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更新日:2023年12月22日
業界全体でコンプライアンスレベルの向上へ 海外旅行復活に向け官民一体による取り組み推進
「2023年度(令和5年度) 第67回定時総会会場」
JATAは6月22日、東京・大手町の経団連会館で第67回定時総会を開催し、2022年度事業報告と収支決算報告、役員選任が承認されたほか、2023年度事業計画などについて報告が行われました。総会では、JATAの信用を失墜するようなコンプライアンス問題の発生が続いたのを受け、「全てに優先される課題」として業界全体でコンプライアンスレベルの向上に取り組む方針が示されました。また、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが2類相当から5類へ移行されたのを機に、反転攻勢に向けて力強く動き出すことができる環境となり、特に、海外旅行の復活に向けて官民一体となった取り組みの重要性も確認されています。また、同日に開催された臨時理事会で、元国土交通省航空局長の蝦名邦晴氏を代表理事・理事長に選任しました。
「JATA髙橋会長」
さらに踏み込んだ対応策を 総会の冒頭で挨拶に立った髙橋広行JATA会長は、ワクチン接種の関連業務や全国旅行支援の事務局業務など、コロナ禍の期間に国や自治体からの受託事業を実施してきた旅行業界で「JATAの信用を著しく失墜するようなコンプライアンスの問題が複数発生した」ことに言及。「観光庁から総点検の指示を受けて調査した結果、JATA会員の概ね1割程度の会社が受託事業を取り扱っていることを把握しているが、調査の結果、さらなる不正事案の報告は寄せられていない」と説明しました。 同時に、髙橋会長は、近年、コンプライアンス問題が続いていることを踏まえて、「JATAとして取り組んできた誓約書の提出や研修・セミナーの実施といった対応だけでは不十分だったと言わざるを得ない」と指摘し、「今後は、観光庁の指導もいただきながら、さらに踏み込んだ対応策を検討し、実行していく」と話しました。 髙橋会長は、コンプライアンスが「経営の根幹に関わる問題」であり、「全てに優先される課題」であるという認識を業界全体で真剣に共有し、「業界の信頼回復とコンプライアンスレベルの向上に取り組んでいかなければならない」と強く訴えました。
反転攻勢に向けて動き出す 2019年12月に発生が確認された新型コロナウイルス感染症は、世界規模で急速に感染が拡大し、2020年3月には世界保健機関(WHO)が“パンデミック”を宣言。国内でも2020年1月に最初の感染者が確認されて以降、感染者数は急速に増加して、同年4月に初めて発出された緊急事態宣言は、その後も、感染拡大の深刻化に伴い数次にわたって繰り返され、海外旅行や訪日旅行だけでなく、国内旅行の動きにも深刻な影響を及ぼしてきました。 3年以上に及んだコロナ禍も、今年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが、法律に基づいて行政が様々な要請・関与をする“2類相当”から、個人の選択を尊重し国民の自主的な取り組みをベースとする“5類”に変わり、空前絶後とも言うべき忍耐を強いられてきた旅行業界も、ようやく反転攻勢に向けて力強く動き出すことができる環境となりました。 JATAでは、この機会に改めて業界が直面している課題を把握するために、会員各社を対象とするアンケート調査を実施。アンケート調査を通じて寄せられた課題は、(1)海外旅行の取り扱い拡大に向けた対応、(2)既存ビジネスの改革やDXを通じた旅行業の再生、(3)資金繰り対策や補助金などの支援、(4)団体・グループ旅行の機運醸成、(5)コンプライアンス問題に関わる業界の信用回復、の5点に集約されました。
官民でプロジェクトを推進 髙橋会長は「いずれも重要な課題だが、特に、緊急かつ深刻として最も意見が多かったのは、『海外旅行の復活』だ」と強調。今年3月に閣議決定された「観光立国推進基本計画」では、日本人の海外旅行者数について「2025年までに2018年水準超え」という目標が掲げられており、「アウトバウンドの重要性がこれまで以上に明確に表現されたことは大きな前進だった」と述べ、「観光庁からも大きなサポートをいただいていることも画期的だ」と指摘しました。 観光庁は今年5月、海外旅行者数の2018年水準(約2000万人)への回復を目指し、海外旅行への機運を高めるため、JATAと共同で「いまこそ海外!宣言」を発出。また、3月に発表した「アウトバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージ」における重点的な取り組みを実施すべき国・地域を選定し、「国民の皆様におかれましては、この宣言をきっかけとして、ぜひ国内旅行とともに、海外旅行にもお出かけください」と呼びかけました。 髙橋会長は、「観光庁と官民一体でプロジェクトを立ち上げ、海外旅行回復のためのパッケージを策定するとともに、『今こそ海外!キャンペーン』の共同会見では、観光庁長官自身による国民に向けた強力なメッセージも発信されて機運醸成にご協力をいただき、その効果も出始めている」と強調しました。
