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更新日:2024年01月30日
この度の石川県能登地方で発生した大地震で犠牲になられた方々にお悔やみ申し上げます。 被災地域の皆様に心からお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。
コロナ禍を経て反転攻勢を目指した旅行業界にとって、2023年は厳しい試練の続く年となりました。国内旅行と訪日旅行の回復が進む一方で、海外旅行は依然として低迷から抜け出せないまま、業界内でコンプライアンス事案も相次いで発生し、各社の経営責任と業界全体としての対応が問われています。直面する課題を克服し、ツーリズムの完全復活をどう実現していくのか。髙橋広行JATA会長に、2023年の回顧と2024年の展望を語っていただきました。
(2023年12月7日:JATA応接室にて取材 / 談)
2023年を回顧するとともに、2024年を展望していただけますか?
「外部の物差し」の必要性を訴える髙橋会長
髙橋 会長 : 4年越しとなったコロナ禍で様々な制約を受けてきた旅行業界にとって、2023年は反転攻勢を目指して取り組みを進めてきたわけですけれども、国内旅行と訪日旅行についてはほぼ回復の目処が立ったと言える状況となったのに対し、海外旅行は依然として低迷が続いており、完全な反転攻勢には至らなかったと認識しています。 ただ、国内旅行と訪日旅行が勢いを取り戻したということは、われわれにとっては大きな成果であり、明るい材料となっているのは間違いありません。それだけに、やはり、海外旅行をどう復活させていくかということが、2024年における最大の課題として持ち越されたと考えています。一方、反転攻勢を目指す中で、コンプライアンス事案が業界内で発生してしまったことを厳粛に受け止めて、旅行業界あるいは観光業界全体のコンプライアンスレベルを高めて いく動きを進めていく必要があります。もちろん、コンプライアンスは業界各社の経営責任において行っていただかなければならないことですが、 個々の企業で取り組んでもらうだけでなく、業界全体としても組織的に取り組まなければならない課題でもあるということが浮き彫りになりました。
2024年はコンプライアンス問題にもしっかりと向き合っていかなければなりません。もちろん、これまでもコンプライアンス事案が発生するたびに、再発防止のために様々な対策を講じてきましたが、それは業界の内部で「業界の物差し」に基づいて考えた対策でした。今回は業界の外部からの目線により「外部の物差し」で見ていただこうということで、第三者による委員会を設置して様々な助言をいただきながら、もう一度、業界全体のコンプライアンスレベルを高めていこうと考えています。それと同時に、業界における内部通報窓口も新たに設けることになりました。この内部通報窓口は、JATAの内部に設けるのではなく、業界の外部に設置します。既に個社にて通報制度を運用している会員会社もありますが、社外あるいは業界外にも通報制度を設けることで、再発防止を徹底していくという考え方です。
旅行マーケットの動向をみると、訪日インバウンドは10月に2019年レベルを回復しており、世界各国・地域における旅行ムーブメントは順調に動き出しているようです。
観光庁と共同で行った記者会見では、政府観光局の の代表やマスコットキャラクターも登壇。引き続き、 様々な関連団体と連携しながら、海外旅行の完全復 活に向けた活動を積極的に展開していく。
髙橋 会長 : 日本からのアウトバウンドとは、決定的に違うという印象を強く感じています。各国・地域からのアウトバウンドは、早急に回復してきており、既に「回復」というよりも通常レベルに戻っていると思います。それだけに、日本の海外旅行市場は、回復への動きが鈍いことを痛感せざるを得ません。その回復の鈍さについては、経済的な面で二つの大きな理由があるだろうと考えています。 一つは依然として続いている極端な円安傾向であり、もう一つは燃油サーチャージやホテル代の高騰によって旅行費用が極端に上昇してきていることです。 そうした経済的な理由とは別に、4年越しに及んだコロナ禍の間、海外旅行に出かけることが全く出来ずに、日本人の海外旅行への意欲といったものが間違いなく萎縮してきているのではないかと思います。 そうした状況も踏まえて、5月には観光庁と共同で「今こそ海外!宣言」を発出し、各国の航空会社や海外の観光関連団体とも連携して様々な活動を行っていますが、こうした取り組みはこれからも地道に続けていきたいと考えています。
先ほど申し上げた円安の問題や旅行費用の高騰といった外的な要因による問題は、われわれの力だけでコントロールできることではありませんから、 萎縮した海外旅行意欲を鼓舞してアウトバウンドの機運醸成を図る努力は行っていかなければなりません。
アウトバウンド市場の展望を具体的にお聞かせいただけますか?
