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更新日:2024年05月21日
法務・コンプライアンス室(監修 : 弁護士 三浦雅生)
今回は2022年6月1日に施行された「改正公益通報者保護法」を取り上げます。
公益通報者保護法とは
公益通報者保護法は、その名のとおり「公益通報者を保護する法律」です。「公益通報」とは、事業者による特定の法律に違反する犯罪行為や過料の対象となる行為等(通報対象事実)を従業員・役員、退職者(退職後1年以内の従業員)がしかるべき機関に通報することをいいます。例えば、ABC旅行社に勤務する田中さんが自社の不正行為を、不正の目的(私利私欲、私怨、誹謗中傷の目的)でなく、ABC旅行社の内部通報窓口や、外部の行政機関、報道機関等に通報することですが、一方で田中さんには、通報したことを理由としてABC旅行社から解雇、降格等の不利益な取り扱いを受けるおそれがあります。 そこで、解雇の無効や降格等の不利益を禁止し、田中さん(公益通報者)を保護するとともに、不正に対する事業者内部での自浄作用や外部からの圧力によって社会の健全性を確保しようとするもので、2006年に施行された法律です。しかしながら、事業者が公益通報に適切に対応しない事案や公益通報者の保護が図られていない事案の発生を受けて今回の改正に至りました。
内部公益通報対応体制の整備が必要に
改正の重要なポイントは、常時雇用する従業員数301名以上の事業者に対して、①「公益通報対応業務従事者を定める義務(第11条第1項)」と、②「公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、その他の必要な措置をとる義務(同条第2項)」が導入されたことです(300名以下の事業者については努力義務)(同条第3項)。 ①の「公益通報対応業務従事者を定める義務」とは、公益通報の受付、調査是正措置に関する業務(公益通報対象業務)に従事する者を定める義務です。また、公益通報者を保護するため、この業務に従事する者(公益通報対応業務従事者)に対し、通報者を特定させる情報の守秘義務を負わせ、(第12条)、この守秘義務に違反した場合には刑事罰の対象としました(従事者であった者に対しても適用されます。)。 ②の「公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとる義務」とは、通報窓口の設定・調査・是正措置・通報を理由とした不利益取扱いの防止・通報者に関する情報漏洩の防止・内部規定を整備する義務(内部公益通報対応体制整備義務)をいいます。
通報窓口の設置を
担当 : 福嶋 重夫
JATAでは、1月に「旅行業界におけるコンプライアンスへの取り組みの手引き」を作成しました(6月に改訂)。この手引きでは、行動規範(役員・従業員一人ひとりが日常業務において取り組むべき指針)を規定することや、内部通報窓口を設置することなどに言及しています。この内部通報窓口では、行動規範・コンプライアンスに違反する行為やその恐れがある行為全般を対象とした通報窓口を想定しており、公益通報のみに限定していません。これは人権や職場環境など幅広い通報も受けることで私たち旅行業者のコンプライアンス体制の実効性を高めるためです。従業員数にかかわらず窓口の設置が求められます。
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