会報誌「じゃたこみ」 【法務の窓口】第95回 ステルスマーケティング

更新日:2023年12月22日


法務・コンプライアンス室
(監修 弁護士 三浦雅生)

           

 2023年3月28日、内閣府告示により、ステルスマーケティング(ステマ)自体が景品表示法に基づく規制対象となり、10月1日から施行されました。

広告であることを隠すのは不当表示に
 ステマとは、実際は事業者の広告であるにもかかわらず、あたかも第三者の意見や感想であるかのように一般消費者に誤認させる行為です(そもそも広告であることを隠す行為自体が消費者をだます行為でしょう。)。告示により、ステマを意味する「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が指定されたことにより、ステマ自体が景品表示法に基づく規制対象となりました。私達(一般消費者)は、事業者の広告であれば表示内容にある程度の誇張があるという心構えで見ることができますが、広告だと分からなければ「消費者の意見」であり誇張があるという心理的判断ができず誤認を生じさせるおそれがあることが規制される理由です。今後は、「広告であることを隠すこと」自体が景品表示法に基づく不当表示となりました。

広告と認識できなければ「事業者の表示」になる
 不当表示の要件として、①事業者の広告であること、②一般消費者が事業者の広告であるとわからないこと、の2要件を同時に満たせば不当表示となりますが、その規制を受けるのは広告主(事業者)であり、広告主からの依頼を受けて表示(投稿)を行うアフィリエイターは規制対象外となります。
 しかし、告示と同時に公表された運用基準によれば、①について、「客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない場合」には①の要件を満たし、告示の対象になるとしています。例えば、営業部長が自社のアカウントではなく個人のアカウントで販促を目的として自社商品を賞賛した場合は「事業者との一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員」として「事業者の表示」と見なされる危険性があるとされています。また、事業者がアフィリエイターなどの第三者を活用して行う表示にも、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある場合には、事業者が表示内容の決定に関与したとして「事業者の表示」となり、両者間のメールのやりとり、対価の提供、過去の取引関係などの実態を踏まえて総合的に判断されるとしています。
 今後は、販売を促進することを目的として「事業者が第三者に成り済まして行うような表示」(営業部長の賞賛)や「第三者をして行わせる表示」(アフィリエイターによるやらせ)があれば「事業者の表示」として規制される危険性があります。
 また、②については、「事業者の表示であることが明瞭になっているかどうか」で判断するとし、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識を基準に判断するとしています。

アフィリエイターにも指針を遵守させる
 では、「旅好き必見!○○ツアーの魅力」などアフィリエイト広告を行っている場合はどうするのか。実務では、アフィリエイターとは直接の契約がなくASP(アフィリエイトサービスプロバイダー:広告主との仲介業者)を通じて指示をする例が多いと聞きます。「『旅行業者が講ずべき景品類の提供及び管理上の措置』について(指針)」には、アフィリエイターに対する管理上の措置についても言及をしています。ASPを通じてアフィリエイターにもこの指針を遵守させることがステマの防止に役立ちます。

担当 法務・コンプライアンス室 堀江 眞一

●「旅行業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置」について(指針)
https://www.jata-net.or.jp/wp/wp-content/uploads/homu/221201_guidingprinciple.pdf