髙橋 会長 : 個人の海外旅行については厳しい状況が続く一方で、海外への団体旅行は明るい兆しが見え始めています。団体旅行需要を分析すると、例えば、企業の周年事業として計画されていた海外への記念旅行や研修旅行などがコロナ禍によって延期を余儀なくされていたため、そうした需要が顕在化すると同時に、コロナ禍の間は実施できなかったインセンティブ旅行や職場旅行なども復活してきており、こうした団体需要の動きはかなり明るい材料といえるかと思います。 団体旅行の復活によって個人旅行の動きも刺激されて、アウトバウンド市場全体の浮上に繋がっていくような展開も進めていければと考えています。何れにしても、JATAにとって2024年における最大の課題は海外旅行の完全復活をどう実現していくかということであり、その実現を通じて海外・国内・訪日の三位一体によるツーリズムの完全復活を図っていかなければなりません。
2024年は日本人の海外旅行が自由化されてから60周年という節目の年でもあるわけですが、その60周年を業界内外にアピールすることでツーリズムの完全復活に向けた追い風としても期待できそうです。
「渡航自由化60周年」の意義を語る髙橋会長
髙橋 会長 : 日本で初めてのオリンピックだった東京五輪の開催された1964年に渡航自由化が実現してから60周年という節目を迎える2024年は、旅行業界にとっても大きな意義を持つものだろうと考えています。人間で言えば「還暦」に当たるわけですが、60年で生まれた年の干支に戻り「暦」が「還る」ことを意味する「還暦」は、第二の人生を迎えるという意味も込められているようです。 海外旅行が自由化されてから60年の間に日本からのアウトバウンド市場は大きく拡大し、世界各国との交流や相互理解に寄与してきただけでなく、日本の国際化にも少なからず貢献してきたと言えます。また、現在にいたるインバウンド市場の隆盛も、アウトバウンド市場の拡大を通じた日本発着の国際航空路線網の発達によってもたらされたものであることは間違いないと思います。 そうした双方向交流のバランスを維持しながら拡大していくことが将来にわたるアウトバウンド市場とインバウンド市場の発展には必要不可欠となるはずです。
渡航自由化からの60年が持つ意義を業界内外に発信してアウトバウンドの重要性を改めて認識していただきつつ、次の60年に向けてアウトバウンドをさらに拡充していく必要性と業界としての決意や覚悟を訴えていく機会にしていくことが出来ればとも思います。 また、そうしたアピールを実際の需要創出につなげていくことも旅行業界に求められることになるわけですが、具体的な取り組みの一つとして、日本と米国の二国間における双方向の観光交流の拡大を図るため、2024年を「日米観光交流年」と定めることが日米両国政府から発表されたのを受けて、日米間に存在する464の姉妹都市提携やスポーツツーリズムを通じた交流拡大に向けて、旅行会社としても積極的に参画していきたいと考えています。
ツーリズムの完全復活について、その時期的な見通しをどのように考えていらっしゃいますか?
髙橋 会長 : 国際航空運送協会(IATA)では、国際航空旅客全体の需要水準がコロナ禍前の水準に回復するのを2025年と予測していましたが、2024年中には、アウトバウンドをコロナ禍前の水準まで回復させる道筋をつけ、既に復活から通常レベルに戻りつつある国内旅行や訪日旅行に続き、海外・国内・訪日の三位一体によるツーリズムの完全復活に向け最大限の力を注いでまいります。
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