会報誌「じゃたこみ」 【国内・訪日】「阿寒摩周国立公園 観光促進意見交換会」を開催

更新日:2023年12月22日


 JATA国内旅行推進委員会は2023年9月21日(木)~22(金)、訪日旅行推進委員会と合同で、北海道釧路市の阿寒にて、「国立公園満喫プロジェクト」推進のための「阿寒摩周国立公園観光促進意見交換会」を開催しました。JATAは環境省が推進する「国立公園満喫プロジェクト」のオフィシャルパートナーとして、毎年、1回、環境省と共催で観光促進意見交換会を開催しています。地方創生、観光の地域分散をテーマに議論を重ね、5回目の開催となった今期は、アドベンチャートラベルに焦点を当てました。会員会社16社、事務局含め34名が参加しました。

会員会社16社、事務局含め34名が参加

 開催にあたり主催者を代表して挨拶を行ったJATA副会長で国内旅行推進委員会の小谷野委員長は、アドベンチャートラベルについて、インバウンドを含め重要なテーマであると指摘し、阿寒はアドベンチャートラベルについて、先駆的に取り組んできた地域であり、ATWS2023(アドベンチャートラベル・ワールドサミット北海道・日本 2023年9月11~14日)の開催直後に同地を訪れ、意見交換会やエクスカーションを実施することの意義を強調しました。小谷野委員長は、高付加価値商品の提供や持続可能な観光地の構築を見据え、アドベンチャートラベルに関する知見を深めて欲しいと呼びかけました。

JATA副会長で国内旅行推進委員会の小谷野委員長

 環境省を代表して登壇した環境省自然環境局 国立公園課 国立公園利用推進室の水谷室長は、「国立公園満喫プロジェクト」について、2016年から国の観光政策とインバウンド政策の重要な柱として、進めてきたと説明、外国人旅行者1000万人の目標を掲げて取り組んできたものの、パンデミックの影響により頓挫したことについて言及し、コロナ禍を乗り越え、国内旅行や訪日旅行が回復しつつある中で、環境省としても新たなスタートを切ったと述べました。
 また、ATWS2023の開催について、豊かな自然や文化を持っている北海道がアドベンチャートラベルに適しているとの価値が認識されたことが大きな成果だと評価しました。一方で、日本の観光業のサステナビリティに対する意識がまだまだ十分でないと指摘しました。水谷室長は、アドベンチャートラベルの普及と国立公園利用の高付加価値化の推進により、オーバーツーリズムの問題や地域経済の振興に対処していきたいと意欲を示しました。

環境省自然環境局 国立公園課 国立公園利用推進室の水谷室長

 つぎに鶴雅ホールディングス株式会社代表取締役社長で、阿寒観光協会まちづくり推進機構会長も務める大西会長が、開催地を代表して挨拶しました。大西会長は、2018年に阿寒アドベンチャーツーリズム株式会社(DMC)を設立し、阿寒の自然環境やアイヌ文化を活用したアドベンチャーツーリズムのコンテンツ制作などに積極的に取り組んでいます。大西会長は、持続可能な観光を推進し、オーバーツーリズムを回避しながら高付加価値な観光を実現するためには、国立公園を活用していくことが非常に重要だとの考えを示しました。観光の質を向上させ、地域の経済を繁栄させ、それに伴い国の成長を牽引するといった姿を旅行業界に期待していると訴え、観光業界で一体となり、コロナ禍からの復活に向け果敢に立ち向かっていこうと出席者へ呼びかけました。

鶴雅ホールディングス株式会社代表取締役大西社長

 同じく開催地を代表して挨拶をした環境省 釧路自然環境事務所の岡野隆宏氏所長は、道東地域にある国立公園、世界遺産、および鳥獣保護区などについて紹介し、域内に生息する希少種の保護および増殖活動に取り組んでいると説明しました。今回の意見交換会を契機に、アドベンチャートラベルの推進や国立公園の活用について議論が深まり、地域と観光業界の発展に繋がることを期待していると述べました。

環境省 釧路自然環境事務所の岡野隆宏氏所長

 意見交換会では、阿寒クラシックトレイル、弟子屈におけるアトサヌプリトレッキングツアーなど、阿寒摩周国立公園の利用促進に関する取り組みが紹介されました。また、鶴雅リゾートの取締役アドベンチャー事業部の高田部長からは、阿寒湖温泉におけるアドベンチャートラベルについて、当分野における先駆者としての視点を交え、阿寒地区に限らず、アドベンチャートラベルの推進と販売に関するアドバイスが提供されました。参加者からは、質問が多く寄せられ、時間内で収まりきらないほどの活発な意見交換が行われました。

鶴雅リゾートの取締役アドベンチャー事業部の高田部長

 閉会にあたり訪日旅行推進委員会の百木田委員長は、今年度、JATAの訪日旅行の事業として、国とJNTOと協力して高付加価値、地方誘客、SDGSの3点を重要課題として取り組んできたことに言及し、国立公園は、それらすべてを兼ね備えた非常に重要なコンテンツであると指摘しました。また、アドベンチャートラベルについて、先駆的な取り組みを行っている阿寒摩周国立公園は、アフターコロナの新時代において、訪日旅行客の求める理想的な観光素材になると強調しました。大阪関西万博や世界陸上など大きなイベントの開催を控え、さらなるインバウンドの拡大が期待される中、阿寒摩周地区への送客を一層図っていくとの決意を表明しました。

訪日旅行推進委員会の百木田委員長

 

 翌日は、ビジターセンターの視察後、三つのグループに分かれて、ガイドウォークやカナディアンカヌーなどのエクスカーションに参加し、アドベンチャートラベルを実際に体験し、知見を広げました。

ビジターセンターで阿寒湖の歴史や生態系について学ぶ

広大な森林が広がる光の森で専門ガイドによる説明

二人乗りのカナディアンカヌーを体験

 アドベンチャートラベルは富裕層向けの有望なコンテンツとして注目されているものの、その専門性が高いため、ガイドが圧倒的に不足しているといった問題が浮かび上がっています。また、スーパー富裕層が訪れることがあっても、それが常に継続的に行われるわけではないため、その間を埋めることが課題として指摘されています。JATAでは今後も情報発信やセミナー開催などを通じて、アドベンチャートラベルの普及を推進してまいります。(国内旅行推進部 野浪部長)