第2回 JATAエコツーリズム調査報告
「中高年の旅行市場とエコツアー」
エコツアー関連調査項目

更新日:2022年03月22日


1) 「自然に親しむツアー」への関心度

中高年旅行市場の主流は「自然に親しむ旅行」がキーワード

  • 中高年旅行市場は「自然に親しむツアー」に高い関心を持つ。
  • 関心がないと明確に回答したサンプルは全体の2.3%に過ぎない。
  • 性・年令・学歴別の分析においては回答に顕著な差異は認められず、等しく「自然に親しむツアー」への関心は高い。

2) 参加希望を持つ「自然に親しむツアー」の種類

「自然を身近に感じ観賞する旅」、「自然の中での癒しの旅」が中高年に最も親しまれている旅。
現在の一般的に認識されるエコツアーの市場規模は全体の約30%。
中高年旅行市場の90%以上が「自然に親しむ」旅行を求めている。

  • 市場の大勢が自然鑑賞型(「自然に浸り、その美しさを愛でる旅行」:74.9%)、及び自然の恩恵を受けた癒し型(「自然に囲まれや旅館やホテルでゆったり滞在する旅行」:74.3%)のツアーに伝統的に親しんでいる。
  • 「自然に浸り、その美しさを愛でる旅行」及び「自然に囲まれや旅館やホテルでゆったり滞在する旅行」の双方を選択したサンプルは273名で全体の58%を占め、2項目をそれぞれ選択したサンプルのいずれも約80%にあたる。
  • 「自然に浸り、その美しさを愛でる旅行」を選択しつつ、重複して「自然の成り立ち、動植物の生態に理解を深める旅行」(88.5%)、「動植物の観察旅行」(92.9%)、「山登りなどアウトドア活動の旅行」(85.6%)及び「キャンプなどや街生活を体験する旅行」(92.3%)を選択したサンプルは、いずれも90%前後の重複率を示している。一方、「自然に囲まれや旅館やホテルでゆったり滞在する旅行」を重複したサンプルは「野外生活を体験する旅行」(85.0%)を除き、80%未満とやや低い重複率を示している。
  • 一般的にエコツアーとして直截に認識されている「自然の成り立ちや動植物の生態に理解を深めながら自然に親しむ旅行」(87サンプル)や、「特定の動植物の観察を目的とした旅行」(84サンプル)のいずれかまたは双方に参加希望を回答した個体数は134サンプルで、全体の28.5%にあたる。

  • エコツーリズムの概念の適用によってはエコツアーになりうると考えられる「自然を舞台にアウトドア活動を楽しむ旅行」(104サンプル)及び「野外生活を体験する旅行」(27サンプル) のいずれかに参加希望を回答した個体数は131サンプルで、全体の27.8%にあたる。

  • 上記2つの分類「エコツアーとして直截に認識されている旅行」と「エコツーリズムの概念適用によってエコツアーになる旅行」のいずれかに参加希望を回答した個体総数は202サンプルで、全体の42.9%にあたる。

  • 「自然に親しむツアー」を特に意識していない(全体の15.9%)と答えたサンプルも、自然に癒しを求める、あるいは観賞する旅行 (「自然に囲まれた旅館やホテルにゆったりする旅行:80.0%、「自然にひたり、その美しさを愛でる旅行」:50.7%」)に高い希望を回答している。
  • 性別分析における特徴は、「自然を舞台にアウトドア活動を楽しむ旅行」がやや男性に回答が多く、「特定の動植物の観察を目的とした旅行」では、女性の回答がやや多い。
  • 「自然を舞台にアウトドア活動を楽しむ旅行」、「野外生活を体験する旅行」は、年令が高くなるとともに、希望率は低下する。また最終学歴の高いサンプル塊の希望率が高い。
  • 「自然を舞台にアウトドア活動を楽しむ旅行」、「野外生活を体験する旅行」以外の旅行種別では、55~64才の年令階層の回答がいずれの旅行においても最も高い参加希望率を示している。
  • 「自然を舞台にアウトドア活動を楽しむ旅行」でとくに好きな活動は、「トレッキング・登山・ハイキング」(計12サンプル)で、「スキー」(6サンプル)がそれに次いだ。
  • 「その他希望する旅行」で記入された回答は、「写真撮影旅行」(7サンプル)が最も多く、「スケッチ旅行」(5サンプル)がそれに次いだ。

