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更新日:2022年12月05日
2018年2月26日開催
JATAは2月26日、東京・六本木の“六本木アカデミーヒルズ49”で「JATA経営フォーラム2018」を開催しました。「旅行業の『新しいカタチ』の追求!~旅行業の役割とは~」をメインテーマに掲げた同フォーラムには、会員企業の関係者など300人以上が参加。基調講演と特別講演に加えて、「若者」「人材」「訪日」「情報セキュリティ」をキーワードに4つの分科会も開かれ、パネリストらによって「旅行業の『新しいカタチ』」への道筋を探る熱い議論が繰り広げられました。
JATA会長 田川 博己
2017年は海外旅行が約1790万人となり、国内旅行も回復傾向に入りました。インバウンドは急伸しまして、2870万人を突破しまして、この明るい兆しは今年も継続すると考えています。 2018年は、これまで以上に観光産業に向けられる関心や期待が高まる中で、われわれ旅行業界が中心となって、リードする立場でありたい。そして、産業として発展し続けるための「備えの年」として位置づけて、変革する社会にもすばやく対応できるよう取り組んでまいりたいと思っています。 2019年からは「国際観光旅客税」が導入され、観光先進国に向けた様々な施策が実施される予定になっております。 JATAとしては、「双方向交流」、いわゆる「相互交流」が進展することが、観光先進国の目指すべき姿であるという観点から、海外旅行の活性化につながる提案を行っているところであります。併せて、旅行産業の革新や人材育成についても要望書を出し、価値創造産業への進化の契機としたいと考えています。 一方で、業界内部に目を向けますと、残念ながら、昨年のてるみくらぶの破綻は、その被害額の大きさから、社会に大きなインパクトを与えました。 JATAでは、再発防止に向けて、弁済制度の在り方や企業ガバナンスについて、観光庁と協議を重ねてまいりました。経営ガナバンスに関するガイドラインを策定しながら、4月にはこのガイドラインに基づく通報制度も開始します。また、ボンド保証制度を普及させることで、業界の信頼回復を図ってまいりたいと考えてます。 われわれ業界としてしっかりと、昨年のことを肝に銘じて、この1年、前に進んでいかなければなりません。 また、本年1月施行の改正旅行業法では、長年要望してきたランドオペレーターの登録制度が実施となり、ビジネス環境が整備されます。 JATAが運用するランドオペレーター品質認証制度とあわせて、この機会を是非活かしていただきたいという風に思っています。 JATAもこの数年間、オペレータの認証制度を育ててまいりました。われわれとしては、自分たちの仕事の価値についても、しっかりと見つめ直していきたいと考えています。
観光庁長官 田村 明比古氏
日本人にとっての旅行市場は、海外旅行も国内旅行も近年、大きな成長を遂げていません。本格的な人口減少を迎え、個人の可処分所得が必ずしも大きく増加している状況ではないわが国において、現状のまま何もしなければ、市場が大きく成長することは難しいと考えられます。 一方で、国全体のGDPに占める旅行消費の割合を、先進10カ国で比較してみますと、1位のドイツは10%、次いでイギリスが8.3%、オーストラリアが8.1%であるのに対して、日本は4.6%であり、10カ国中最下位です。特に、この4.6%のうち、海外旅行消費は0.5%に過ぎません。その原因は複合的なものであり、休暇改革や個人所得水準の向上、社会保障を含めた将来不安の解消等、政府全体で取り組むべき課題が多くあります。 他方、旅行業界も多くの課題に直面しています。特に大きな課題だと思われるのは、従来型のビジネスを、日本人相手に続けていく限り、成熟市場における競争となっていることであります。 そこでは、マイケル・ポーターが言うように、規模の経済を実現してコストリーダーになるか、高付加価値の商品・サービスで差別化するか、特定のセグメントに経営資源を集中するか、いずれかの戦略をとる必要があることは、皆さんの方がよくご存知の話でございます。 