会報誌「じゃたこみ」 【資源エネルギー庁より】
あれから15年、福島の「今」
~福島第一原発の廃炉作業とALPS処理水~

更新日:2026年06月04日


JATAでは、国内旅行委員会や社会貢献委員会が中心となり、東北地方の復興支援のため「観光誘客促進等の支援」への協力を行ってきました。一連の取り組みの中で、観光庁・経済産業省などと協力して福島県の復興支援と、福島第一原発におけるALPS処理水の処分に係る風評被害の払拭に向けた取り組みも行っています。これまで「福島の復興と被災地域の観光促進」について勉強会を開催したり、福島県浜通りエリアの観光コンテンツや現地での取り組みを視察するツアーを実施したりするなど、会員会社における理解促進に努めてきました。この度、観光庁より最新の情報を入手しました。ぜひご一読ください。

 東日本大震災が起こった2011年から、今年で15年が経過しました。
 特に、原子力発電所での未曾有の事故によって大きな影響を受けた福島県では、復興に向けた様々な取組が進められており、交通・社会インフラや新たな産業拠点の整備、農林水産業などのなりわい再建も進み、住民の皆様の生活も再開するなど、着実な復旧・復興の歩みが見られます。

●東京電力福島第一原子力発電所の現状
 現在、東京電力福島第一原子力発電所では、継続的な注水により原子炉を冷却することで、安定した状態を維持しており、長期に及ぶ廃炉作業が多くの作業員の手で進められています。放射線の影響で人が近づけない場所でも作業ができるよう、ロボットによる遠隔操作など、新しい技術の開発や活用も進んでいます。また、廃炉作業と併せて構内の除染が進み、構内の放射線量は大幅に低下し、今では、ほとんどの敷地内で通常の作業服での活動が可能となるなど、大幅に環境が改善しています。
 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は世界にも前例がない取り組みです。国や東京電力だけでなく、国内外の叡智を結集させるため、様々な大学、研究開発機関や海外企業などが共同で取り組みを進めています。また、廃炉で培った技術力等をもとに、地域が活性化し、福島の復興と廃炉が両輪として進んでいくことを目指して、地元企業など地域の皆様にも協力いただきながら廃炉を進めています。

  

         東京電力福島第一原子力発電所構内の作業員                              福島県の空間線量                                                                                                  

●ALPS処理水の海洋放出 
 東京電力福島第一原子力発電所では、原子炉内に残る事故で溶けて固まった核燃料などを冷やすため、常に水がかけられています。この冷却水に、 地下水や雨水が混ざり合うことで、高い濃度の放射性物質を含んだ水が日々発生するため、これを浄化処理し、敷地内でタンクに貯蔵してきました。
 このタンクが1000基を超え、敷地内のかなり広い面積を占有する状態となり、これからの廃炉作業に影響が出てしまうことから、政府は2021年4月、安全性を確保し、政府をあげて風評対策を徹底して行うことを前提に、「2年程度後を目途にALPS処理水を海洋放出する」という基本方針を決定し、2023年8月に海洋放出を開始しました。
 ALPS処理水とは、浄化装置によりトリチウム(三重水素)以外の放射性物質を除去し、海洋に放出する際の規制基準を満たした水のことをいい、浄化装置の名称(多核種除去設備(ALPS))から、そのように称されています。
 ALPS処理水には、水素の仲間であるトリチウムが含まれていますが、水道水や食べ物、私たちの体の中にも普段から存在するもので、希釈して規制基準を満たして処分すれば、環境や人体への影響は考えられません。
 実際、トリチウムは原子力発電所を運転すると必ず発生するため、世界の原子力発電所では各国の規制に基づいて海洋や大気などに排出されていますが、我が国はもちろん、諸外国でもトリチウムによる影響は確認されていません。
 ALPS処理水の海洋放出については、原子力分野の専門機関である国際原子力機関(IAEA)が専門的な立場から第三者としてレビュー(検証)を実施しており、レビューの結果として、ALPS処理水の海洋放出は、「国際安全基準に合致」し、「人及び環境に対する放射線影響は無視できるほどである」といった結論が盛り込まれた包括報告書を2023年7月に公表しています。
 IAEAは、この海洋放出前に公表した包括報告書の評価をフォローアップし、海洋放出後の安全性について確認するために、継続してレビューミッションを実施しています。これまでに公表されたいずれの報告書においても、「関連する国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかった」と結論づけられており、ALPS処理水の海洋放出が安全に行われていることが専門家の立場から確認されています。
 ALPS処理水の海洋放出の前後に、東京電力に加え、原子力規制委員会、環境省や水産庁、福島県等が定期的にモニタリングを実施し、海水や魚類等の放射性物質濃度に大きな変化が発生していないか確認しています。これらのモニタリングの結果から、ALPS処理水の海洋放出は人や環境への影響がなく、安全であることが確認されています。

                

                         

