たらないが、土をひとかきするとごみが出てくる。過去に不法投棄された家財道具やビン、缶、コンクリート、電池、トタンなど、「ごみ拾い」というより「ごみの掘り起こし」である。
  • 今回の現場からは冷蔵庫やテレビ等は見つからなかったが、周辺にはまだ不法投棄された物がたくさん残っているとのこと。
  • このようなごみに雨が降り、有害な水となって地下に染み込んでいる。周辺の地下水は数十年たって沸いてくることもあり、今は有害物質が発見されなくても子供世代には出てくる可能性があるので、回収は重要な活動。
  • 今回回収したゴミの量は、缶・金属類37袋、ビン・われ物16袋、可燃物13袋、ブリキ・トタン23枚、乾電池28個等。(1袋45?入り)
  • 今回は2時間の清掃活動だった。残されたごみの量を目の前にすると、そのままにして帰るのが申し訳ない気持ちになるほど、ひどい状況であった。
  • 080623_03
    この道の両脇にごみが埋まっている
  • 080623_04
    ごみの掘り起こし作業

  • ビンや缶が無数に捨てられている

  • ごみの掘り起こし作業
  • ※ 富士山クラブによると、ごみの回収回数、回収人数は増えているが、回収量は減ってきているとのこと。確かなことは言えないが、もしかしたらごみのピークは過ぎたのかもしれないと、期待をしたいとの言葉が印象的であった。

3.富士河口湖町、富士山登山学校ごうりき、富士山クラブとの意見交換

富士河口湖町の渡邊町長、富士河口湖町役場の渡辺観光課長、古谷係長、久保氏、富士山登山学校ごうりきの近藤氏、富士山クラブの舟津氏が出席して意見交換を行った。
富士河口湖町の渡辺課長、久保氏から河口湖周辺の観光の現状、観光振興への取り組み、富士山登山学校ごうりきの近藤氏から「エコツアー」の現状などについて説明。旅行会社からは「“地産地消”は立派な観光素材なので、是非取組を進めてほしい。」等の意見がだされた。

4. エコツアー

080623_07
樹海の景色

青樹が原樹海コース
野鳥の森公園から紅葉台までの約6時間のコース。1000年を超える年月で堆積した土は約2センチ。その土の上に樹木が繁っている景色を見ると、自然の逞しさを感じる。溶岩の上の青樹が原樹海の植物と、通常の土壌の地域の植物の生態系の違いもよく理解できた。木が朽ちて土に帰る姿や、溶岩洞窟など印象的な場面はたくさんあり、エコツアーならではの楽しみを堪能できた。
吉田口登山道コース
浅間神社で参拝後、馬返しから三合目までを往復する約6時間のコース。五合目からの溶岩と岩の富士山というイメージと違った緑豊かな自然の富士山を楽しめた。富士登山信仰である富士講の説明を受けるなど、登山の歴史背景などを聞きながら、視界の開ける五合目までのエコツアーはおすすめできるのではないか。
  • ※ 今回、両コースともに「富士登山学校ごうりき」にガイドをお願いした。環境知識全般、植生、五感への働きかけ等時代にあったプロの質の高さを感じるガイドであった。

5. 富士山クラブ

  • 東京事務所4名、静岡事務所2名、山梨事務所1名の計7名で事務局を運営している。
  • 多くの市民ボランティアの方と清掃活動をしたり、富士山ごみマップを作成し、山麓にどれくらいのごみがどこに落ちているかの調査結果を公表している。また、環境教育プログラムやシンポジウムを実施している。
  • ※ 「JATA環境基金」による助成は平成13年にはじまったが、その第1号が富士山クラブである。当時の富士山は「トイレ」が大きな問題になっていた。当協会は、富士山クラブが富士山頂上にバイオトイレを設置するプロジェクトに対して助成した。その成功により、その後環境省や静岡県、山梨県、山小屋が協力しあって、各登山道にバイオトイレが設置された。

6. 参加者からの感想(今回の実地研修に参加して最も印象に残ったこと)

