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更新日:2023年12月22日
旅行市場復活に向けて現状と展望を説明 JATA記者懇談会にメディア23社26人が出席
日本旅行業協会(JATA)は7月7日、東京・霞が関の全日通霞が関ビルでJATA記者懇談会を開催しました。水際対策の緩和が進み、訪日外国人旅行者の受け入れが再開されるなど、旅行市場復活に向けて明るい兆しも見えてきた中、記者懇談会には新聞やテレビなど一般媒体と業界紙誌の23社26人が出席し、旅行業界の現状と展望への高い関心をうかがわせました。
「協調と共創をさらに推進(髙橋 会長)」
公的支援の継続が何よりも重要 JATAの髙橋広行会長は、訪日旅行と海外旅行の再開や全国旅行支援の実施への期待など、旅行業界をめぐる明るい話題が増えてきているものの、旅行会社各社による売上額ベースで見た場合、コロナ禍前と比べて3~4割程度にとどまっており、「コロナ禍前の水準を上回るまでに回復するのは2025年くらいになると予測されている」と見通しについて説明しました。 一方で、政府が観光を成長戦略の柱に位置付けるなど「これからの日本経済を支える基幹産業として成長していかなければいけない」と指摘。地域経済を支える観光事業者の多くが、国内・海外・訪日の各旅行分野で特定のマーケットに強みを持つ中小企業によって構成されており、「こうした観光インフラを維持していくためには、早期に国内旅行需要喚起策である全国旅行支援の開始すると同時に、それぞれのマーケットが正常化して各事業者の体力が一定レベルまで回復するまでの間、全国旅行支援とともに雇用調整助成金などの公的支援を継続することが何よりも重要だ」と強調し、「国にも強く訴えていく」と話しました。
「旅行の高付加価値化」を推進 さらに、髙橋会長は“観光の復活・再生”を実現するための大きな鍵のひとつとして「水際対策のさらなる緩和」を挙げ、「G7各国並みの円滑な入国」が可能となるように「ワクチン接種やPCR検査、ビザの取得条件などの早期実施」を訴えました。 世界経済フォーラムの観光競争力ランキングで世界第一位となったことにも言及し、「日本への注目度が高まっている中で、世界からの期待に応えるためにも、ワクチン接種・PCR検査・ビザ取得条件という三つの壁を取り除いて“世界に開かれた日本”を実現しなければ、期待を裏切ることにもなりかねない」と話しました。 髙橋会長は、「観光競争力ランキングで世界のトップと評価された日本には、歴史・文化・食をはじめ、独自の産業などの豊富な観光素材があり、こうした素材をフルに活用すれば、JATAが目指す『旅行の高付加価値化』を進めていく余地は十分にある」と強調しました。
日本のツーリズムを世界に発信 また、髙橋会長は、旅行業界自らが取り組む課題として「事業活動の基本であるコンプライアンスが最も重要」と指摘し、昨年複数のコンプライアンス事案が発生したことを受けて、JATAが経営者向けセミナーの開催やコンプライアンス手引書の発行、様々な研修プログラムの実施などを通じて、コンプライアンスの向上に努めてきていることについて言及、 さらに、“旅行業の再生”に向けて「旅行ビジネスを極める深掘りや新たなビジネス領域への進出という両面における取り組みの強化」を図り、髙橋会長自らが就任以来訴えてきている「協調と共創」を推進する必要性を訴えました。 髙橋会長は、今年9月に東京で4年ぶりに開催される“ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2022”について、「日本の観光復活を内外に広くアピールするイベント」と位置づけ、「新しい時代へのチャレンジ、リスタートをテーマに、リアルとバーチャルの融合によって発信力の拡大を図る」と説明。「観光による気候変動への挑戦」を掲げるTEJ大臣会合を通じて、「これからの日本のツーリズムのあり方を世界に向けて発信する」と語り、TEJ実行委員長としての決意を表明しました。
「魅力あふれる旅行商品を(原 副会長)」
ネットの時代に高まる存在意義 旅行業の高付加価値化について説明した原優二副会長は、「旅行業においてもオンライントラベルエージェント(OTA)やインターネットでのEコマースが大きな比率を占めるようになっている」という現状を指摘した上で、「フルペンション、フルパッケージ、添乗員付きバスツアーといった観光・体験・食事・宿泊・交通などの全てを旅行会社が演出する募集型企画旅行(パッケージツアー)は、個人では手の届かない魅力あふれる世界の商材を旅行商品に取り込むことで、付加価値の範囲が広がる」と語り、「ネットの時代だからこそ、旅行会社の存在意義が高まってきている」と強調しています。 原副会長は、「コロナ禍の期間を通じて、これまで海外旅行を主に取り扱ってきた旅行会社の間でも、国内旅行に取り組むケースが増えてきており、国内旅行は企画担当者にとっては素材とテーマの宝庫であり、いくらでも深掘りができる」と説明。「単に料金が高いというようなことではなく、日本人が日本の文化などを深掘りしていくことで、今までのツアーとは視点を変えて、新しい観光のあり方を提示していくことができる」という意義について言及し、「世界だけでなく日本にも、従来のパッケージツアーでは取り扱いにリスクが伴う素材も数多く存在しており、そういう素材の商品化を可能にするような方向を探っていきたい」と話しました。