しかも、ポーターが言う競争上の脅威として、同業他社の脅威に加えまして、インターネットの普及によって、OTAの台頭、消費者の情報量の増大、サプライヤーの直販化、さらには、旅行以外の余暇活動の多様化と、教科書通りの5つの脅威がすべて登場している状況であります。 日本の消費者に旅行商品を提供するビジネスという定義づけから脱却し、どのような顧客にどのような価値を提供するのかについて考え直すことが待ったなしに求められています。そして、その答えは、企業ごとに異なってくると考えられます。 その上で、いくつか申し上げたいと思います。 一つ目は、日本人が旅行というものに対して持っている固定観念を打ち破る努力が、まだまだ不足しているということです。これまでの休暇の過ごし方とは異なる新しいライフスタイルを提案したり、学習や社会貢献の場を提供したりすることにより、旅行と競合する他の余暇活動や余暇活動以外の消費を取り込んで、旅行消費のGDP比を増やす余地は大いにあると考えられます。 二つ目は、一人当たりの付加価値額、すなわち労働生産性を重視する業界になっていく必要があるということです。労働生産性を高くしていかなければ、優秀な人材の確保が難しくなっている一方、競争上の脅威が多く存在する環境下では、従来のビジネスモデルだけで付加価値額を大きくすることも難しい時代になっています。 旅行業界において、経営の改革が進み、付加価値の高いサービスが提供されるようになることは、日本の観光産業全体のレベルアップにつながるものと確信しております。 そして、そのための人材の育成・確保が非常に重要であると考えます。国といたしましても、旅行業界における生産性向上や人材育成などを含む経営改革の促進に対し、できる限りの環境整備、支援を行ってまいりたいと考えています。
原田 宗彦氏
“スポーツツーリズム”は、隠れた資源であるスポーツを旅行商品化して、「するスポーツ」と「見るスポーツ」という新しい旅の目的と需要を創出するものです。
私が会長を務めるJSTAは、こうしたスポーツツーリズムを推進する司令塔として2012年4月に設立されました。先行する動きとして、観光庁によるスポーツツーリズム推進連絡会議の設置やスポーツツーリズム推進基本方針の策定があり、2015年にはスポーツ庁も発足して、「日本再興戦略2016」にスポーツの成長産業化が盛り込まれるなど、スポーツツーリズムの動きを加速する展開が進んでいます。昨年8月には、スポーツ庁が「スポーツツーリズム需要拡大のための官民連携協議会」を設置しており、旅行業界にとっても追い風が強まっている状況です。
また、県や市など自治体の間で地域スポーツコミッションを設立する動きも広がってきており、自治体の枠を超えた広域連携の取り組みも始まるなど、スポーツツーリズムによる地域活性化と経済効果への注目も高まってきています。
地域スポーツコミッションの発展形による地方創生については、地域内からの収入を中心とする「インナー」効果と地域外からの収入を中心とする「アウター」効果が想定されています。 「インナー」効果は、地域スポーツ事業で収入を得るもので、スポーツ教室や健康サポート事業、命名権、企業協賛金、指導者派遣などのビジネスモデルが考えられます。「アウター」効果は、施設管理事業とイベント開催を通じて収入を得るもので、ビジネスモデルとしては、施設運営やイベントの誘致・開催・支援、合宿誘致、企業協賛金などが挙げられるかと思います。
