会報誌「じゃたこみ」 ~旅の安心・安全を再認識~
「旅行安全マネジメントセミナー2024」実施

更新日:2024年06月13日


2024年6月4日(火)、「旅行安全マネジメントセミナー2024」を実施しました。
このセミナーは、コロナ禍を経て旅行需要は回復傾向にあり、それに伴い旅の安心・安全へのリスクも高まる中、改めてリスクマネジメント対応の重要性が問われていることを業界全体で再認識し意識を高めることを目的として行われました。
JATA本部8階会議室(リアル開催)とWEB(Zoom視聴)で同時開催され、当日は合計約300名近くの参加者が集まり、関心の高さが伺えました。

 

【セミナー内容】
1. 挨拶 安全の取り組みの大切さ 「安全のすすめ」の活用
 一般社団法人日本旅行業協会 理事・事務局長 池畑 孝治
2. 観光産業共通プラットフォームについて 自然災害への対応
 講師 : JATA国内旅行推進部 部長 野浪 健一
3. 「最近の国際情勢を踏まえた安全対策」
 講師 : 外務省領事局海外邦人安全課 課長 三角 崇人 様
4. 「旅行安全マネジメントのすすめ (観光庁編集)」~旅行会社の責任と役割 お客様を守り会社を守る~
 講師 : JATAアドバイザー 東洋大学国際観光学部 客員教授 越智 良典

 

1. 挨拶 安全の取り組みの大切さ 「安全のすすめ」の活用
  一般社団法人日本旅行業協会 理事・事務局長 池畑 孝治

JATA池畑理事・事務局長

冒頭、JATA池畑理事・事務局長より挨拶がありました。池畑理事は「旅行需要は回復傾向にあるが、それは同時にリスクも高くなっていることを意味している。しかし、重大事故のリスクが高まるにもかかわらず、コロナ禍においてリスクマネジメントの経験者は減っており、対応が懸念されている。このセミナーで改めて危機発生時のリスクマネジメントについて事例を交え学ぶことで、会員会社の安心安全への取り組み意識を高めていただきたい」と危機管理の重要性を述べました。
また、「旅の安全の日」に合わせた模擬訓練についても触れ、「7月1日~7日の1週間を『旅の安全の日Week』とし模擬訓練を実施するので積極的なエントリーをお願いしたい。模擬訓練により、緊急連絡網や、危機管理マニュアルが実際に機能しているか、課題も再確認ができる。夏旅シーズンを迎え旅行需要が大きくなるこの タイミングで、今一度緊急時体制を確認・点検を行っていただきたい」と参加への呼び掛けをしました。

 

2. 観光産業共通プラットフォームについて 自然災害への対応
  講師 : JATA国内旅行推進部 部長 野浪 健一

JATA国内旅行推進部・野浪部長

次に、JATA国内旅行推進部・野浪部長より「観光産業共通プラットフォーム」について、設立の経緯、プラットフォームの機能・運用状況の説明をしました。
野波部長は「宿泊施設と旅行会社の間で双方非効率になっている業務に焦点を当て、業務を一元化・プラットフォーム化することにより業界全体の生産性向上を進め、顕在化している人手不足課題への対応や、品質向上、高付加価値化など健全な競争に経営資源をシフトできること目的としたのが設立の経緯。プラットフォームには宿泊施設の基本情報や営業情報の他に、自然災害発生時の情報集約の機能もある。災害発生時にプラットフォームにその被害状況(施設状況、人的状況、インフラ状況など)を入力することで旅行会社に統一・集約された情報を提供することができ、初動対応がスムーズにできる仕組みが整っているのが特徴。2023年12月に運用開始してから2024年5月28日現在、宿泊事業者6091施設、旅行会社93社、自治体等15組織となっている」とし、そして、今後については、「登録宿泊施設がエリア全体を網羅できていない、登録はしたが、その後の活用がはかれていない、施設により対応マニュアル(多言語対応を含む)や訓練の実施に差があるのが課題。観光産業共通プラットフォームの意義・必要性を周知し参加促進するとともに、加入者への具体的対応のフォローや定期的な訓練の実施を行い、いざという時に仕組みが適切に機能するための準備が必要」と述べました。

 

3. 「最近の国際情勢を踏まえた安全対策」
   講師 : 外務省領事局海外邦人安全課 課長 三角 崇人 様

外務省領事局海外邦人安全課 課長
三角 崇人 様

続いて、外務省領事局海外邦人安全課 課長 三角 崇人 様より「最近の国際情勢を踏まえた安全対策」について講演が行われました。
はじめに、近年の海外での紛争や災害・イベントなどの事例や危険情報(海外安全情報)の危険レベルを説明。
アフリカや中東を中心に危険レベルが高いことに加え、最近では観光地として知られるエリア、ニューカレドニアでの騒乱や台湾東部沖地震などでも対応を行った事例をあげられました。
その中で「在留者や長期滞在者と比べ、観光で訪れる短期滞在者についてはコンタクトが難しく『たびレジ』の登録が非常に重要であることを旅行業界・旅行会社より旅行者へ改めて伝えて欲しい。『たびレジ』は旅行中現地で最新情報をメールで受信できたり、万が一事件・事故に巻き込まれた場合でも素早い支援につなげることができるツール。そして、その『たびレジ』が現地で十分に活用できるよう、海外旅行を自分事として意識しメールの受信設定や登録アドレス等留意しながら入力をお願いしたい。そして、海外旅行の際は日本国外にいることを忘れず、一定のリスクへの備えをしながら楽しい旅にしていただきたい」と要望されました。
そして最後に「外務省ではホームページで海外に関するデータ紹介や音声プラットフォーム『Voicy』など様々な方法で情報発信をし、安全な海外滞在をサポートしているのでこちらも活用して欲しい」と述べられました。

 

4. 「旅行安全マネジメントのすすめ (観光庁編集)」~旅行会社の責任と役割 お客様を守り会社を守る~
   講師 : JATAアドバイザー 東洋大学国際観光学部 客員教授 越智 良典

JATAアドバイザー
東洋大学国際観光学部 客員教授
越智 良典氏

最後に、JATAアドバイザー 東洋大学国際観光学部 客員教授 越智 良典氏が「『旅行安全マネジメントのすすめ (観光庁編集)』~旅行会社の責任と役割 お客様を守り会社を守る~」と題し、講演をされました。
越智氏は自身が編集しこの度改定もされた冊子「旅行安全マネジメントのすすめ」に基づきながら説明。「事故・事件のリスクは常にあり得るが『起こさない、備える、迅速に対応する』と意識し対応することが重要」とし、その上で、どこまで対応すればよいか、ポイントについて以下6つをあげられました。
①安全な旅行サービス提供機関を選定する義務(最新情報に基づく安全を配慮した企画)
②安全な旅行行程を設定する義務
③安全調査の実施
④ 安全に関する説明の実施
⑤添乗員による旅行者の安全を確保するための適切な措置
⑥緊急時対応(危険回避義務)
そして実際に取り組むに当たっては、7月1日「旅の安全の日」に合わせた模擬訓練への積極的参加やパンフレット「旅行安全マネジメントのための『JATA重大事故支援システム』」も有効なため是非活用して欲しいと述べて締めくくられました。

 

尚、当セミナーについては当日の資料並びにアーカイブ動画も公開しております。
是非ご活用ください。
「旅行安全マネジメントセミナー2024」アーカイブは こちら