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更新日:2024年05月21日
法務・コンプライアンス室(監修 : 弁護士 三浦雅生)
Q.「募集型企画旅行で、航空会社、宿泊施設の違約料等が標準旅行業約款の取消料よりも厳しいが、旅行条件書にその旨を書いておけば旅行業約款の定めを越えた取消料を収受してもいいですね?」
このような質問に対し、かつてなら「ダメですよ」と回答していましたが、昨今では、JATA・ANTAで作成した個別認可約款案を活用して対応ができる場合があります。
標準旅行業約款の取消料
標準旅行業約款とは、観光庁長官及び消費者庁長官が定めて公示したものです。旅行業者が標準旅行業約款と同一の内容を自社の旅行業約款として定めれば観光庁長官の認可を受けたものとみなされて個別に旅行業約款の認可を受けることは不要なため、多くの旅行業者が標準旅行業約款の内容を自社の旅行業約款とする例が続いてきました。 そもそも企画旅行契約の取消料とは旅行者の解除権留保の対価であり、旅行者からの契約解除に伴う賠償額の予定(民法第420条)を意味します。複数の旅行サービス提供機関の利用料金の内訳を明示しない包括料金とした旅行代金で販売し、旅行者の都合による契約解除の際も解除の時期毎に定めた定額の取消料とし、実際の違約料等の実額による精算をしないのが企画旅行契約の特徴です。確かに各旅行サービス提供機関の違約料等の規定が厳しいときは標準旅行業約款の取消料規定でそれら違約料等を賄えない場合がある一方で、違約料等を支払ってもなお余裕がある場合もあります。 このように、取消料は企画旅行を実施する旅行業者が締結する多数の企画旅行契約を類型的に考察した場合に、旅行者からの契約解除によって旅行業者に生ずる損害額の平均値であり、個別のツアーごとに違約料等を賄える・賄えないとして論じるものではありません。
個別認可約款案での対応
JATA・ANTAでは、標準旅行業約款にはない規定について、個別の認可約款用の書式(個別認可約款案)を作成し、会員の皆様に活用いただいています。これら個別認可約款案は現在7つの書式があり、それぞれ通称を付けています(詳細はこちら(会員・旅行業者向けサイト))。 例えば、国内募集型企画旅行において、ある航空会社の個人包括旅行運賃を利用した航空券の手配をした場合に、搭乗予定日の330日前からの取消しには違約料等(正式には「取消手数料」)を旅行業者は航空会社に支払わなければなりません。そこで、「国内募集型IIT約款」(通称)では、旅行開始日の21日前より前でも当該航空券の違約料等を企画旅行の取消料として設定することを可能としています。これは、標準旅行業約款では賄えない違約料等は旅行者にご負担いただこうとの考え方を約款案としたものです。とはいえ、取消料は、旅行業者が実際に生じる平均的な損害の賠償を受けることができれば足りるもので、それ以上の賠償を求めるものではありません。
担当:法務・コンプライアンス室杉原賢二
魅力ある旅行サービス提供機関の違約料等規定は、今後益々厳しさを増していくでしょう。“買取り”のような旅行サービスは企画旅行契約に含めず別途に手配旅行契約などで引き受け、違約料等の実額を精算することも一法ではないでしょうか。
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