●福島県産品の安全性
 福島県内で生産・流通する農林水産品や加工食品について、食品衛生法による基準値が設定されている放射性セシウムの検査が行われております。日本の基準値は、食品の安全基準を定めている国際的な組織が、これ以上の措置をとる必要がないとしている指標に基づく厳しい水準により設定されています。現在、福島県を含む地方自治体では、生産、採取、漁獲される段階で基準値を超える食品はほとんどなく、もし検査で基準値を超える食品が確認された場合は、流通しないよう出荷管理が徹底されています。


福島県産農林水産品と検査状況

●学びの場としての福島
 世界で類を見ない複合災害(地震、津波、原子力災害、風評被害)を経験した福島県では、課題解決に向けたさまざまな取組が進められています。こうした課題に取り組む様々な人・企業の姿から唯一無二の学びを得る目的で、多くの学習・研修ツアーが開催されています。
 東京電力福島第一原子力発電所の構内も、防護服やマスク等の特殊な装備を必要とすることなく、普段の服装のままで視察が出来るようになりました。これまでの視察者は、のべ16万人名超(令和8年3月末時点)にのぼり、学習・研修ツアーの一部として東京電力福島第一原子力発電所の視察を組み込む事例も見られます。
 周辺地域では、震災の記録を伝える東日本大震災・原子力災害伝承館や浪江町立請戸小学校などの施設に加え、浜通りの産業回復のために整備された福島ロボットテストフィールドや、最先端の遠隔操作技術・仮想現実技術に関する研究を行っているJAEA楢葉遠隔技術開発センター(NARREC)等、多くの施設を視察することができます。
 福島県は、視察・フィールドワークや復興に向け果敢にチャレンジする人々との対話を通じ、震災・原子力災害の教訓を未来にどう活かすか考える機会を提供する新しいスタディツアー「ホープツーリズム」を推進しています。公益財団法人福島県観光物産交流協会では、ホープツーリズムに関するコンテンツ(見学施設、復興に向け果敢にチャレンジする人々、フィールドワーク、食事・宿泊施設等)の情報を集約し、現地手配(ランドオペレーター)機能を有するワンストップの「総合窓口」を設置しています。
<お問い合わせ先>
 hopetourism@tif.ne.jp
 024-525-4060

(上:東京電力福島第一原子力発電所 視察の様子、下左:東日本大震災・原子力災害伝承館、下右:JAEA楢葉遠隔技術開発センター(NARREC) 視察の様子)

●浜通りで広がるアートの活動
 福島県浜通り地域等で、インフラや産業の再生などと共に進められているのが、映像や芸術・文化を活用した魅力ある新たなまちづくりです。経済産業省では、2023年6月に「福島芸術文化推進室」を設立し、「福島浜通り映像・芸術文化プロジェクト」を推進しています。多くの芸術家や関係者が原子力被災地域に集い、関わりながら、作品を制作・発信することによって、外部からの人の呼び込みや、帰還する住民が新たな自信と誇りを持てるようになることを目指しています。
 約4年に渡る「福島浜通り映像・芸術文化プロジェクト」活動の中で、映画や絵画、演劇、建築、音楽など、幅広いジャンルの芸術を支援し、作品が生み出されてきました。
 例えば、滞在制作、いわゆるアーティストインレジデンス(AIR)を行う芸術家や学生の滞在費・制作費を支援する「ハマカルアートプロジェクト」から生まれた、国道六号線沿いに住む人々の食生活をテーマにしたエッセイ集『ロッコク・キッチン』(著:川内有緒)は、Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞し、全国書店・オンラインにて販売されています。この書籍を基にしたドキュメンタリー映画「ロッコク・キッチン」(監督:川内有緒・三好大輔)は、2025年末から日本各地の映画館での上映が始まりました。映像や文字によって福島の「いま」を映し・表し残すことができるのも、芸術文化の魅力の一つです。
 また、将来的な関係人口を創出していくため、アートやデザインを活用し、地域の魅力や可能性を最大限に引き出す事業を支援するHAMA CONNECTED(通称:ハマコネ)事業では、世界的現代美術家の宮島達男氏の作品「時の海 東北」美術館を富岡町に設置するための取組や、飯舘村の山津見神社例大祭を震災後初めて復活する取組に資するリサーチやイベントが実施されました。芸術家や作品が媒体となって、地域内での人と人の相互の結びつきや、地域そのものと人の結びつきの強化につながることも、芸術文化の持つ力のひとつだと考えています。
 浜通りではたくさんのアートが芽吹いています。ぜひ浜通りに足を運んでいただき「いま」の地域の魅力を感じていただけたら幸いです。

                          (左:映画ロッコク・キッチンのイメージ、右:山津見神社例大祭の様子)

これまで復興に取り組んできた方々の努力を無にすることがないよう、政府は前面に立って全力で風評影響の払拭に取り組んでいきます。

お問合せ先
経済産業省資源エネルギー庁
原子力発電所事故収束対応室
TEL:03-3501-1511(代表)