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更新日:2024年09月10日
法務・コンプライアンス室 (監修 弁護士 三浦雅生)
旅行業界で違反行為が発生したことを受け、残念ながら昨秋から耳にする機会が増えてきたのが「独占禁止法」という言葉。でも、実は「ええと、具体的には何がいけないんでしたっけ?」とこそっとご質問をいただいたりもしています。ということで、今回は「独占禁止法って何だっけ?」をテーマにしてみました。
これはご存知の方も多いと思いますが、「独占禁止法」は通称(さらに省略して「独禁法」と言うこともあります)で、正式には「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」という長い名前の法律です。所管は公正取引委員会です。1890年米国で世界初の独占禁止法が誕生し、日本ではGHQの占領下にあった1947年に、世界で3番目に制定されたと言われています。 この法律の目的は、「公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすること」(公正取引委員会Webサイト「独占禁止法の概要」より)です。事業者が競争して自由に活動すれば、より安くて優れた商品が出てきて、消費者は自分のニーズに合った商品を選べる、逆に、自由な競争や活動を阻害すると消費者は安くて良いものを買えない可能性が出てきてしまうので、これを防ごう、ということです。
旅行業界で発生した「独占禁止法違反行為」としては、次の二つが知られています。一つ目は、2009年7月に旅行会社3社に排除措置命令が出た(命令の対象外だが違反行為はあった2社を含めて、関係したのは合計5社)「修学旅行代金についての価格カルテル」です。この5社は岡山市の市立中学校の修学旅行に関して、貸切バス代金、宿泊費、企画料金、添乗費用の金額の下限や率について相談し、合意していました。
もう一つは、2024年5月30日に旅行会社4社に排除措置命令が出た(命令の対象外だが違反行為はあった1社を含めて、関係したのは合計5社)「青森市が発注する新型コロナウイルス関連業務の入札における談合」です。青森市が指名競争入札を実施した際、この5社が相談して受注予定者を決定しました。またその受注予定者からそれ以外の者に受注した業務の一部を委託することとし、その通りになるよう互いに協力し、結果的にこの業務から得られる利益を5社間で分配していました。この5社は、当協会東北支部青森地区委員会の会合後にこれらの相談をすることがあった、ということで、当協会も公正取引委員会から「改善の申入れ」を受けました。
どちらの事例も、旅行会社同士が競争をしなくなり、「消費者・発注者がより安く良い内容の発注のできる機会を阻害した」という点で、独占禁止法違反行為、だとされました。なお、前者は事業者同士での違反行為なので「カルテル」、後者は国や地方公共団体の入札における違反行為なので「談合」と呼びます。
業界の事業環境を改善し発展させていくために同業者が協力して活動する、これが何でもかんでも問題だということではありません。しかしその際、「消費者の利益が侵される」ような行動をとってしまうと、独占禁止法違反行為にあたるおそれがあります。 他業界では、同業者が集まる場所に出席するときは事前申請を求めるなど、各社でルールを定めて違反行為防止に努めています。当協会でも、当協会での役割を担って活動する際の役員や会員、及び事務局に対して、行動の基準を定めました。ルールを守った行動で旅行業界の信頼を高め、「お客さまに旅の安心と感動を提供する」「地域の発展につなげる」「人々の交流を通じて世界平和に貢献する」といった旅行業界の使命を果たしていきたいですね。
【参考】
独占禁止法の概要(公正取引委員会)
JATA活動の企画・実施・参加に関する今後の方針について(JATA速報2024年度第15号)※会員ログインが必要です。ログイン後、7月16日の欄をご覧ください。
担当 法務・コンプライアンス室/コンプライアンス推進室 鷲谷敦子
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