地域スポーツコミッションは、この「インナー」と「アウター」の効果を高めるミッションを持っており、スポーツによる地域活性化を具現化していくためには、官民連携によるインフラ整備も重要な課題として位置づけられることになります。 特に、「アウター」効果の部分では、イベントや合宿の誘致だけにとどまらず、地域におけるスポーツと関連した様々な動きを新しい観光素材や観光資源として捉え、コンテンツとして磨き上げたり、地域外への情報発信を行うことで、旅行流動を創出して地域間交流の拡大などを担っていただく主体として、旅行会社あるいは旅行業界には大きな役割を果たしていただけるのではないかと思っています。 旅行業界の既存市場を“レッド・オーシャン”とするなら、開発途上であるスポーツツーリズムの分野は、競争のない市場空間としての“ブルー・オーシャン”と言えるものであり、バリューイノベーションを発揮・実現することが可能な世界と言えるのではないかと考えています。
さらに、スポーツ産業という観点からは、スポーツサービス情報産業、スポーツ用品産業、スポーツ施設空間産業といった分野に整理される形で発展してきており、スポーツサービス情報産業とスポーツ用品産業の重なり合う部分で「スポーツ関連流通産業」、スポーツサービス情報産業とスポーツ施設空間産業の重なり合う部分では「スポーツ施設・空間マネジメント産業」と呼べるような新たな分野も誕生してきています。そして、スポーツサービス情報産業とスポーツ用品産業とスポーツ施設空間産業の3つが重なり合う部分でも「スポーツハイブリッド産業」と言うべき新たな分野が台頭してきており、スポーツツーリズムは、まさしく、スポーツ産業の「ハイブリッド」化を象徴するような存在となってきているのです。
2017年度におけるスポーツツーリズム・ムーブメント創出事業では、スポーツツーリズムに関連する幅広い業界とスポーツ庁が連携して、スポーツツーリズム官民協議会も開催されました。協議会では、スポーツツーリズムの需要拡大や定着化に向けた連携戦略や、各業界として可能なアクション、国として必要なアクションなどが議論され、「する」アウトドアスポーツが重点テーマとして位置付けられています。この「アウトドアスポーツ」などは、特に、旅行商品や旅行サービスにおける重要なコンテンツとして成長していく可能性を秘めているものであり、個々の旅行会社だけでなく、旅行業界全体としても新たな需要創出や市場創造に向けて、是非、積極的に取り組んでいただきたい分野のひとつです。
スポーツ庁の鈴木大地長官は昨年6月、「アウトドアスポーツ推進宣言」を発表し、高低差が大きく南北に長い日本の様々な自然を活用したアウトドアスポーツの魅力を内外に向けてアピールしました。 日本は地理的特性により、2000メートルの山でパウダースノーが楽しめる稀有な存在で、都市とスキー場の距離が近いなどの好条件もそろっており、その競争優位性を活かさない手はありません。 スポーツツーリズムというムーブメントを広げるために、訪日インバウンド需要を視野に入れた新しいアプローチも求められており、旅行業界が大きな役割を果たすことを期待しています。
井手 直行氏
「よなよなエール」は97年の発売以来、今年で21年目を迎えますが、創業当初は地ビールブームもあって何もしなくても売れまくり生産が間に合わないほどでした。ですから、当時営業担当だった私の仕事は、入って来る注文を断ることでした。しかし2年ほどで地ビールブームはあっけなく終焉。99年を境に売り上げは減少に転じ、我々の商品もまるで売れなくなりました。数千万円かけてTVCMを打っても駄目、営業に行けば「地ビールブームはもう終わったから」と門前払い。根性営業をすれば営業先の酒店に鬱陶しがられ居留守まで使われました。
大手ビールメーカーのプレゼントキャンペーンを真似て、「物より金だ」と現金プレゼントキャンペーンも行いました。「よなよな」の語呂合わせで「4747円が47人に1人の割合で当たる」キャンペーンです。効果に自信があったので生産部門には増産を指示し、受注が殺到するのを、今かいまかと待ちました。ところが、いつまでたっても反応はなく、結局、キャンペーンむなしく効果はほぼゼロ。在庫の山が積まれるばかりでした。数千ケースもの在庫を廃棄するため、社員が交代で缶ビールのプルトップを開けては排水溝に流しました。多く社員が腱鞘炎に悩まされながら処分を終えるまでに3年以上かかりました。
