会報誌「じゃたこみ」 【海外・訪日】「2023 日台観光サミット in 愛知」開催

更新日:2023年12月22日


  2023年9月8日(金)、愛知県名古屋市で「2023日台観光サミット in 愛知」が開催されました。日本と台湾の旅行業界のリーダーや観光業界のトップが集結し、日台間の緊密な連携と持続可能な観光の実現について活発な議論が行われ、以下の4つのポイントを軸にした「日台観光サミット・愛知宣言」が合意されました。
1.環境保全を前提とした輸送能力の早期回復
2.人手不足や人材育成などの課題への協力
3.高付加価値旅行推進など質的向上による観光消費額の拡大
4.地方誘客を通じた需要の分散によるオーバーツーリズムへの配慮
 日本側の代表団には、日台観光推進協議会・日本観光振興協会の山西健一郎会長、観光庁の本保芳明参与、JATAの髙橋広行会長が参加し、台湾側代表団には、台日観光推進協議会・台湾観光協会の葉菊蘭会長、謝長廷台北駐日経済文化代表処代表、林信任交通部観光局副局長が参加、地方自治体、観光協会、観光業界、旅行関係者、運輸機関などを含め、総勢210名が出席しました。
台湾観光局からの積極的な協力に謝辞、日台のさらなる連携を
 サミットは日本観光局と台湾観光局の基調講演から始まり、続いて、観光産業関係者による意見交換会が行われました。JATAからは西尾忠男参与がアウトバウンドの立場で、コロナ禍からの回復に向けたJATAのこれまでの取り組みを紹介しました。具体的には、2023年2月にJATA海外旅行推進委員会が台湾へ視察団を派遣し、また、通常はライバル関係にある旅行会社各社が台湾への送客拡大を共通の目標として協力できる企画をJATA海外旅行推進委員会 台湾ワーキンググループで模索し、台湾観光局の協力を受けて、日本人向けの合同天燈上げイベントを企画し販売していることについても言及しました。来月、台湾で開催されるこのイベントは、参加者の募集も順調で、10月21日と22日の両日で約1000名の参加が見込まれることを報告しました。さらに、西尾参与は日本政府のアウトバウンド促進に関する動きについて説明しました。観光庁が今年3月に策定した「アウトバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージ」では、台湾を含む24の国・地域を対象に、諸外国との連携強化、戦略的な取り組みの推進、安全な旅行環境整備や青少年交流促進を重要視していることを強調しました。一方、JATAは観光庁と共同で「今こそ海外!宣言」を発表し、観光庁の設定した出国日本人数の目標である令和元年度水準(約2,000万人)への回復を目指す取り組みを行っていることを強調し、このキャンペーンにおいても、台湾観光局からの積極的な協力を受けたことに感謝の意を表明しました。
 西尾参与は、「日台の緊密な連携を称賛し、これまでの成功が単なる一時的なものではなく、継続していくことを願う」と述べ、挨拶を締めくくりました。

 

 

 

JATA西尾忠男参与

相互交流の不均衡から脱却、双方がWin &Winとなるツーリズム産業の発展へ
 インバウンドについてはJTBグローバルマーケティング&トラベルの石田恒夫代表取締役社長執行役員が、訪日旅行マーケットの現状について言及しました。インバウンドは順調に回復している一方で、ツーリズム産業に深刻な人手不足が生じていることを指摘し、需給バランスの不均衡を解消する必要性を訴えました。石田社長は「この問題を解決するためには、ツーリズム産業において待遇を改善し、雇用を拡大していく必要がある」と話しました。さらに、日本の一部の観光地で発生しているオーバーツーリズムの問題に触れ、解決策の一環として地方への誘客が重要であると強調しました。その具体的な取り組みとして、“東京・金沢・京都をめぐる「レインボールート🄬」”、“瀬戸内海をめぐる「せとうちシーニックビュールート」”、“九州の食・文化・アクティビティを体験でできる「九州オーセンティックルート」”など、定番のゴールデンルートに変わる新たな観光ルートを台湾側に提案しました。石田社長は、2WAYツーリズムの重要性について訴え、「相互交流の不均衡から脱却し、双方がWin &Winになるツーリズム産業の発展」と「多くの交流をとおし日本と台湾の相互理解を一層深め、日本と台湾のツーリズム産業のサステナビリティを共に創造していきたい」と決意を表明しました。

 「日台観光サミット」は、台湾からの訪日旅行・日本からの訪台旅行双方の促進と相互交流人口の拡大を目標として、2008年に初めて台北市で開催されました。その後、日本と台湾で交互に開催され、本年の愛知県開催で14 回目を迎えました。来年は台湾 高雄市での開催が予定されています。継続的な取り組みにより日台の観光産業における協力と発展が一層強化されることが期待されます。

 

 

JTBグローバルマーケティング&トラベル石田恒夫代表取締役社長

JATA髙橋会長 愛知県の大村知事と「休み方改革」について懇談
 JATA髙橋会長と日本観光振興協会の山西会長は、日台観光サミット開催前に愛知県の大村知事を訪問し、観光需要の平準化にもつながることが期待される「休み方改革」について懇談しました。
 大村知事は、全国知事会 休み方改革プロジェクトチームのリーダーとして、「休み方改革」に向けた取り組みを推進しています。日本の産業全般を考えると、特に宿泊業や飲食業などのサービス業における生産性が欧米と比較して半分程度低いことに言及しました。この課題を解決するために、行政が率先して支援していく必要があるとの見解を示し、「休み方改革」の一環として取り組む、県内で実施される二つの施策について紹介しました。
 一つ目の施策は「あいち県⺠の⽇(11月27日)*1」を含む直前1週間(11⽉21⽇から27⽇まで)を「あいちウィーク」と定め、同期間中の1日を自由に学校の休みとする「県民の日学校ホリデー」の創設です。これにより11月23(木)勤労感謝の日と週末を組み合わせることで、3~4連休の取得が可能となります。
 二つ目の施策は、保護者等の休暇に合わせて、子どもたちが保護者等と一緒に学校外での“体験や学びの活動”を計画し、平日に実行する「ラ―ケーション*2」の導入です。今年度は9月以降に2日間、来年4月以降は3日間(年間)までの休暇を取得可能とする仕組みです。これらの施策は、準備が整った市町村(名古屋市を除く)から開始され、こどもの心身の健全な発達を促進すると同時に、保護者の休暇取得が促進され、休暇をとることによるリフレッシュ効果と十分な休息が、生産性向上へつながることが見込まれます。

 愛知県の大村知事は、これらの施策について全国知事会を通じて広めようとしており、既に39都道府県が取り組みを開始する意向を表明しています。今後、観光ツーリズム業界からの賛同が広がることが期待され、髙橋会長も、旅行需要を平日に分散させる助けとなるこの取り組みを支持しています。
*1令和4(2022)年に県政150周年を迎えたことを契機として制定
*2「ラーニング(学習)」と「バケーション(休暇)」をあわせた造語