会報誌「じゃたこみ」 ツーリズムEXPOジャパン2024 開幕直前対談
俳優・山口智子さん × JATA会長・髙橋広行

更新日:2024年09月09日


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    お互いに知り合い、憧れ合うための旅     新しい旅のカタチを「体感」しよう

開催が間近に迫った「ツーリズムEXPOジャパン2024」 (TEJ)。東京ビッグサイトで9月26日 (木) からの29日 (日) まで4日間で、18万人の来場者を見込んでいます。今年度のスペシャル・サポーターに就任したのが世界各国を訪れ、「音」をテーマとした「LISTEN.」プロジェクトを始めとして自身の旅の体験を広く発信している俳優の山口智子さん。このたび髙橋会長との対談が行われ、旅への溢れる愛を語っていただきました。


   髙橋広行JATA会長 (ツーリズムEXPOジャパン2024実行委員長) と俳優の山口智子さん

いろんな旅のカタチを「体感」できる場所

「アイ ラブ トラベル」と山口さん

髙橋 : このたびはツーリズムEXPOジャパン2024のスペシャル・サポーター就任をご快諾いただきありがとうございます。取り組まれているプロジェクトについては後ほど詳しく伺いますが、本当に山口さんは、旅行に対して思い入れというか非常に愛が強いようですね。

山口 : アイ ラブ トラベルです (笑)。

髙橋 : 我々としては最強にして最高のサポーターを得た思いです。旅行業界も、すごくモチベーションがアップしています。

山口 : はい、心からのラブを広めまくりたいです。

髙橋 : 今回の開催には、コロナ禍3年間で完全にストップしていたツーリズムが復活した姿を国内外にしっかりアピールしたいという思いを込めています。海外からの出展がすごく増えていることが特徴で、「日本のお客様に来てもらいたい」という強いラブコールだと思っています。

山口 : ありがたいですね。

海外旅行の復活に邁進、と髙橋会長

髙橋 : スペシャル・サポーターとしてTEJへの参加について、どのように感じられますか。

山口 : コロナ禍で私達は多くを学びました。みんなが思うように自由に行き交えない社会がいかに苦しいか、悲しいかを実感できたことは、グッドチャンスでもあると思います。その学びを経て、今扉が開いたことに大きな意味があり、反省を元に新たな生き方へと舵を切り直すチャンスの時代です。今こそ心を新たにして、今までの旅の仕方や生き方の視点を変えて、旅をさらに面白く有意義なものに生まれ変わらせたいですね。
この世界の素晴らしさを知るために、私達は行き交い、知り合うべきで、尊敬し合い、憧れ合うべきだと思います。そのために「旅に出ましょう!」と私は叫び続けたいです。

髙橋 : 国内旅行はほぼコロナ前と同水準、訪日旅行はコロナ前を超える勢いで回復しています。残るは海外旅行で、コロナ前の2019年に比べると6割程度にとどまり、どう回復させるかは我々旅行業界にとって最大の課題です。

山口 : コロナ禍を経て、いろいろなライフスタイルの可能性も生まれて、旅に対する視点のバリエーションも増えたのではないでしょうか。

髙橋 : おっしゃるように、新しい旅のカタチが出てきています。今まで多かった観光地を巡って見て楽しむといった周遊型の旅行だけではなく、何かを体験するという。

山口 : 旅の醍醐味は、「体験」ですよね。

髙橋 : いかに精神的な充足感を得るかということで、例えば健康をテーマにしたヘルスツーリズム、スポーツを切り口にしたスポーツツーリズムなどがあります。日本ではまだ浸透していませんが、アドベンチャーツーリズムも山口さんに知っていただきたい新しい旅のカタチです。

山口 : ただ綺麗な景色を見て、写真の記録に残せばいいというメモリー的な旅だけでなく、心が感じて喜んで、ワクワクが育まれるような「体感」型の旅ですね。

髙橋 : はい。TEJはそういう新しい旅のカタチをアピールする場でもあるので、いろんな切り口のツーリズムを見ていただければありがたいですね。

若者の海外旅行離れをどう考える ?