「感染症対策と経済活性化を両立(小谷野 副会長)」
全国旅行支援の早期実施に期待 国内旅行について説明した小谷野悦光副会長は、国内でこれまで実施されてきたGoToトラベル事業や県民割、ブロック割などの地域観光事業支援策に言及した上で、早期実施が期待される全国旅行支援に向けて「交通事業者や宿泊事業者など裾野の広い観光産業をリードする旅行業界として、感染症対策と経済活性化の両立を図る役割を担っていきたい」と話しました。 JATAでは、ツーリズム産業の連携による国内旅行需要喚起策として「笑う旅には福来る」キャンペーンも展開してきており、各省庁が取り組むテーマ別観光情報や地方自治体・DMOなどが取り組む旅行者向けキャンペーンなども紹介するホームページを開設。小谷野副会長は、ツーリズム産業全体でのプラットフォームとして旅行需要喚起と地域活性化を図るとともに、旅行者への有益な情報を提供するポータルサイトとしての機能充実も目指していく」と説明しました。 また、小谷野副会長は、訪日インバウンドの本格的な再開に向けて、「査証免除措置一停止の解除」「1日当たり入国者数制限の緩和」「出国72時間前の陰性証明撤廃」などが訪日全面再開への課題を示し、「2025年の大阪・関西万博や2026年のワールドマスターズゲームなども控える中で、様々な課題を克服しながら、政府が堅持している2030年に6000万人という目標の達成に向けて、日本観光の品質も高めていく」考えを強調しています。 JATAでは、“ポストコロナ”に向けて訪日外国人旅行者によるサステナブルツーリズム推進への期待が高いことを踏まえ、ツアーオペレーター品質認証制度(TQJ)でもSDGsへの取り組みを加重する方針で、2023年から認定・更新規準の項目として追加する予定です。
「海外旅行の機運醸成を(酒井 副会長)」
海外旅行再開プロジェクト始動 海外旅行について説明した酒井淳副会長によると、JATAによるハワイや韓国への視察団の派遣に続いて、募集型企画旅行の販売が再開され、6月以降は募集型企画旅行を実施する旅行会社も増えてきているのに加え、受注型企画旅行も今春から徐々に動き始めています。 JATAでは、欧米を中心に国際往来が急速に回復し、日本でも水際規制の緩和が進んできている中、「JATA海外旅行再開プロジェクト『海外旅行再開宣言!』」を開始。キャンペーンがスタートした7月15日には、東京や大阪、名古屋など全国8カ所で、アウトバウンド促進協議会の会員旅行会社や航空会社、空港会社、観光局の関係者が、それぞれのPR素材やキャンペーン特性うちわを約3万人に配布し、海外旅行再開を一般消費者にアピールしました。 酒井副会長はプロジェクトの活動を通じて、「旅行会社が海外旅行販売を再開する」「海外旅行の安心・安全な環境は整っている」といったメッセージを広く訴求し、「海外旅行を待ち望んでいるお客様の背中を押し、ウイズコロナ・アフターコロナにおいても、多くの方々に海外旅行を楽しんでいただけるよう機運醸成を図っていく」と意欲を示しました。
「本業以外でも社会に貢献(坂元 委員長)」
“JATA SDGsアワード”を新設 JATA社会貢献委員会の坂元隆委員長は、JATAによる社会貢献活動のうち、被災地復興支援活動と新設される“JATA SDGsアワード”について説明しました。 坂元委員長は、自然災害の被災地に向けた義援金募集や会員会社が参加するボランティア活動、観光による地域振興を目指した実地踏査などの活動を行っていることを紹介し、「本業である旅行ビジネスを通じた社会への貢献だけでなく、JATAとして世の中のために役立つことを意識的に行っていきたいと考えている」と強調。 JATAでは、2014年度から2020年度までの7年間にわたり実施した東北復興支援活動「JATAの道プロジェクト」をはじめ、熊本地震被災地でのボランティア活動(2016年5月)、令和2年7月豪雨の被災地域でのボランティア活動(2020年7月)などの活動を行ってきているほか、首里城復興支援金(2019年)、トンガ噴火災害義援金(2022年)、ウクライナ人道危機支援金(2022年)といった義援金・支援金活動も行っています。 また、サステナブルツーリズム推進の一環として、JATA会員会社のSDGs達成に資する優れた取り組みを表彰する制度として、「JATA SDGsアワード」を新設し、持続可能な社会の実現に向けたサステナブルな旅行商品やコンテンツの開発、SDGsを意識した取り組みの拡大を図ります。今年4月から来年3月までを対象期間として、社会・人権部門、経済・産業部門、地球環境部門、共創部門などで表彰を行う予定です。
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