総力挙げて海外旅行復活へ JATA会員を対象に実施したアンケート調査では、高止まりを続けている燃油サーチャージやホテルをはじめとするランドコストの上昇、航空やホテルの仕入れにおけるダイナミック化など、いわゆる「仕入れ」を取り巻く環境変化への対応の必要性を訴える声も数多く寄せられています。 髙橋会長は「何れも容易に解決できる問題とは考えていないが、会員の皆さんと知恵を出し合って少しでも良い方向に持っていけるように努力をしていきたい」と説明。「各社ごとに認識や関連性の度合いに温度差があっても、全て業界共通の課題であると考えている」という認識を示し、「当然、一社単独の力では限界のある課題であり、これまでも繰り返し申し上げてきている協調と共創の精神でJATAとして組織的に取り組んでいく」方針を示しました。 国内旅行と訪日旅行については、ほぼ復活の道筋も見えてきている中で、髙橋会長は「海外旅行の復活なくして、旅行業界の復活なし」という考えを改めて強調。「JATAの総力を挙げて海外旅行の復活に取り組み、その上で、国内旅行、訪日旅行、海外旅行の三位一体によるツーリズムの復活を早急に実現していきたい」と力強く訴えました。
「観光庁 池光審議官」
継続的な法令順守を隅々に 第67回JATA定時総会に来賓として出席した観光庁の池光崇審議官は、3年3カ月に及んだコロナ禍が様々な産業分野で非常に厳しい経営環境を強いてきたことに言及し、「観光という分野がとりわけ非常に厳しい状況にあって、それを支えるためにGoToトラベルをはじめとして多くの支援を行ってきている」と挨拶。「厳しく苦しい状況の中で、事業を継続し、雇用を守るために努力をされてきている観光分野に対しては、国としても必死でそれを支えるために相当な規模で支援を実施してきている中で、コンプライアンス上の問題が発生し、大きな社会問題になってしまっている」と指摘した池光審議官は、「国や地方が行う事業の原資が国民の皆様からいただいた税金であり、言うまでもなく公正公平に運用・執行されなければいけない」と強調し、「事業を委託した事業者の皆さんも、当然、そのことは分かってやっていただいていると思うが、結果的に、コンプライアンス上の事案が発生すると業界に対する信用問題にもなってくる」と指摘しました。 池光審議官は「現状においては、より一層のコンプライアンス遵守の姿勢が求められ、業界として、あるいは、事業者として、法令遵守が隅々まで行き渡っているかどうかが問われる」と語り、「事案が発生した時だけコンプライアンスをチェックするのではなく、継続的にコンプライアンスがしっかりと根付くように取り組んでいただきたい」と要請しました。
日本再生と観光再生に尽力 池光審議官は、昨年10月から開始した全国旅行支援について、7月以降も継続される見通しを示し、「これをしっかりと活用して旅行需要の喚起に努めていただきたい」と呼びかけ、「実際にその効果は大きく表れてきており、国内の旅行者数と宿泊者数は既にコロナ禍前を上回る水準を維持している」ことを強調しました。 今年5月の訪日旅行者も190万人を数えており、「5月単月でコロナ禍前との比較で69%まで戻って、1月から5月までの累計でも864万人に達し、2019年比でもマイナス37.3%という水準で、このペースが維持されれば、今年の年間訪日旅行者数は2000万人を超える」という見通しを示しました。 池光審議官は、「観光庁としてもインバウンドと併せてアウトバウンドの振興にもしっかりと力を入れていきたいと考えており、業界の皆さんとも力を合わせてインとアウトの両輪で本格的に取り組んでいきたい」と説明。「国内交流の拡大にも目配りをしていきたいと考えており、観光業界、特に、その中心となるJATAには、わが国成長戦略の柱で地域活性化の切り札でもある観光の回復に向けた足取りを確かなものにして、『観光があったから日本はこんなに早くコロナ禍から再生できた』と言われるよう、頑張っていただきたい」と語り、「国としても引き続き最大限の支援を行い、官民の連携によって日本再生と観光再生のために力を尽くしていきたい」考えを表明しました。
※総会報告資料はこちらをご参照ください
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