髙橋 : 海外旅行が自由化されたのは1964年で、今年60周年を迎えました。

山口 : 私が生まれた年です。

髙橋 : それもご縁かもしれませんね。今、我々が一番問題意識を持っているのは、若い人が海外旅行に対して極めて消極的になっていることです。ビジネス面でも大きな課題ですが、海外に出て現地の景色を見て空気を吸う、現地の人と交流する体験を通じないと得られないことがあるじゃないですか。
しかし、海外留学する学生が減っていたり、コロナ禍で海外修学旅行が減るなど、諸外国と比べて今の日本の若者が海外に出る率は極めて低いです。海外を知らずして、国際社会で戦えるか、ということで日本の国際競争力にも関わってくる話なんです。

山口 : 旅はコミュニケーションを育む場ですからね。今は会社を辞める時も専門業者が代わりに手続きしてくれるそうですね。
思いをちゃんと伝える訓練もしないまま、対面の交流を極力避けて、携帯電話だけとコミュニケーションして育ったら、電子機器もない大自然の中や国際社会で、新たな出会いに全く適応できなくなってしまいますね。


「人生を教えていただいたと言えるくらい『旅』に感謝しています。皆さんに『旅』の感動の光を手渡していけたら」と山口さん

髙橋 : 今の話と大いに関係するんですが、日本人でパスポートを持っている人の割合は何%ぐらいだと思いますか。

山口 : 3割ぐらいでしょうか?

髙橋 : 17%です。ちなみに韓国は40%、台湾は60%、アメリカは50%以上です。JATAでもパスポートの取得サポートキャンペーンを一時行っていたのですが、パスポート保有率の低さと若者が海外に行かないことは、当然比例する話ですね。

山口 : 初めてパスポートを手にしたときの感動は忘れられません。旅への許可証はまさに、大人へのパスポート。子供の頃から早く海外に行ってみたいと待ちきれなかった。当時は世界を知りたくても、情報源は図書館とか書店とかテレビぐらいで、でもその逆境のおかげで、猛烈に世界への興味が膨らみました。

髙橋 : 今、インターネットにあらゆる海外情報が溢れているので、もう行った気分になってしまうのでしょうか。

山口 : 例えば、絵に描いたリンゴをただ眺めるのと、自然の恵みが詰まったリンゴをシャキッとかじって瑞々しさや香りや甘さを味わうこととは、天と地の差ですよね。たとえかじったリンゴがまだ未熟だったとしても、その酸っぱさや苦さも人生の大きな学びになる。ただ眺めているだけでは、生きる感動を生み出せない。

髙橋 : 若者が海外旅行に行かない理由は何かというあるアンケートの結果では、回答の上位3つを占めたのが旅行代金の高さ、治安への不安、そして言葉の問題でした。

山口 : 追い詰められないと、言葉ってなかなか身につかないですよね。でも、日本で楽に生きることに慣れすぎていると、これからの大きな変化の時代を乗り越えていけない。「こうあらねばならない」という小さな世界から一歩踏み出して、距離を置いて故郷を新たな視点で眺めてみると、日々の悩みもちっぽけなものに思えてくる。
異国の地で、こんな生き方もあるんだと学ぶことで、今までの思い込みから解き放たれて、人生がどんどん楽しくなってくる。旅はもちろん自分の身を守る責任を学ぶ場でもありますが、命あるものとして生き抜く術を学ぶ緊張感は、素晴らしいチャンスでもあると思います。

髙橋 : コロナ禍3年間、海外旅行に行けない状態が続いたので、改めて機運を高めないといけないと思うんですね。そのために我々旅行会社ができることは、お客様の琴線に触れるような魅力的な海外旅行商品を作ることで、TEJは海外旅行の奥深い魅力を再認識いただく非常に貴重な機会だと思っています。9月28日に出演いただくトークイベントでぜひ、山口さんの熱い気持ちを伝えていただきたいと思います。

山口 : もちろんです。私は「旅」に人生を教えていただいたと言えるくらい、「旅」に感謝しています。たくさんの感動やときめきをいただいた「ありがとう」の気持ちをこめて、皆さんに「旅」の素晴らしさを手渡していけたら幸せです。「観光」という字は「光」を「観る」ことですから。感動の光に出会うために旅に出ましょう!

