会報誌「じゃたこみ」 【法務の窓口】第98回
道路運送法上の許可又は登録を要しない運送の表示方法

更新日:2024年05月29日


法務・コンプライアンス室
(監修 弁護士 三浦雅生)

 国土交通省物流・自動車局より令和6年3月1日付け国自旅第359号にて通達「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドラインについて」が発出されました。
 これまでも、最寄り駅から宿泊施設までの無料送迎など、送迎を利用する人と利用しない人で提供されるサービスの内容に差がないことにより送迎に対する対価を取っていないとされるものは、道路運送法上の許可を必要としなかったため、駅・バス停等から利便の悪い場所の宿泊施設を利用する宿泊者には重宝されてきたことでしょう。
 今回は、新通達による無料送迎を旅行日程中でどのように表示したら良いか、「旅行広告・取引条件説明書面ガイドライン」を改正し明示することとしましたので、その内容をご紹介します。

新たな通達の主な内容

 新たな通達の内容で、旅行関連の主なポイントをご紹介します。

(1)宿泊施設の付随送迎
 宿泊施設と最寄りの駅・空港等との送迎途中でのお土産屋を含む複数施設への立寄りが可能となりました。また、当該付随送迎の利用の有無により宿泊料金に差を設ける場合には、当該差額が運送サービスに要する実費(ガソリン代等の燃料費、有料道路使用料、駐車場代、移動サービス専用保険料、運送を行うために発生した車両借料)の範囲内である必要があります。

(2)ツアー&ガイドに係る付随送迎
 ツアーやガイドに付随していれば運送が可能となりました。ただし、ツアーやガイドと称していても、提供されるサービスの実態が目的地への運送のみである場合は許可等を要することとなります。

 ※ いずれも詳細を国土交通省のウェブサイトでご確認下さい。
 ▸ 通達「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドラインについて」 別ウインドウ
 ▸ 道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドラインについて(イラスト版) 別ウインドウ

日程中の表示方法

 自家用自動車を利用する観光ガイド、アクティビティ事業者の自家用自動車による送迎等を旅行日程に組み込む場合は、以下のように表示することとガイドラインに規定しました。自家用自動車を利用する旨、道路運送法上の許可又は登録を要しない運送である旨を表示することが必要です。

記載例① 自家用自動車を利用する観光ガイドの場合

午後 ○○地区半日観光
○○県公認△△ガイドが道路運送法上の許可等を要しない自家用自動車の運送によりお客様をご案内します。

記載例 ② 事業者の自家用自動車による送迎の場合

○○駅 –(○○イチゴ農園による道路運送法上の許可等を要しない自家用自動車利用)– ○○イチゴ農園着

掲載頁 : 旅行広告・取引条件説明書面ガイドライン 78ページ PDF

表示以外の注意点

 表示方法はガイドラインで示しましたが、道路運送法上の許可又は登録を要しない運送を旅行日程に組み込む場合は、一体、何を注意したら良いのかが気になります。
 最大のポイントは、本当に許可又は登録を要しない運送行為として行っているものかどうかという点ではないでしょうか。この前提が崩れ、実は許可等を要するものであった場合、運送を行った宿泊施設やガイドなどは道路運送法第78条別ウインドウ 違反を問われ、1年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金(又は併科)が課せられる可能性があります(同法第97条第1号別ウインドウ)。また、それを手配した旅行業者も旅行業法第13条第3項第2号 別ウインドウ に該当し、法令違反を問われる可能性は否定できません。
 他には、手配する運送に対して適切な保険が付保されているか(同乗者に対する補償が付保されているか等)を確認することも求められるものと思いますので、利用にあたってはバスやタクシーの手配以上の慎重さが必要です。

参考 : 法務 Q&A 総集編 (増補版) NO.181 PDF

担当 法務・コンプライアンス室 杉原 賢二