  • 富士山のゴミ拾いについて事前にイメージしていたのは、地表にちらばるカンや紙くずの類を集めるような通常の町内会のゴミ拾いのようなものだったが、実際は地中に層をなして埋没しているゴミを掘り起こすものであり、カルチャーショックに近いものを感じた。
  • ゴミ問題では人間の公徳心のなさというものを感じたが、一方で清掃に取り組みきれいな富士山を守ろうという人間がいることも事実。いたちごっこが終息することを願う。
  • 溶岩の上の青木が原樹海の植物と、通常の土壌の地域の植物の生態の違いがよく理解できた。
  • 富士講。地元にも浅間神社の分社があり、境内に富士山をかたどった富士塚があり、富士講のなごりを見る事ができる。江戸時代に流行った富士講は、伊勢講など共に庶民の旅行の原点であった。この素材を旅行会社としてもっと取り組めないかと思った。
  • 富士山クラブの方も、富士山登山学校ごうりきの方も、とにかく一生懸命に伝えてくれている点。伝えたいことが全て伝わるとは限らなくても、発信し続けることが重要だと思った。
  • やはり、「富士山での掃除」。土の下に、あんなにたくさんの空き缶や空き瓶が埋もれているとは知らなかった。
  • やはり初日の「ゴミ拾い」が最も印象的。事前研修での「動機付け」が明確だったので、自然と高い意識で作業に入ることができた。自分が生まれる前に捨てられたゴミを拾いながら途中腹立たしさを感じながらも、実際に行動しないと分からない感覚だなと感じた。作業をすること、作業した実績を公開することが、着実に抑止力に繋がっていくと感じた。
  • 富士山麓のゴミの多さ。富士山、3合目までの森。
  • 火山流石の上に300年間という長い時間で積もった僅か2センチメートルの土壌、そこに薄く、広く根を張って出来た原生林。ひとたび、人間が踏み入ると数年間で環境を破壊する現実。自然との共生がいかに大切かを人は小さい頃から学ばなければならない。
  • 地元行政、地元NPO、首都圏のNPO、地元の方々の考え、それぞれがまだまだ統一時的なベクトルを向いておらず、全てがこれからだなぁ、世界遺産登録がそのきっかけになればいいのかなぁ、というのが感想。次第に議論が煮詰まれば、ようやく一つの方向に向い、その情報をいつも開示すべき時期に来た、ということだろう。
  • ごみ堀体験。従来は交通量のある国道沿いの側溝の中のゴミや道路隣地のゴミ拾いが主であったが、交通事故の危険等のリスクがネックであった。これをみごとに解決した着眼に敬服した。
  • 富士山にゴミがある為、世界遺産に登録できないという理由が直接目で確認できた事。
  • ゴミ拾いの体験。こんなに沢山のゴミが富士山麓に捨てられているとは想像もしなかった。地元の自治体と協力して定期的にゴミ拾い活動をするべきだと思う。「富士山を世界遺産に登録させるには」とのフレーズで有料のゴミ拾いツアーを旅行社が募集すればとよいと思う。
  • 参加する前に持っていた、ゴミ拾いの認識が間違っていた。ずいぶん過去に捨てられたゴミを掘り起こして、分別して回収することまでしているとは想像していなかった。
  • 雨は上がったとはいえ、グチャグチャの土の中から、山のように出てくる「割れたビンのかけら」と「腐ったカン」を黙々と仕分けして袋に詰める姿は、感動ものだった。こんな「3k」的な作業にお金を払ってまで参加する人がいることを理解できなかったが、実際に作業をしてみて、その達成感を皆さんが共通に感じていることが分かり、これが事業として成り立っていることの理由と理解した。
  • 富士山麓の清掃活動。渡された竹のピックでは役にたたず、スコップで土を掘ると、小判ではなく、出るは、出るは空き缶、ビン、プラスチック等山のゴミであった。時間内では拾い切れず次の方に譲ることにした。
  • ゴミ拾いは事前のイメージと違っていた。スコップで掘るなんて正直、驚いた。青木が原の樹海はもっと険しいイメージがあったが、このコースならレジャーとしても使えそう。ゴミの量と富士山クラブやごうりきのメンバーの熱心さには頭が下がった。
  • 富士山の林道脇のごみ。はるか昔に投棄されたごみが現在になって脚光を浴びることになっていることが情けなく腹立たしく思った。おそらく他にも程度の差こそあれこのような事例はあるのではないかと、自分の周りを見渡したくなった。
  • 貴重な経験させていただいた。エコエコと騒がれ、エコをCMでアピールする企業がたくさんあり意識する人は増えてはいると思うが、体験すると「意識」から「行動に移る」に変わる。

本件に関するお問い合わせ

社団法人日本旅行業協会 総合企画部 総合企画・情報管理グループ
  • TEL 03-3592-1271