髙橋 : 若い人たちに対して今一度、メッセージをいただけますか。

山口 : 知ったつもりになることと、本当に「知る」ことは全く違います。その地に立ち、風や匂いを感じて、その風土に育まれた水や食を味わって、人々と出会い心を交わし合う。世界は「体感」するべき輝きに満ち溢れています。一歩踏み出して、大きな世界と出会ってください!

音を通じて世界と出合う「LISTEN.」プロジェクト

音をテーマに世界体感「LISTEN.」

髙橋 : 山口さんが取り組まれているのが、音をテーマに世界を「体感」する映像ライブラリー「LISTEN.」 です。昨年、日本旅行作家協会の第2回兼高かおる賞を受賞され、JATAツアーグランプリで表彰式が行われました。まず、このプロジェクトを始めたきっかけを教えてください。

山口 : 心を開いて世界に耳を傾けたい。その願いを込めた「LISTEN.」です。説明や解説で知ったつもりになるのではなく、世界の素晴らしさを「体感」したい。体と心で感じることが「LISTEN.」のテーマです。
音楽には、言葉の壁を超えて、世界中のみんなが一瞬で心を一つにできる力があると思います。何語を喋っていようが、メロディやリズムの感動を共有できる。10年かけて世界を巡り、それぞれの風土に育まれた音楽の宝を、映像ライブラリーに収めてきました。

髙橋 : このプロジェクトを通じて、どんな気づきや学びがあったのでしょうか。

 

「体感する旅」が重要、と髙橋会長

山口 : その地の自然に育まれ、人の暮らしに磨かれて、幾世代も手渡されてきた、唯一無二の歌や演奏やダンスの美しさに惹かれます。歌や踊りは、水や食べ物と同じくらい、もしかしたらそれ以上に、生きていくための大きな力になることを知りました。逆境や苦難の歴史を背負った民族ほど、人々の心を打つ素晴らしい音楽文化を生み、悲しみを喜びに変えながら、強く誇り高く生き抜いてきたことを学びました。
じゃあ私はどんな音楽を生きる力にしてきたのだろう?と問いかけてみても、心の中はスカスカで… その心の空洞を埋めたくて、自分にとって生きる力となる音やリズムを求めて、世界に旅立たずにはいられなかった。魂のルーツに繋がる音を求めて旅した末に、「地球」という星が「故郷」と思えるようになりました。

髙橋 : 音楽という世界共通で価値観を共有できるテーマに焦点を当てて、いろんな国の人と交流するというのは、本当にツーリズムの原点という気がしました。音楽と旅を融合して体感する山口さんの「LISTEN.」プロジェクトは、ミュージック・ツーリズムだと私は思います。

山口 : 「体感」ツーリズムですね !

髙橋 : 体感する旅は、音楽以外にもいろんなテーマが考えられますね。人にはそれぞれニーズがあり、そのニーズに応える商品やサービスを提供していけば、我々旅行会社の存在価値はまだまだあるなと思っています。

山口 : 「体感」の旅には「時間」も大事ですよね。時間をかけることは、日本人が取り戻すべきテーマでもあると思います。そのために社会の仕組みや生活様式を見直すことが必要。一斉に休暇をとって大移動するのではなく、それぞれのペースとやり方で、いろいろな時期にお休みが取れるといいですよね。急げ急げの生産性第一主義から抜け出して、じっくり人生を味わうための大変革。