3) 「自然に親しむ旅行」への参加阻害要因

「時間がない」「体力的に自身がない」「適当なツアーがない」が三大阻害要因。

  • 全体的に希望する「自然に親しむ旅行」を疎外する要因は、「時間的余裕がないから」(33.1%)が最も多く、特に仕事を持つ45~54才の年令階層に多く見られ50%を上回る回答。年令が高くなるにつれ割合は下がる傾向にあり、65才以上の年令階層では20%未満と低くなる。
  • 「体力的に自信がないから」が二番目に多い要因。45~54才の年令階層では9.4%に過ぎないが65才以上では19.7%と、年令層が高くなるにつれ増加する。「健康上の理由で」と合わせ、高年令階層では「自然に親しむ旅行」は希望するが体力的に難しいと判断しているケースが多いと思われる。
  • 三番目の阻害要因は「適当なツアーがないから」(15.5%)で、特に男性に、また最も活動的な55~64才代年令階層、職業を持つサンプルに多い。時間的及び経済的制約が薄れた50才代後半の男性セグメントが、自然に親しむ旅行を探すと、求める内容のツアーがないという現状が推察される。
  • 四番目の阻害要因としては「経済的余裕がないから」(14.6%)と「家を離れられない事情があるから」(14.6%)が同数で挙げられ、五番目の要因が「一緒に行く人がいないから」(11.9%)。しかしながら「経済的余裕がないから」とする回答者は年令が増加するにしたがって急減する傾向にある。
  • 「経済的な余裕がないから」と阻害要件を回答したサンプルは男性、調査対象でも低い年令層、有職者に多く、無職者、高年齢者、主婦には、大きな阻害要件とは捉えられていない。経済的、時間的余裕は55才以降からと捉えられる。
  • 有職者の阻害要件は「時間的に(54.3%)、経済的に(21.0%)余裕がないから」が最も多く、プロモーションが難しいセグメントと捉えられる。
  • 退職者等職業を持たない回答者の方が「経済的余裕がない」と答えた割合が少ない。有職者の半数。「体力的に自身がなく、適当なツアーがないから」が主な阻害要因として挙げられている。年令に応じたツアーの企画・運営如何によって時間的・経済的に困難を感じていないセグメントの開発が図れると推察される。
  • 「一緒に行く人がいない」と回答したサンプルは年令が低いほど多い。65才以上では10.4%が現状。
  • 「旅行よりもやりたいことがある」と答えた回答は全体の4%に過ぎず、旅行に対するプライオリティーの高さが伺える。

4) 中高年旅行者のエコツアー参加体力度

午前と午後にわけて一日10キロメートル程度の平坦地の徒歩なら65%の人が大丈夫。
市場性の高い65才以上のセグメントに対しては、体力を考慮した配慮が必要。

  • 体力的に自信がある徒歩は「一日4時間・10キロメートル程度」が中間値。
  • 徒歩能力において一般的には男女の体力差はない。
  • 「一日4時間・10キロメートル程度」以上の徒歩に自信のある割合は、45~54才の年令階層で は71%、55~64才の階層では68%、65才以上では52%と年令の上昇と共に低下する。ツアーの企画において年令階層に応じた対応が求められる。
  • 「一日6時間・15キロメートル程度」以上の健脚派は、45~54才で40%近くに達し、55~64才台においても25%を超えている。高齢者扱いにしては不満の生ずるセグメントとして注意が必要と思われる。

