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更新日:2023年12月22日
法務・コンプライアンス室
(監修 弁護士 三浦雅生)
従来からある小中学生対象の夏休みのキャンプ等に加えて、近年はワーケーションや定住、観光誘致等を目的として自治体が主体的にツアーを行うことがあります。旅行業登録のない自治体や、委託を受けた民間事業者がツアーを企画・実施、募集、代金収受することに問題はないのでしょうか。また、旅行業者がツアーの全部または一部の手配、運営を依頼された場合にはどのように対応すればよいでしょうか。
旅行業とは
旅行業法では旅行業を「報酬を得て」「運送又は宿泊などのサービスを手配する行為を行う」「事業」であると定義しており、旅行業を営むには行政庁の行う登録を受けることで取引の公正維持、旅行の安全確保、旅行者の利便の増進を図っています。
「旅行業に該当しない場合」とは
それでは自治体等が関与するツアーと旅行業との関係を考えてみましょう。観光庁が平成29年7月28日に発出した「自治体が関与するツアー実施に係る旅行業法上の取扱いについて(通知)(観観産第173号)」によると、「自治体が実質的にツアーの企画・運営に関与していること」に加えて「営利性、事業性がないものであれば、旅行業法の適用がないと解されます」としてはいるものの、一方で①参加者から徴収する金員では収支を償うことができないこと、②日常的に反復継続するものでないこと、③不特定多数の者に募集を行わないこと、が営利性、事業性がないことの裏付けとして、当然に求められると釘を刺しています。
旅行業務にする
そこで、自治体からツアーの相談があった際には、まず自治体の行為が「旅行業」に該当するのか否かを上記①~③に沿って検討します。旅行業に該当するか、その恐れがあるものは旅行業者が企画実施する募集型企画旅行契約としないと、自治体が旅行業の無登録営業を行い、旅行業者はその無登録営業を幇助(ほうじょ)しているとされる危険性があります。自治体の行為が旅行業に該当しないのであれば、自治体自らが参加者募集や代金収受を行うことは可能ですし、旅行業者は例えば貸切バスや宿泊の手配などを自治体から受注型企画旅行契約や手配旅行契約として引き受けることもできます。しかしながら、同通知は①旅行の企画・募集の段階から責任をもって遂行できる責任者を置くこと②責任者は催行しようとする旅行に関する法令について確実な知識を持つこと③責任者が旅程が安全面において問題なく、かつ旅行目的を達成していると判断する能力を有すること④旅行中に連絡がとれる責任者を置くこと⑤事故発生時の損害賠償に備えて損害賠償責任保険加入等の措置がとられていることの5点を留意事項として定めています。これは法的な義務ではありませんが、実務上、企画旅行の催行に準じた措置であり、自治体の担当者がこれらの措置を講じることはハードルが高いものと思われます。「旅行業者による募集型企画旅行としませんか」と自治体に提案をすることも一つの方法ではないでしょうか。
担当:法務・コンプライアンス室 五十嵐 秀樹
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