会報誌「じゃたこみ」 【JATA活動】2024年新春記者会見

更新日:2024年01月26日


2024年を旅行業界の「完全復活元年」に意識と行動を変革し、
信頼の再構築へ全力注ぐ


 JATAは1月10日 (木)、東京・霞が関の全日通霞が関ビルで新春記者会見を開催しました。会見には、業界メディアや一般メディアなど23社から25人の記者が集まりました。髙橋会長は、2024年を旅行業界の「完全復活元年」として取り組みを進める方針を示すと同時に、その大前提として「全ての事業活動においてコンプライアンスがベースになくてはならない」と語り、「業界全体で意識と行動の変革を進め、信頼の再構築に全力を注ぐ」考えを強調しました。


業界メディアや一般メディアなど23社から25人の記者が出席

業界全体で真摯な取り組みを


 髙橋会長は会見の冒頭で、今年1月1日にマグニチュード7.6の地震が発生した後も地震活動が続いている令和6年能登半島地震に言及して、「地震により亡くなられた皆様の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、被災されたすべての皆様にお見舞い申し上げます」と語り、旅行業界としても一日も早い復旧・復興に向けて最大限の努力をする方針を表明しました。
 旅行業界では2021年以降、雇用調整助成金や国・自治体による旅行支援事業や受託業務に関わる不正事業が発生しており、JATAは「コンプライアンスの取り組みの手引き」の策定や経営者層向けの研修、社員向けのeラーニングなど再発防止に向けて様々な対策を講じてきましたが、昨年11月にはJATA会員企業5社に公正取引委員会が立ち入る事態も発生しました。
 髙橋会長は、こうした状況を踏まえて、さらなる対策強化の一環として外部の専門家で構成される「有識者委員会」を設置し、有識者の意見・指導に基づいて具体的な対応策を年度内にまとめる一方、新たに「コンプライアンス内部通報相談窓口」を設けるなど、JATAを中心に「業界全体でコンプライアンス問題に真摯に取り組んでいく」考えを明らかにしました。

国内と訪日はコロナ前の水準


海外旅行の機運を高めるため観光庁と共同で
展開している「今こそ海外!」キャンペーン

 昨年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上での位置付けが2類相当から5類へ移行されたことにより、旅行マーケットはコロナ禍から抜け出して復活に大きく転じ、特に、国内旅行と訪日インバウンド旅行は急速に回復して、ほぼコロナ禍以前の状態に戻りつつあります。

 また、昨年3月には新たな観光立国推進基本計画が閣議決定され、訪日インバウンド旅行をさらに拡大していくためには、インバウンドとアウトバウンドの双方向交流が重要であるという考え方に基づいて、日本からのアウトバウンド旅行の本格的な回復を目指す政策パッケージも策定されました。

こうした政府の後押しを受けながら海外旅行の機運を高めるため、JATAは昨年5月に観光庁と共同で「今こそ海外!宣言」を発表。髙橋会長は、「特にパスポート取得費用サポートキャンペーンは非常に大きな反響を呼び、海外旅行の機運醸成に一定の効果があった」という認識を示す一方、昨年10月の日本人出国者数が2019年比で6割程度にとどまるなど「以前として海外旅行需要の本格的な回復に至っていない」と指摘しました。

「海外旅行の復活」は不可欠


   2024年は海外旅行自由化60周年を迎える特別な年、
   日米観光交流年やトルコとの外交関係受樹立60周年など
   海外旅行の活性化に繋がるイベントが予定されている

 髙橋会長は、2024年を旅行業界の「完全復活元年」と位置づけ、最も重視して取り組まなければならない課題として、「海外旅行の復活」と「旅行業界が目指すツーリズム」の2つを挙げました。
 訪日インバウンド旅行と国内旅行が着実に回復を続ける一方、海外旅行の回復が遅れていることについて、髙橋会長は、円安や航空運賃、宿泊料金など旅行費用の高騰がネガティブに働くとともに、日本発の国際線航空座席が旺盛な動きを続ける訪日旅行需要に占められ、アウトバウンド需要向けの座席供給が逼迫していると説明。

 国際交流は「貿易と同様に双方向の均衡した交流によって持続可能な発展につながる」ものであり、それによって「航空路線を含む観光インフラの発展と定着がもたらされ、安定した訪日インバウンド需要の拡大も可能となる」と指摘し、「二国間の対等な関係を築くためにも日本人の海外旅行復活は必要不可欠となる」と強調しました。

今後の海外旅行マーケットの動向について、髙橋会長は、法人を中心とする海外団体旅行需要の活発化を「海外旅行の回復要素として明るい兆し」として期待を示し、「こうした動きが続けば、今年中にはコロナ禍以前のレベルに近づける道筋がはっきりと見えてくるのではないか」と話しました。2024年は海外旅行自由化60周年を迎える特別な年となり、日米観光交流年やトルコとの外交関係樹立100周年やパリオリンピック・パラリンピックなど、海外旅行の活性化に繋がるイベントが予定されていることからも、こうした好機を活かし、JATAとしてのプロモーション活動を強化し、国内、海外、訪日三位一体のバランスを早急に実現したいとの考えを示しました。

求められる「高付加価値化」


   JATA経営フォーラムでは、セミナーやパネル
   ディスカッションなどを通じて、高付加価値
   の取り組みについて、理解を深めるための数
   種のプログラムを用意