5) 「自然に親しむ旅行」専門ガイドの要求度と望まれるエコロジーに関するガイダンスの深度

自然に親しみ、鑑賞・観察するツアーは、解説ガイドの同行が望まれている。
誰にでも理解できる平易な言葉で、関連する事象を含めた広範囲な説明が望まれる。

  • 自然に親しむ・鑑賞・観察するツアーには回答者の大半(77.1%)が、ガイドの同行を希望している。最も希望の高い年令階層は55~64才(79.8%)。
  • ガイドを必要無しとする回答者は、年令が高くなるにつれわずかに増加するものの全体の15%程度。また、ガイドの同行を希望する回答者においても 24.2%が「説明は不要、道案内程度で十分」「説明を求められた時の最低限で良い」としている。ガイドを不要あるいはガイダンスの要求度が低いサンプルは全体の41.6%を占める。ツアー募集の際にはガイド同行による説明がある旨、またガイダンスのツアーにおける位置づけを明記する必要があろう。
  • ガイドの説明は、できるだけ平易に、しかし、広範囲に、時には学問的なことも分かりやすく解 説してほしいとの希望を持っている。女性の方がガイダンス内容の深度に関しては高い希望率を持つ。
  • ガイド説明の深度に関し、短大・専門学校・大学以上を最終学歴賭するサンプルの10%以上が、「専門知識を持った解説員にできるだけアカデミックな説明をして欲しい」と回答している。セグメント別では数少ない顕著な特徴の一つとして認められる。中・高校卒は4.5%。高学歴の参加者が多いツアーではガイダンスの深度への配慮が必要か。

6) 「自然に親しむ旅行」でのエコロジーを学ぶことの楽しさ認識度

「自然に親しむ旅行」でエコロジーを学ぶことは旅を楽しむ重要な要素だと認識されている。
年令階層が高くなるにつれ、学ぶことが旅行の最大の楽しさとの認識が高くなる。

  • 「レジャー目的の旅行に知識欲はない」と完全否定した回答者は3%未満。「特に楽しさとしては意識しない」と非積極的に否定した回答者を含めても、学ぶことの楽しさを肯定しないサンプルは10%余りに過ぎない。大半の回答者は、旅にエコロジーを学ぶのは「旅の楽しさ」との認識を持ち、「知識が増えることは、旅行の最大の楽しさ」と評価をするサンプルが30%を超える。
  • エコロジーを旅に学ぶことを楽しさとして捉えるサンプルは、女性よりも男性が、また年令が高くなるほどに、そして最終学歴が高いほどにその割合が高くなる。

7) 生態環境の保全に対する意識度

自然に親しむ旅行では、自然環境や生態の保護・保全を意識するのは当然と考えるのが中高年旅行者のコンセンサス。保護・保全のための規則の遵守、自制・自律の概念も高く認識されている。
中高年の旅行市場では、エコツーリズムを受け入れる概念基盤が基本的に成立している。

  • 中高年で旅行を頻繁に実施している消費者は、自然環境や動植物の生態系の保護・保全に「意識的に配慮している」(50.5%)、「配慮が身についている」(28.2%)と、極めて高い意識を持っている。ただし「配慮が身についている」とする基準は各個人である事から、普段に正しい理解の普及が必要と思われる。
  • 「保護・保全の意識は無意味」と回答するサンプルは皆無で、「レジャー優先」(3.8%)、「意識を持ったことがない」(1.7%)、「自然の回復力にまかせ気にしない」(0.6%)等、否定的な考えを持つサンプルは、6%と極めて少ない。
  • 自然環境や生態系の保護・保全の意識は女性に強く、年齢層では高くなるほど弱くなる傾向にある。
  • 「意識的に配慮する」と、定められた規則を遵守することで自然や生態系の保護・保全を意識す るサンプルは、短大・専門学校・大学以上を最終学歴賭するセグメントに多い。
  • 保護・保全のための行動規範も自らが極めて厳しく意識しており、動植物の採捕を控えること、保護のための立ち入り禁止区域の規制等は積極的に受け入れる姿勢を持つこと、ゴミの持ち帰りは当然のこと、と理解していることなど、規則の遵守、自制・自律の概念も高く認識されている。
  • 自然環境の保護のための規則の遵守・自制の意識は、女性の方が男性よりも高い。自身の判断を基準にする傾向は男性に強い。