会報誌「じゃたこみ」 【法務の窓口】第93回 「旅行広告・取引条件書面ガイドライン」
の一部改定について

更新日:2023年12月22日


法務・コンプライアンス室
(監修 弁護士 三浦雅生)

           

 

 「旅行広告・取引条件説明書面ガイドライン」とは、旅行業者が行う広告の表示と取引条件説明書面の記載について「旅行業法」、「旅行業者等が旅行者と締結する契約等に関する規則」、「企画旅行に関する広告の表示基準等について」(通達)の3つに基づいて、表示方法、記載方法を説明(ルール化)したものです。(https://www.jata-net.or.jp/membership/jata-compliance/membership03_02/page-0/#p04)

 2023年4月1日付でこのガイドラインを一部(2ヶ所)改定しました。
 一つ目は「入場観光の明確化」です。本来、「ツアー・タイトルに施設又は催物等の名称を記載する場合は、当該入場券の代金を含んだ旅行代金を表示すること」が原則ですが、「入場料金を支払わなくても観光目的を果たすことができる(入場以外の選択の余地があるものや、入場料金を旅行者の自己負担とすることに合理性がある)場合に限り、当該入場券の代金を含まない旅行代金を表示することが可能となりました。ただし、当該入場券を含まない旨をツアー・タイトルに近接して表示することが必要です。

【表示例】下車観光で目的が達せられるとして入場券を旅行代金に含めない場合

萩・津和野・錦帯橋3日間
  2月22日出発 旅行代金128,000円(東京駅発)
  ※錦帯橋の入橋料(310円)は旅行代金に含みません。

 例えばツアー・タイトルを「萩・津和野・錦帯橋3日間」とした場合を考えてみましょう。錦帯橋では対岸まで入橋して散歩を楽しむのも良いものですが、体力的な問題や写真撮影をしたいなどの理由で橋を渡らずに全景を楽しむことで十分と考える方にとってはわざわざ入橋料を支払わなくても観光目的を果たすことができます。
 そこで、入橋料を旅行代金に含めなくてもツアー・タイトルには「錦帯橋」と表示することを可能とするものの、それに併せて必ず入橋料は旅行代金に含まれない旨を近接表示しておくことをルール化しました(赤字で表示する必要はありません)。
 
 二つ目は募集型企画旅行と手配旅行を組み合わせる場合の広告表示の明確化です。これは募集型企画旅行契約には含まれていない、「特定の旅行サービス」(※)を旅行業者が別途、手配旅行契約で引き受ける場合(2つの契約は一体として扱い、同時に申し込みを受け付けて、一方のみの解除はできないこと)を想定しています。当該特定の旅行サービスをツアー・タイトルに近接して表示する場合は、「別途手配」などと表示して、別途の手配旅行に係る旅行代金が必要であることを明示することをルール化しました。(※「特定の旅行サービス」とは、キャンセルポリシーの厳しい運送機関、宿泊機関、コンサートチケット、花火大会の桟敷席などの旅行サービスを想定しています。)

【表示例】募集型企画旅行に含めない手配旅行をツアー・タイトルに近接表示する場合

エジプト満喫10日間  
 【別途手配】ナイル川クルーズ
   10月19日出発 
        募集型企画旅行代金    180,000円
    【別途手配】手配旅行代金       95,000円
      (旅行代金総額              275,000円)

 ナイル川クルーズの例を見てみましょう。募集型企画旅行のツアー・タイトルを「エジプト満喫10日間」と表示し、手配が可能なナイル川クルーズをツアー・タイトルに近接表示する場合は、ナイル川クルーズの旅行代金が募集型企画旅行契約には含まれていないため、「別途手配」等と表示します。旅行代金は、それぞれ募集型企画旅行代金、手配旅行代金、そして旅行代金総額を記載します(赤字で表示する必要はありません)。日程表においても手配旅行契約となる部分が明確になるようにナイル川クルーズに関わる部分を点線で囲うなどして旅行契約の内容を区別して表示してください。もちろん、申込の際はそれぞれの契約を締結することから取引条件説明書面も募集型企画旅行用、手配旅行用の2種類が必要です。「詳細及び解説動画はこちらから

担当 法務・コンプライアンス室 五十嵐 秀樹