 コロナ禍を経て、旅行業界ではサプライヤーによる直販化の加速や仕入れ条件の厳格化など、ビジネス環境が大きく変化してきており、髙橋会長は「業界の存続にはビジネスモデルの変革が不可欠」と訴えると同時に、「旅行会社には提供する商品やサービスの『高付加価値化』が求められている」と強調しました。
 髙橋会長は、「新たな体験や出会いの提供、個人では行けない場所、入場できない施設、ストーリー性を持った旅など、旅行会社ならではの高い付加価値を提供することで、高い収益性を実現していく」と語り、高付加価値の一例としてアドベンチャートラベル(AT)に言及しました。
 欧米諸国を中心に世界では70兆円規模のマーケットにまで成長していると言われるATが日本では未開拓の分野にとどまっています。JATAは会員旅行会社にATの内容や具体的な取り組み方などの理解を深めてもらうため、今年2月に開催するJATA経営フォーラムで啓発を図るとともに、全国の自治体やDMOなどとも連携して新たな旅行マーケットの拡大に取り組んでいきます。
 髙橋会長は、世界的な共通テーマとなっているSDGsへの取り組みや持続可能な観光の実現にも力を注いでいく考えも示しました。JATAでは昨年からスタートした「JATA SDGsアワード」を通じて、旅行中の二酸化炭素排出量を可視化してグリーンエネルギーに置き換える仕組みなどの事例を共有化して、業界全体の意識向上や会員会社の取り組み強化を図っていきます。

「観光の学習機会」拡大へ


   日本観光振興協会が制作している
   観光教育副読本。小学校、中学校などの
   教育現場での活用を狙う。

 昨年から旅行需要が急速に回復してきている中で、観光業界全体における「人手不足」問題も深刻化してきています。また、人手不足への対応として「観光DXの推進による生産性の向上」が求められる一方、国内旅行拡大に向けた取り組みとして「休み方改革」も重要な課題として浮上してきています。

 髙橋会長は、「コロナ禍を通じて人員削減を余儀なくされた旅行業界でも深刻な人手不足に直面している」と話し、人材を呼び戻すためには、業界の将来性や成長性を示す必要があるとの考えを示しました。中長期的に観光が安定した魅力ある産業として多くの人に認識してもらうことを目指して「観光を学習する機会の拡大」に力を注ぐため、日本観光振興協会との連携により、「大学や専門学校だけでなく、中学校や高校での観光学習の機会を増やし、若い世代に観光への関心や知識を広める取り組み」を進めていきます。( 日本観光振興協会:はじめて学ぶ観光副読本「観光でまちを元気に!」日本・ふるさと再発見 改訂版および教師用手引書のご案内)また、JATA独自の取り組みとして、会員企業との協力によるJATA合同インターンシップの強化を図ると同時に、コロナ禍を通じて管理職のマネジメント力や若手社員のモチベーション低下を指摘する声を受け、2022年度から実施している階層別研修のJATA旅行未来塾の内容充実を図って継続的に実施していきます。

観光DXにより生産性を向上


 「人手不足」への対応に不可欠な「観光DXや協調・共創による生産性の向上」について、髙橋会長は「チケットレス化やキャッシュレス化、コンタクトレス化も含め、人手不足をデジタルの力でどう補うかが今後の大きな課題」と指摘し、「官民一体となって本格的な観光DXを一気に推し進めるべき」と訴えました。
 JATAは昨年12月から観光産業共通プラットフォームの全機能を稼働させ、宿泊施設や旅行会社の省力化につながる取り組みを開始しています。年初の能登半島地震では緊急時における迅速な情報共有にも活用しており、髙橋会長は「その評価もしっかりと行い、今後につなげていきたい」と説明しました。現在、約5000の宿泊施設が参加している同プラットフォームは、今後、全国の自治体やDMOなどの参加を通じて全体で7000程度まで拡大していく計画です。
 また、髙橋会長は「休み方改革」の重要性を強調しました。日本人の有給休暇取得率は約60%にとどまっており、欧米の80~90%を下回るだけでなく、政府が目標としている70%にも達していません。髙橋会長は、全国知事会の「休み方改革プロジェクトチーム」が休暇改革を推進していることや一部の自治体で保護者の休暇に合わせて子どもが休んでも出席とみなす「ラーケーション」の取り組みなどに言及し、「産学官の連携によって長期休暇が拡大すれば、国内旅行も大きく様変わりして、地方経済の活性化にも寄与できる」と指摘しました。

東京で2年ぶりにTEJ2024


 2年ぶりに東京で開催される“ ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2024 ”について、髙橋会長は「コロナ禍からの復活を遂げた観光産業をさらに活性化させるために、新たな価値を生み出すイベントにする」と説明しました。
 2024年9月26日(木)から29日(日)までの4日間にわたって開催される“TEJ2024”のテーマは、「旅、それは新たな価値との遭遇」。半年後には、「2025年大阪・関西万博」の開催が予定されていることから、“TEJ2024”展示会場に万博の特設コーナーを設けるなど、その魅力を内外に発信していきます。

業界全体で意識と行動の変革を進め、信頼の再構築に


 会見の結びに、髙橋会長は「旅行業界の完全復活元年とすべく取り組みを進めていく中、その大前提として全ての事業活動においてコンプライアンスがベースになくてはならない」と訴え、業界全体で意識と行動の変革を進め、信頼の再構築に全力を注いでいくとの決意を改めて表明しました。








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