会報誌「じゃたこみ」 【消費者相談室】苦情事例に学ぶ (90)
国際航空券をネット購入後、受託手荷物がすべて有料と判明

更新日:2023年12月22日


監修:弁護士 三浦雅生

 

国際航空券をネット購入後、受託手荷物がすべて有料と判明。
LCCではなく、FSCなのに。
 新型コロナの位置づけ変更が周知され、海外旅行に出かけようと国際航空券を購入する人も増えてきたのは望ましいことです。そんな中、続けざまに、別々の路線の航空券について寄せられた相談は、FSCなのに、「受託手荷物がゼロ」なんて、ありえない!というものです。

欧米行のFSC航空券なのに、受託手荷物ゼロなんて!
 国際航空券をネット購入した。その際、受託手荷物代は含まれていない等の案内の記載はなく、購入確定の際、「荷物の預け入れに関して追加額が請求される場合がある」という内容の案内だけはあった。Eチケットが送られてきて、「受託手荷物はゼロ」という表示があって、初めて受託手荷物代金は含まれておらず、すべて有料と気づいた。欧米行きの航空便利用者で、機内持ち込み手荷物だけで移動する人は皆無のはず。LCCなら納得できるが、自分が購入したのは、FSC,いわゆるナショナルフラッグキャリア。荷物代として別途8万円程かかった。購入前に「機内持ち込み手荷物のみ含まれ、受託手荷物はすべて有料」と、詳細案内がネットで表示されるべきだ。

受託手荷物情報は「旅行者が通常必要とするもの」
 今までの常識では、航空運賃には一定量、たとえばYクラスでも23Kg程度の受託手荷物の料金も含まれていて、無料と考えられていました。LCCの台頭、コロナ禍を経ての競争環境の変化、SDGsの社会の中、LCC以外でも受託手荷物が1kgでもすべて有料となるケースが珍しくなくなってきました。常識は変わりつつありますが、一般的なお客様はそういう事情をご存じありません。手配旅行契約上、信義則や善管注意義務の配慮が必要です。とはいえ、航空会社1社のみの単純往復ならシンプルですが、複数の航空会社を乗り継ぐ周遊であればどの航空会社の手荷物ルールが適用になるかはIATA規則および米国カナダ等の法令により決定します。また航空券の予約クラスによっても、受託手荷物の条件はあまりにも複雑に細分化されており、航空券をネット予約して料金検索の際に当該航空券の手荷物条件・追加運賃を画面表示させるのは、きわめて困難、実質的に不可能な実情があります。「個別に航空会社に問い合わせをしてください」と注意書きをしたところで、他社便乗り継ぎを含む場合は航空会社も即答できないと思われ、善管注意義務の範疇を超えているともいえます。

 手配旅行契約では、航空券を予約・発券しお客様にお渡しした時点で旅行業者の債務は終了しますが、そもそも契約前に受託手荷物の条件(無料で何kgまで預けられるか)の表示・案内は旅行業者の義務なのでしょうか?
    旅行業法第12条の4には、(取引条件の説明)として、「旅行業者等は、旅行者と企画旅行契約、手配旅行契約その他旅行業務に関し契約を締結しようとするときは、旅行者が依頼しようとする旅行業務の内容を確認した上、(中略)その取引の条件について旅行者に説明しなければならない」とあり、2項には「旅行者に対し、旅行者が提供を受けることができる旅行に関するサービスの内容」を記載した書面を交付しなければならない」とあります。

 「旅行業者等が旅行者と締結する契約等に関する規則」(以下「契約規則」)第5条2号ハでは、(書面の記載事項)として、同3条1のホ(取引条件の説明)と同項目の「旅行者が対価によって提供を受けることができる旅行に関するサービスの内容」、同3条1のト「対価に含まれていない旅行に関する経費であって旅行者が通常必要とするもの」とあります。具体的に、受託手荷物の無料許容重量、追加料金等の事前の情報提供が含まれているかまでは記載はありませんが、少なくとも「旅行者が通常必要とするもの」と捉えるのは不自然ではないと考えられ、対価(航空運賃)に含まれている・いないの明示は必要で、業法および契約規則に照らせば、手配旅行契約であっても表示の仕方を是正する必要があるかもしれません。さらに苦情防止の観点からも、消費者にとってデメリットとなる情報は契約前に適切に情報提供する必要があります。最低限、受託手荷物有料の事例が増えていること、契約成立前に航空会社に個別に確認することを勧めることを契約前のサイトの画面上に目立つデザイン、大きさで表示させ、注意喚起することが望ましいでしょう。

担当:鈴木 宏治