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更新日:2024年07月29日
法務・コンプライアンス室 (監修 弁護士 三浦雅生)
旅行者が募集型企画旅行を申し込むには、旅行業者に「申込書と申込金を提出」するか、又は通信契約の場合はクレジットカードの「会員番号等を通知」しなければなりません(標準旅行業約款募集型企画旅行の部第5条)。 前者の場合は旅行業者が「申込金を受理した」時、後者の通信契約の場合は旅行業者による「契約の締結を承諾する旨の通知が旅行者に到達した」時に旅行契約が成立します(同約款第8条)。 民法では、申込みの意思表示があって、これに対して相手方が承諾した時に契約が成立すると定められています(民法第522条)。 旅行契約では一旦旅行契約が成立すると旅行業者にはツアー実施の義務、旅行者には旅行代金や取消料の支払義務が生じてきますので、いつ「申込み」が行われたのか、そしていつ「承諾」が行われたのかを、より明確にするために、消費者が痛みを感じる時(申込金の支払時点又はカード決済される会員番号等の通知(同約款第6条)を前提)を成立の基準にしたものです。
店頭でのクレジットカード利用
「旅行者が営業所のカウンターでクレジットカードを使って申込金を支払う場合の契約の成立はいつになるのでしょうか」・・・こんな質問を受けることがありますが、頭の体操としては面白いのですが、あまり意味のある考察にはならないかも知れません。 旅行者は、クレジットカードという支払手段を用いて店頭で「申込金を提出」したのであり(「申込金を提出」する方法について約款に特に定めはありません)、カード決済の処理を行った時点を以て旅行業者が「申込金を受理した」のだと整理すれば、約款の規定に沿った措置が為されているといえます。 この場合、電話やインターネット等の「通信手段による申込み」(同約款第2条第3項)がありませんので、約款上の通信契約の定義には該当しないと解釈されますが、クレジットカードが使われているので通信契約に“寄せて”考えたとしても、旅行者はクレジットカードの「会員番号の通知(提示)」をしていますし、旅行業者もカードの決済処理を行うことによって「契約の締結を承諾」したことになるわけですので、契約成立の有無が議論になることはないと思われます。
電子マネーによる決済
それでは、いわゆる電子マネーによる申込金の決済の場合はどうでしょうか。あらかじめチャージした残高から支払われる場合は、ペイペイ~♪とか、わお~ん♪という決済音が鳴り決済が完了した時点を以て、旅行者が「申込金を提出」し、旅行業者が「申込金を受理した」と整理すれば、敢えて通信契約の定義に寄せる必要もないと思います。 残高がない場合(後払い型電子マネー)でも、ペイペイ~♪と決済が完了した時点を以て、電子マネーによる支払システムによる申込金等の決済は約束されており決済自体は有効ですから、クレジットカードと同じように考えて良いかと思われます。 いずれにしても契約の成否が疑われる事態になることは(多分)無いと思われますが、それでも、なんだか落ち着かないという慎重派の人は、取引条件説明書面に「店頭において電子マネーで決済する場合は決済が完了したことを告げる音が鳴ったり、完了の表示がされた時点で契約が成立したものとする」旨を記載しておけばトラブルの芽を摘んでおけるのではないでしょうか。
担当 法務・コンプライアンス室 中島 一則
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