会報誌「じゃたこみ」 【消費者相談室】苦情事例に学ぶ(92)
学生団体の合宿の予約について

更新日:2023年12月22日


               

 

今回のテーマ:学生団体の合宿の予約について

 例年夏から秋にかけては、大学生のサークルの合宿のシーズンです。しかし2020年以降は新型コロナウイルス感染拡大防止のためサークル活動を自粛する傾向が続いており、多くの合宿が延期を余儀なくされました。今年度に入り、ようやくコロナによる様々な制限が撤廃され、合宿を再開するサークルも増えて来たようです。その一方で、JATA消費者相談室にもサークル幹部の学生から相談がいくつか舞い込んでおります。

【相談内容】
 ある大学のサークルの今年度の幹部の学生から相談がありました。そのサークルでは例年合宿(宿泊及び貸切バス:受注型企画旅行15~20名)の手配を同じ旅行会社に依頼しておりました。2020年秋の合宿がコロナ禍で中止となり、それ以降は延期を繰り返していましたが、コロナの先行きも不透明なので2023年3月に当時の代表が同社に契約解除を申し出たとのことです。しかし旅行会社からは、2023年度の新入生の動向も踏まえて判断するように勧められたので、一旦保留として次の代(今回の相談者)に引継ぎをしたそうです。しかし、今年度に入りサークル内で合宿の実施の可否が検討され5月下旬に正式に中止が決定したので、相談者が同社に申し出たところ、多額の取消料を請求されてしまいました。担当者が入学以来合宿は実施されておらず、先代からも契約についての細かい説明を受けていなかったので、旅行の取消しについて安易に考えていたようです。サークルの会計報告によると昨年度延期した際に取消料の支払いをしていたようですが、そもそも取消料を支払うべきであるか判断に迷いJATAへ相談したとのことです。

【解決の指針】
 先代の幹部から相談者への引継ぎが十分では無かったようです。2023年の3月時点の旅行契約の内容の詳細確認及び、今回請求された取消料の算出根拠は契約に則ったものであるか、先輩にも協力いただき、きちんと確認することをアドバイスしました。その後、相談者から「契約書面はきちんと取り交わされており、取消料の規定については企画料相当分と明記されていたので、所定の取消料を支払って契約解除した」との報告がありました。学生団体の合宿予約の傾向をみると、合宿終了後に次年度の日程を決めて旅行会社を通じて旅行(合宿)の予約をすることが多いようです。その際には次年度の幹部が契約責任者となり、旅行会社との間で正式な契約書面を取り交わす必要があります。ただし、残念ながら団体によっては、旅行会社の提示した契約内容をきちんと理解せずに契約を締結してしまうケースが散見されます。また、細かい旅行内容の打ち合わせもせずに、旅行会社に口頭だけで旅行を申し込んでしまったケースもありました。後者の場合には正式な契約手続きを案内しなかった旅行会社の側の責任も大きいと言えます。当然のことですが、口約束だけでは旅行会社は取消料の請求ができません。

【契約にあたっての注意点】
 大学生は成年年齢に達していますので、契約の当事者となりえます。その一方で、社会経験の浅い学生と旅行会社の担当者では、情報の質や交渉力に大きな差があることは明白です。旅行会社の担当者は、学生に契約について分かりやすく説明をし、申込金や取消料の請求の際も契約書に基づいた契約行為であることをきちんと理解いただいた上でお支払いいただくよう対応することが大切です。コロナ禍では旅行実施を見送る(1年後に延期)ケースが多くありましたが、その場合には契約自体が中止となったと考えるのが適切です。いったん契約を取消した上で、新しい契約を成立させるのが妥当な方法です。また、最近は旅行の申込みや打合せをメール等で行なうケースも見受けられますが、契約書面についてはきちんと手交する必要があります。今回の事例の契約形態は受注型企画旅行でしたが、手配旅行契約の場合には運送・宿泊料金には収益は乗せられず、収益は「旅行業務取扱料金」となります。また、取消料規定等も異なりますので、ご案内にあたっては、注意が必要です。

担当:島田 延治