髙橋 : とはいえ休むことには経済効果もあるんですよ。お金を使いますから。

山口 : はい、休むことでまた仕事の効率も上がります。

髙橋 : おっしゃる通りです。日本も休みがきちんと取れて、心が豊かになれるような国にならないとだめですよね。「LISTEN.」プロジェクトで訪れた26カ国で、どこが印象的かという質問をしようと思いましたが、お話を伺っていると、もう地球全体が好きという感じですね。

山口 : いろんな個性があることが地球の素晴らしさ。単一じゃないからこそ「愛すべき地球」です。休み方も他国に学ぶべき。例えば酷暑の日中に休み、涼しい朝晩に集中して活動するくスペインのシエスタの習慣などは、今こそすぐ真似するべき!人生を豊かに楽しむ暮らしの知恵です。日本人は古より、世界のさまざまなライフスタイルを取り入れて、自分たち流に磨きをかけてきた民族でもあるわけですから。

世界を知ることは愛すること

髙橋 : 今後、「LISTEN.」プロジェクトはどのように進化していくのでしょうか。

山口 : あらゆる分野を学び極めたあのレオナルド・ダ・ヴィンチは、「知れば知るほど、世界への愛が深まる」と記しています。まさに、「知る」ことは愛への道です。世界をもっと愛していくために、まだまだ知らない故郷の地も訪れて、地球の宝でもある「LISTEN.」の映像を生かして、風土の個性を生かした祭りのようなものを企てたいなと思っています。

髙橋 : よく「旅の力って何?」と聞かれるんですが、心の豊かさをもたらす効果もあるし、現実的な話として経済を活性化するというのもあるし、旅行すると精神的にも肉体的にも健康になりますよね。

山口 : 身も心もリセットされ、力が湧いてくる。

髙橋 : 寿命がどんどん伸びていますが、旅というのは健康寿命を延ばす力になりますね。また、世界中でいろんなところで紛争や戦争が起こっていますが、旅には間違いなく平和をもたらす力もあります。旅の持つ力は極めて大きなものがあるので、地球市民が全員共有していかなきゃいけないなと思いますね。

山口 : 地球人同士、心を一つに結ぶための旅。お互いに知り合い、憧れ合うための旅。旅をして世界を知ることは、「地球」というふるさとの星への愛を育みます。これからは他の星々ともコミュニケーションし合う宇宙時代到来ですから、地球人としての意識で一歩踏み出し、宇宙に自慢できる地球のために、みんなで力を合わせていかないと。

髙橋 : ツーリズムもまさに地球が舞台ですから、宇宙人もインバウンドとして呼んでこないといけませんね (笑)。では最後に、TEJに来られる方へメッセージをいただきたいと思います。

山口 : ときめきや感動に出会う旅は学びの場であり、神様からの贈り物です。ちょっと勇気を出して一歩踏み出すことで、目の前の世界は果てしなく広がり出します。それぞれがときめく旅を見つけて、地球をもっと愛していきましょう。あなたが「知りたい」と願えば、世界はもっと素敵に変わると私は信じます !


対談を終えて :
「ときめく旅を見つけ、地球をもっと愛し、知りたいと願えば世界はもっと素敵に変わると信じます!」と山口さん

ツーリズムEXPOジャパン2024

9月28日(土)、山口智子さん登場

開催期間 : 2024年9月26日・27日 (業界日)    2024年9月28日・29日 (一般日) 
開催場所 : 東京ビッグサイト


俳優の山口智子さんがスペシャル・サポーターを務めるツーリズムEXPO ジャパン2024が、開催間近です !
山口さんは9月28日 (土曜・一般日)、会場Aステージにてトークイベントに登場されます。
ツーリズムEXPOジャパン2024は国内・海外および訪日旅行の振興を目的に47都道府県から、また世界中から旅の魅力をお届けする世界最大級の観光イベントです。旅行ビジネスをサポートするプログラムが展開される業界日と合わせて、週末の一般日にもぜひお越しください。


詳細はツーリズムEXPO JAPAN 2024 公式サイトで
https://www.t-expo.jp/biz/exhibit

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