まさにどん底を見たこの経験から学んだのは、しょせん誰かの物真似では駄目だということでした。そしてある人に「ビジネスにはセオリーがある」と言われ、改めてビジネスの基礎を学ぼうと決心し、その後はセミナーや通信講座、書籍等で経営やマーケテイングについてコツコツ学びました。そうして学んでいく中で特に心に響いたのが米国の著名な経営学者、マイケル・ポーターが唱える競争戦略論でした。私なりの大胆な解釈では、重要なのは「トレードオフ」と、「一連の活動の間にフィット感を生む」ことだという考えに基づく経営戦略です。
トレードオフとは何かを取ったら何かを捨てることです。一方を捨てる覚悟で他方を選択する。1回の選択で競争相手は半分に、2回選択すれば4分の1になります。私たちはこれをもっと極端にやりました。100人のうち、右が2人へ行き、左が98人なら右を選ぶ。覚悟を決めてそういう選択を続けることで、他社が真似することを躊躇するくらいの徹底した差別化戦略を実行したのです。
そうした差別化とターゲットの絞り込み、そしてブランディングが私たちの製品開発方針でもあります。たとえば当社のヒット商品に「水曜日のネコ」というビールがあります。変なネーミングです。そもそもビールが一番よく飲まれるのは金曜日や週末です。なのに「水曜日」。ターゲットは一番ビールを飲まない30代女性層。他社が絶対ターゲットにしないから、あえて選んだターゲットです。彼女たちにヒアリングすると案の定「ビールはあまり飲まない。敢えて飲むとしたら、週の半ばの一息つきたいタイミングくらいかな」という答えでした。それでネーミングに週半ばの「水曜日」を入れました。彼女たちは猫好きということも分かったので、2つつなげて「水曜日のネコ」。
もちろん社内会議でも反対意見が多く出ました。「そんなニーズがあるのか」「ビールのネーミングとしておかしい」「イヌ好きはどうする」。でも反対意見が多くてもいい。むしろ少数であっても賛成者の中に強い支持があることが重要です。「そんな製品は市場が求めているのか」という当然の疑問もありました。でも考えてみてください。いま存在していない物を消費者は判断できないのです。上手くいくかどうかは誰も分からない。それでもリスクを取ってやってみようというマインドこそが大切です。結果的に「水曜日のネコ」は大成功を収め、根強いファン層を呼び込むきっかけにもなりました。
こうした取り組みを10年も続けているうちに状況は徐々に変わり、連続赤字だった経営が上向き、現在は13年連続増収増益中です。
一見売り上げにつながらない取り組みもブランディングの一環として赤字覚悟で行いました。売り上げは後からついてくるものです。ただし簡単なことではありません。有料のファンイベント「よなよなエールの超宴(ちょううたげ)」を昨年5月に北軽井沢のキャンプ場で開催した際には15分でチケットのほとんどが完売し、約1000名が集結しました。そんなに来てくれるならばと、10月には東京で神宮外苑軟式野球場を借り切って4000人規模のファンイベントを開催しましたが、千万円単位の大赤字を承知で実行するには大きな勇気が必要でした。普通はできません。しかし私たちは、そういうトレードオフや選択をし続けることで今を作り上げてきたのです。むしろ売り上げに繋がらない取り組みが熱狂的なファンを生み出し、増加させていく。そう信じています。
突き抜けた個性は賛否両論を生みますが、熱狂的なファンも生みます。これこそがトレードオフを伴う差別化の最大の効果です。ありふれた製品やサービスに消費者は飽きています。だからこそ私たちの取り組みを支持してくれる客層が存在するわけです。
そんな考えで会社一丸となって仕事をしているうちに社員が幸せになり、ファンも、取引先も、周りの皆が幸せになっていった。ということは、もっと大きな世界を幸せにできるかもしれない。いまでは本気でそう考えています。変わり者と呼ばれて笑われてもいい。私たちは「よなよなエール」でみんなを幸せにし、世界平和を目指します。
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