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更新日:2023年06月23日
今回は、パキスタン・カラチでの勤務経験のある邦人テロ対策室職員が、簡単にできる治安情勢の読み取り方と、6月末にあるイスラム教の宗教行事をご紹介します。
■ 手軽に出来る治安情勢を読み取るヒント ■ イスラム教の行事を知ろう:イード・アル・アドハー(Eid-al-Adha) ■ ゴルゴ13からの伝言
海外での滞在中は、常に思いもよらない危険があり、被害に遭う前にできる予防をしておくことが重要です。外務省が公開する海外安全ホームページのチェックは勿論のこと、これ以外にも、例えば、一見安全には無関係と思われる政治や経済や文化的なニュースも、身を守る手段になることがあります。 今回は、ある邦人テロ対策室員が過ごしたパキスタン・カラチを例に、自分の安全を守るニュースの切り取り方や、関連する安全対策をご紹介します。なお、本メルマガは、執筆した室員個人の経験と視点に基づくもので、外務省としての公式見解を表すものではありません。
▸ 政治情勢は治安情勢の基本!
政治情勢が不安定な国ではもちろん、そうでない国でも、滞在国の政治情勢は自分の身を守る情報源のひとつです。今や多くの国で大手新聞社や通信社やテレビ局のニュースがネット閲覧できるようになっていますし、現地語とほぼ同時に英語の記事が更新される国も多くあります。国内の政治に着目すれば、民衆の抗議活動や反体制派による当局への攻撃もある程度予測ができます。また、外交政策への不満から特定の国の権益(大使館等の公的な組織)が国内で狙われることもありえます。現地の大きな政治ニュースは押さえておくようにしましょう。 また、暴動や事件への現地政府の対応によっては、思わぬ二次被害が発生することもあります。 今年5月、パキスタンの首都イスラマバードで前首相が汚職のかどで逮捕された際、主要都市で抗議活動が展開され、政府が治安部隊を出動させました。カラチではあまり実力行使は行われませんでしたが、このとき、抗議者同士が連絡を取り合って事態が拡大することを防ぐために、政府は各種ソーシャルメディアの利用を制限し、一部の地区では携帯電話用の電波を数日間にわたって遮断しました。もしこのとき、携帯電話かモバイルWi-Fiによる通信手段しか持っていなければ、そもそも暴動が起こりうる/起こっている情報すら得られません。知らずに出かけて渋滞に巻き込まれて動けないところに暴動やテロが起これば、避けようがありません。衛星ネット回線があれば理想的ですが、少なくともモバイル回線だけではなく、固定回線によるインターネットなど、ふたつ以上の連絡手段を持っておくことである程度の情報遮断を予防することが可能となります。
▸ 経済情勢はローカルな人々の生活に直結
▸ お祝い事も要注意?!
後は文化・慣習的なお話です。おめでたい日の祝い方は各国違いが出るところですが、そんな「常識の違い」にも危険が潜んでいることがあります…。 カラチでは、独立記念日や元旦の日付が変わる瞬間に、あちらこちらから銃声が聞こえてきます。この「銃声」は、なんと空砲の音ではありません。多くのケースで実弾が発砲され、次の日の新聞には、毎年のように流れ弾による犠牲者が載ります。 室員が住んでいた街の中心部から離れた場所でも、日が変わる少し前からバイクや車の集団が大音響で音楽を流し大声を上げながら集合住宅の前を何度も往復し、発砲音が聞こえることもありました。ある程度高い階層に住んではいたものの、窓の近くには行かないように注意していました(もちろんカーテンは閉めること!:海外安全対策便り第2号より)。
海外安全対策便り第11号では、安全対策の視点からイスラム教の行事、ラマダンをご紹介しました。今回は、6月末に行われる「大イード」、イード・アル・アドハー(ちなみに、パキスタンではイード・ウル・アズハーと言います)をご紹介します。
実は、イスラム教におけるイード(祝祭)は年に2回あり、1回目にあたるイード・アル・フィトルは、ヒジュラ暦(イスラム暦)の9月、ラマダン(断食)月の終わりを祝う期間です。2回目のイードは、熱心な信者が神に最愛の息子を捧げようとした行いを祝う日で、ヒジュラ暦12月の巡礼月10日目、つまり聖地メッカを巡礼するハッジ(大巡礼)の最終日にあたり、盛大に祝われます。これが、「大イード」と呼ばれる理由です。
日本語では犠牲祭と訳され、巡礼に参加していないムスリムも、大事に育てた家畜を屠殺して、親族や貧者と肉を分け合っていただきます。カラチでは、家畜(4本足のもの。羊・山羊、牛、ラクダなど)を一頭購入して数日間~1か月間ほどお世話します。当日は、親戚が一堂に会し、男性たちが家畜を屠殺して肉を小分けにし、女性たちは全員分のご飯を作るのに大忙しです。将来の担い手である子どもたちも、小さなうちから屠殺の様子を見学します。お金持ちもしくはいくつかの家がまとまってプロの屠殺師(基本的に世襲制)を雇って作業をお願いするケースや、最近では1頭分の屠殺されたお肉を届けてくれるスーパーのサービスを利用するケースもあります。余り裕福でない層の人たちは、屠殺が行われているところを見つけて、並んでお肉をもらいます(写真はこの時期になるとカラチ市内のあちこちに出現する、犠牲祭用の山羊売り場)。
よくイメージするような治安だけではなく、思いもよらぬ事故・被害にご注意です。
お金をかけずにできる安全対策は…詳細はこちら https://www.anzen.mofa.go.jp/anzen_info/pdf/episode4.pdf
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